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武藤記念講座(講演会事業)

記念講座の記録

2010年9月4日(土)

野村證券金融経済研究所シニアエコノミスト 尾畑秀一氏
「日本経済の現状と今後の展望 問われる日本経済の回復力」(於大阪武藤記念ホール)

「足許の日本の景気回復はいったん踊り場へ」

二年前のリーマンショックによる金融危機と世界経済の停滞のなかで、アジア諸国向け輸出の好調と財政による景気刺激策効果により、我国は先進国のなかでは最も早いペースで景気回復をなし遂げた。然し4/6月に至り世界景気の減速と、主要国の通貨安政策の裏返しによる実力以上の円高から、成長ペースは大幅に鈍化し、景気は踊り場局面へ移行している。幸い現在も9%台の成長率を遂げているアジア諸国が世界景気を牽引しているので、輸出腰折れの可能性は低いが、いわば輸出一本足打法であり、輸出による生産増の設備投資や賃金の上昇への波及効果は除々にしか顕在化していない。

尚、設備投資が海外に流出するとの悲観的な見方をとる向きもあるが、海外投資が国内設備投資を抑制する度合いは限定的と考える。以上の景気減速に対する政府・日銀の経済・金融・為替政策における危機感の不足については、しかるべき論評に譲りたい。

「中期的課題は財政再建と経済成長の両立である」

GDP比170%の公的債務残高は先進国では最悪であるが、本年も一般歳出70兆円強と国債費20兆円(内半分が利払費)の合計90兆円強の歳出に対して、歳入は50兆弱(内租税は37兆円)しかなく、不足分40兆円強を新たな国債発行で賄わねばならない。さらに来年度予算においては社会保障費の自然増もあり、マニフェストの完全実施を見送らないと、プライマリーバランスは本年より悪化することとなる。また、10年後までにプライマリーバランスを消費税率で均衡させるとするならば、現行の平均1.7%の成長率では、2015年度までに2%、2020年度までに累計8%の引き上げが必要である。尚デフレ不況脱却のために3%強の成長力を目指す政府発表の新成長戦略が目標通り実現するならば、プライマリーバランスは10年後に8兆円改善するが、これも政府の政策実行力にかかっている。

「長期的に最大の課題は労働力不足への政策である」

さらに長期を展望すると最大の課題は少子高齢化のなかで、いかに経済成長と財政再建を両立させていくかである。団塊の世代が就業して納税し保険料を支払う人口の黄金期が終わり、本格的な超高齢社会に突入して、日本の総人口は正三角形から細壷型へ構造的変化を遂げていくことになる。その結果今から15年後には仮に失業者全員が就業しても労働力が不足するので、さらなる定年延長とワークライフバランス(仕事と生活の調和による多様な生きがいの選択 )政策による女性の労働参加が不可欠となろう。然しそれらの施策が実行されても、さらに10年も経てば、より画期的生産性の向上を図るか、又は外国人労働者を受け入れないと、経済成長は不可能となろう。

以上

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