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武藤記念講座(講演会事業)

記念講座の記録

2011年10月29日(土)

中部大学教授 武田邦彦氏 「原発と日本のエネルギー」(於大阪武藤記念ホール)

T.福島で起こった事実に真正面から向う勇気を

1.「戦後日本の一大事件」
3月14日の福島三号機の写真で、ドカンと筒状に煙が上がっている状況から、爆発は低いところで起こったと推察される。従って、水素爆発でなく核爆発の恐れがあり、プルトニウムが飛散した可能性 もある。然し戦後日本の一大事件のひとつであるのに、マスコミは凍りついてこの重要な写真を殆ど報道していないし解説もしていない。日本の今の大人は「事実自体を真正面から見る勇気がない」のである。「福島県の痛みを皆で分かち合おう」と、何を言っているかわからない「きれいごとばかり」を言っている。もし公開していたならば、煙は500メートルの高さがあり、死の灰の量について分かった筈で、外部被曝を逃れた人が沢山いたはずである。

2.「放射線の正しい理解を」
そもそも、放射線はエネルギーが違うだけで光と同じ性質を持っているので、自分の目で発電所が見えないと放射線を直接浴びることはない。実際は身体の周りに放射性物質という目に見えない小さな1億個位の煙の粒(死の灰)が飛んで来て、その煙の粒から放射線が出て体を貫き、(外部被曝)もしくは呼吸して身体の中に入って被曝(内部被曝)して病気になるのである。私は例え話で畑に青酸カリが撒かれたと言ってバッシングを受けたが、煙の主成分であるセシウム137は青酸カリの経口致死量より二千倍強い毒性を有するものである。然しそのような青酸カリの話をするのは怖いので、聞きたくもないと言う始末である。然しすべて問題は事実を正しく知らなければ解決できない。

3.「放射性物質に対する自衛策」
福井で原発が爆発すればその日の風向きにもよるが大阪へは1日で来る。煙は高さ2〜 300メートル、幅10キロで約300キロの距離まで流れてくる。自衛策として三つあり、第一に遠くに逃げるのでなく煙をかわして横に逃げることが大事である。次には体内被曝の危険性を防ぐため、インフルエンザ用のウイルスマスク(煙の粒子はインフルエンザのウイルスより大きい)をすれば完全に防げる。第三に水道水の汚染に備えペットボトルの水も用意する。さらに自治体は誘導するバスを用意しておくべきである。沈没する恐れのない大型客船でも救命ボートは絶対備えているのであるから、原発にも救命ボートとして上記の三つとバスが必要である。さらに船員が乗客を誘導するように、原発においても市町村が誘導しなくてはならない。救命ボートと誘導する概念がないのは、まさに後述の「日本人の国民の性質」が大きく効いている。

U原子力の安全については「おふだ」主義が元凶

1.「震度6で倒れない原発は世界にない」
日本の原子力の技術は世界一であり、日本人は慎重派の筈であるのに、日本の原発はなぜ爆発したのか、諸外国には大変不思議なことと思われている。そもそも日本は地震国であるのに、地震に対する備えがなかった。世界には430基の原発があり、そのうち地震が起こる場所にあるのは60基、内54基が日本にある。そして人類が作った原発で震度6により壊れなかった例はない。日本では7つの発電所が配管、放射能漏れ、火事等、設計上の問題で壊れており、少なくとも回復に一年以上かかっている。又その内3つが全電源を失っている。福島も津波でなく地震で全電源を失った。私は耐震基準を決定する委員として反対したが押し切られたので、逃げるオートバイが必要、ヨウ素剤も用意されるべきと主張して、委員を辞めた。然し耐震基準が震度4と決定されたので、震度6ですべて壊れた。震度8の基準にして(キロワット2円上がるが)安全が確保されれば原発に賛成である。そうでないならば直ちに止めるべきだ。それを止めないのは、最早日本人が真正面からものを見ることが出来なくなったからである。

2.「原発が安全ならば、自分の地域に設置するべきだ」
原発は安全であるのならば、なぜ電力消費地の近くに作らないかと問えば、危険であるからという。安全であるけど危険というのはどういうことか。新潟の柏崎刈羽原子力発電所は7基あり世界一の規模である。然し世界では自分の地域で消費する電力量に必要な大きさの原発しか作らないのが普通である。自分から遠ければいい、近くは駄目だとの日本に対して、フランスではパリの近くの畑の中に原発があり、自分のために安全ならば建てるのである。さらに日本では危険手当が税金も含めて20年間で800億円ももらえるので、大きくしていけば、沢山手当てがもらえることになる。然し「乞食」になってはいけない。自分の使う電気は安全ならば、自分の地域に建てるとのプライドを持つべきだ。又金をもらえれば子供の命なんかどうでもよいのか。日本の子供は日本の宝である。

3.「『おふだ』主義の呪縛で物事を決められない日本人」
日本の床の間には「日本の原子力は安全である」との「おふだ」が貼ってある。首相も大臣も知事も市長も安全という「おふだ」が貼ってあるから、原子力は安全であると言っているのである。そもそも日本は国民のために原子力政策を実行していない。即ち日本人は頭の中がからっぽになり、当たり前の物事を決められなくなっている。決める人もいない。あなたはどうなの、自分の意思はあるのかと問いたい。さらに日本人は行動力もなくしている。20年前の国際約束で「1年1ミリシーベルト(胸のレントゲン換算では年間400回相当)の一般人の年間被曝限度」を決めた(ドイツは0.1ミリシーベルト)。5ミリシーベルト以上は白血病が多くなる。然も子供は3倍感度が高いのに、国際的約束を破り福島の子供達の被曝基準を20ミリとした。それに対して 誰も文句言わないのは、日本の恥である。然し日本の母だけが子供を真剣に守ることがはっきりしているのが救いである。電力会社の従業員も20ミリシーベルトの枠をもらって働いていたが、1ミリシーベルトで管理するようになり、人件費増を電気代に上乗せしている。自社のことだけしか考えない電力会社の重役は「人間の心」がなく、自分の意思がないうえに、行動力がない。原発は絶対倒れないとの「おふだ」が貼ってあるので、上述の如く原発の耐震性基準がどんどん下がって来た。科学者は、自分の学説を実験データで謙虚に変えるべきである。それは科学者の宿命である。かかるうえは4500億円の原子力予算を大きく削って東北地方の農産物を買上げるべきだ。いずれにしても放射能から守るべきものは一番に子供、二番に国土、三番に米である。

V.日本のエネルギー政策はどこへ向うのか

1.「科学的に石炭と石油は1千年分が楽にある」
原発に代替出来るエネルギーは石油と石炭である。石油ショック前の若い頃に、先入観により石炭と石油はいずれはなくなると思っていたが、原子力の勉強をしながら地球の資源について勉強し直し、化石エネルギーは枯渇しないとの結論に達し、「石油の寿命は8千年」との本を書いた。地球が46億年前に出来てから今まで、元素が変化してきたが、その変化を辿って今の地球があるには、どれだけ石油と石炭がないと辻褄があわないかを計算すると、最低8千年分から5百万年分の間との答を導き出せた。山内名古屋大学元教授も3万年分から600万年分あると計算され、お互い喜びあった。東シナ海、オーストラリア等、身近な資源だけでも千年分はあるのではないか。尤も今後の千年先は今と全く違う社会になって、エネルギー源も石炭、石油、ウランは使用していないだろうが。
資源国が資源を売ってくれないとの心配もする必要はない。何故なら彼らは日本が買ってくれないと大変困るからである。従って日本は資源がないので、資源掘削機械の先端技術を磨いて彼らに輸出して、彼らからは日本へエネルギーを供給してもらう関係を構築するべきである。石油の寿命は40年前に40年と言われていたが、40年経ってもまだ43年あると発表されている。次の43年後に又46年あると発表されるだろう。然しこれは上記の科学の視点からでなく、合理的投資行動からの視点である。何故ならば千年先の投資は出来ないし、千年もあると言えばその資源の市況が大幅下落するからである。アメリカが自動車の石油をがぶ飲みしているのは、石油がまだまだ豊富であると見ているからである。又節約は大切だが、それは心の問題である。石油が少ないから節約するのではない。米国は、石油は千年あると見ているではないか。

2.「温暖化についても『おふだ』主義が」
「ゴミゼロ」「ゴミを減らして環境をよくしよう」「リサイクルすると資源が節約される」のスローガンも、これ又「おふだ」主義から来ている。リサイクルすると言われるゴミを実際は全部燃やしているから何も環境をよくしていない。日本の工業製品の総生産重量は10億トンであるが、60%リサイクルしているといわれているにもかかわらず、使用原料は減っていないのである。
又海に囲まれた日本は、CO2を出しても日本の温暖化は進まない。空気を温めても海の水は温まらないからである。日本は南からいつもより暖かい海流が来たときに夏ならば猛暑、冬ならば暖冬になるのである。然し海から遠い米国と中国の内陸部では竜巻が発生し又酷暑により作物が育たなくなる。

3.「すべては日本の子供達のために」
日本は有色人種の国で植民地にならなかった唯一の国であることに誇りをもつべきである。欧米諸国はその植民地の人々に敢えて教育を施さなかった。英国人はインドにおいて優秀な技術者が育つとその手首を切って技術が発展するのを妨げた。然し日本は植民地にならず、国民の教育をしっかりつけて、日清・日露の戦争に勝利し、太平洋戦争もやり過ぎたが頑張った。よって今日本が繁栄しているのは、戦争で死んだ祖父達のお蔭であり、感謝しなければならない。私は、原発は要らないといっているが、その理由は原子爆弾が要らないからである。何故ならば日本の軍隊は桁はずれに強いから、米ロ中から攻めて来られることはないと考えるからだ。
今は地質学的には、氷河期の間氷期2万年の中間の1万年経ったところにある。1万年後の氷河期には鹿児島まで氷河が覆うが、あと1万年は暖かい。子供達はやんちゃ坊主とおてんば娘であるべきだ。そんなときにリサイクルや節約の話しをせず自由にさせるべきだ。脳神経細胞はその時期に一番発達するからだ。今一度言うが、その大事な時期に福島では子供達に20ミリシーベルト基準で地産地消の食材を食べさせるとは何と云うことか。又エコポイントは他人の税金である。どうして他人の恵みを受けるのか、子供達に恥かしくないのか。2〜3年前のNHKの「明日のエコでは間にあわない」ももっての他である。
子供と孫には未来は真っ暗ではなく明るい日本の世紀と言うべきだ。悲観的に暗く考えることは、甲子園を目指している高校生に甲子園がなくなると言うようなものである。そもそも元気のない子供を作ったのは我々である。祖父から受け継いだ我々の魂は息子から孫へ伝えられる。そのため親父は息子のために職業を残さねばならない。それなのに大学生の就職率が60%とはどういうことか。よい子症候群ではだめであり、教育すればするほどずるくなるのは問題であるにせよ、若い学生に自分が勉強したものを社会で生かす場を与えてやるべきである。そして親孝行のために出来るだけそんなに遠くない所に就職させてやれる社会の配慮も必要である。我国の子供達を守るためには、国際的信義と国際的平和は勿論守って、我国が得になり、他国を抑制するくらいのことをしておいてやらねばならない。そして意思のない、どうしたいのか答えられない社会を直して、よい社会を作らねばならない。

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