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武藤記念講座(講演会事業)

記念講座の記録

2010年7月3日(土)

元外務事務次官 谷内正太郎氏
 「志ある外交戦略 普天間問題と日米同盟の将来」(於大阪武藤記念ホール)

今日よりも明日はよくなるとの坂の上の雲の時代が終わり、失われた20年が続いたあとの政権交代に、国民は政治が変わるかもしれないと大いに期待した。然し政治とカネの問題は別として、普天間問題の迷走が首相を退陣に追い込むこととなった。首相としてのリーダーシップの不足、巨大なシンクタンクの官僚との連携が出来なかったこと、さらに政治日程の段取りの悪さによる米国と地元からの不信感等、政権運営についての与党マインドの不足もあったが、外交について次の重要な三つの基本原則がお座なりにされたことに、学ぶべきである。

先ず外交の基本は国益を追求することにある。そしてその国益のコアは国民の生命と財産を保護することであり、その財産のなかには領土等のハードのみならずその国の知的財産・文化等のソフトも含まれる。19世紀のパーマーストーン英首相は「永遠の同盟国と永遠の敵対国はない、然し国益は永遠である」と述べている。従って外交・安全保障は優れて国家的見地、レベルの問題であり、地元の意思についてゼロベースで検証し、その意向は尊重するべきであるが、選挙優先指向であってはならなかった。首相は地元、連立政権、米国の三兎との合意を追ったが、いずれの一兎も取れなかった。然し国益は大切であるが、自国の国益だけを考えていては逆にかえって国益を損なう場合があり、国際公益を考慮して両立させることを指向する公平性・双務性のある「志の高い外交」であるべきである。

ふたつ目は外交の一貫性、継続性への配慮が不十分であったことである。 日米同盟の堅持と言いながら、米国への説明なしに東アジア共同体を打ち出した。又外交に友愛の思想を持ち出したが、それを逆手に取られて国益を守れないことになる。「国家は力の体系であり、利益の体系であり、価値の体系である」との高坂教授の言葉が思い出される。国家において外交と防衛は国益を守る両輪であるが、経済はエンジンであり、そして司令塔の政治が、外交の一貫性を担保する責任がある。 

三つ目は同盟についての理解不足である。日米中の正三角論の理論は、日米関係における米国からの自立への衝動と米国への甘えから来ているが、核時代の国家安全保障戦略を理解していない。日本のGDP比1%の防衛費では、抑止力維持のために米国の軍事戦略全体との連携が不可欠である。騎士と馬の関係で主は騎士であるが、従たる馬も騎士の目指す方向をつねに見極めねばならない。また普天間の海兵隊は軍事技術的には有事の際に最初に駆けつける部隊である。その足であるヘリコプター部隊が県外や国外にあるのでは、海兵隊と武器設備との三位一体の機動性を発揮出来ず抑止力も働かない。

以上

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