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武藤記念講座(講演会事業)

記念講座の記録(要旨)

2012年9月17日(日)

元アメリカ国務省日本部部長 ケビン・メア氏
「決断できない日本〜なぜこれが重要な問題なのか?〜」  
(於大阪武藤記念ホール)

T.決断出来ない日本:国内問題

(1)「コンセンサス社会の日本」

  私の30年間の外交官時代、なぜ日本政府は何を交渉 しても決断出来ないのか、ワシントンでよく話題になり ました。その理由は、日本はコンセンサス社会であるか ら、何かを決める時、相談して根回しをして、コンセン サスをつくる必要があるからと分かりました。勿論コンセンサスさえ得られた場合、すぐに変わることが出来るので、実行する場合は長所になります。一方危機管理では危機が起きたときは、コンセンサスをつくる時間がないことから、短所になります。又極少ない人の反対で大事なことが実行できなくなることも弱点です。


(2)「決断出来ない国内問題の例」

  以上の具体例をいくつか挙げてみますと、先ず「成田空港」の二番目の滑走路の中に ある農家は、法律上は排除できるのに、農家及び土地を買った反対派の人たちの理解をえ られないとの理由で決断出来ません。又旧「大店法」では法律上は決断できるのに、地元 商店街の理解をえることが、自治体の認許可の条件になっていました。驚くのは競争相手 の理解をえるのみならず、さらにその競争相手へ収入の内から、いくらかの補償金を支払うことが約束されていたことでした。これはまさに脅迫です。然し、日米交渉によりこの法律は廃止され、その結果トイザらスが日本に進出できました。

  さらに最近の例では、去年の「大震災」発生時の3月11日からの一週間もの間、菅前首相は政府が責任をとりたくないので、何も決められなかったことです。その間、ヘリコプターで現場を見に行きましたが邪魔になっただけでした。彼は、この問題を東電の問題にしたかったようですが、これは政府が対応すべき問題です。特に大事故の危機管理ではコンセンサスを取る時間がないので、トップが責任を取って決断しなくてはならないのです。  

   さらに、2030年までに「原発稼動ゼロ」を目指すという政府の決定も、衆議院選挙のための中途半端な決断です。原発をゼロにするのならば、なぜ使用済み核燃料の再処理をするのか、又日米原子力協定の約束がどうなるかの問題もあります。ゼロを目指していたが駄目だったと言い訳が出来るようにして、内心は次の選挙後に、見直そうとしているのかもしれません。「瓦礫」の問題も地元と調整する問題でなく、政府が責任を持って決断すべき問題です。さらに「TPP」に参加することを、競争力のない5%の産業のために決断出来ないでいますが、交渉はすでに始まっており、途中から参加の場合に負うハンディを考えていません。消費税も然りです。私は税金を上げるより、成長政策の方が賢明と考えますが、財政上必要ならば、もっと早く決断するべきでした。


(3)「決断出来ない理由」

  以上のように決断出来ない理由は、政治家が選挙を恐れているからです。然し、大切なことは国のために何が正しいかであり、選挙で当選することではありません。そもそも選挙で落選する覚悟のない人は、政治家になるべきではありません。政治家は、多数の人々の歓心を買うポピュリズムに陥ってはなりません。政治家にはたとえ少数の人の賛成しかなくても、国のためにそれを説得できる指導力こそが必要です。即ち、自分の為でなく、何が国民の為に一番よいかが大切なのです。

U安全保障の基本的知識の整理(次のVのために)

(1)憲法と日米安全保障条約

  日本国を守る大切な安全保障については、教育で余り教えられていないのは残念です。憲法第9条により日本国は陸海空軍を持たず交戦権を放棄していますが、自衛権は有していること、及び以下の日米安全保障条約について、正しく教えられるべきです。即ち同条約の5条では、日本国の施政下で日本及び米国が攻撃されたら、米国は、日本を防衛する責任がありますが、日本も一緒に守らねばなりません。又6条では、在日米軍基地は日本のためだけでなく、極東における安全保障と平和を維持することにも、寄与するべきとされています。そして日本は基地を提供する義務はあるが、米国が日本以外で攻撃されたら日本には防衛する責任がなく、日米安全保障体制は相互防衛条約ではなく、非対称的な安全保障体制であることも知っておくべきです。


(2)在日米軍の展開

  在日米軍は約5万人、半分が沖縄に駐留しさらにその半分強は海兵隊です。その他の 基地は、岩国は海兵隊航空基地、佐世保は海軍の揚陸艇基地、横田は在日米軍司令部と空軍基地、横須賀は空母基地、厚木と座間は空母の艦載機基地、三沢はF16等の空軍基地です。中国、北朝鮮、ロシアの眼から日本を見た地図によって、日本列島の戦略的位置づけがよく分かります。ウラジオストックは冷戦時代には、ソ連の太平洋に向けての重要な基地でしたが、対ロシアに対しても、米国が攻撃を受持ち、日本は防御を受持っています。日本の海上自衛隊の役割はウラジオストックからの潜水艦が太平洋に出るのを封じ込めることです。日本は掃海艇を26隻有していますが、その掃海能力は、世界中で一番勝れています


(3)自衛隊の役割の拡大

  9条で戦闘行為は制限されていますが、最近では、日本の自衛隊の役割がどんどん拡大しており、湾岸戦争ではPKO法が間に合わなかったが、湾岸戦争終了後は、掃海艇を出して沢山の機雷を掃海し、イラク戦争では、航空・海上・陸上の自衛隊を派遣して戦闘行為以外の行為に参加しました。双方の攻撃と防御との役割は、変わっていませんが、役割と任務を分かち合い、分担は、変化しています。

V決断出来ない日本:安全保障問題

(1)日本の直面している脅威

  冷戦は終わったのに、ロシアが3/4年前から、爆撃機を日本の空域の近くを一周させており、無視出来ません。北朝鮮は、変な国で共産主義の国というより、昔の封建制度の国で、何をするか分からない信用が出来ない国です。信頼できない国だから交渉する必要はなく、ミサイルの開発と核兵器の開発を阻止するために、もっと強い経済・金融制裁措置が必要です。軍事的には、北朝鮮に近いソウルが人質になっています。然し諸問題の解決には中国が協力しないと難しいと思います。拉致問題も無視できず、六カ国交渉で棚上げするべきではありません。もしキューバにアメリカ人が拉致されたら戦争になるでしょう。拉致は、絶対に許せない行為です。


(2)中国の脅威 

  今後一番の脅威になるのは軍事予算を増やし海軍能力を高めている中国です。尖閣問題は、そのひとつの象徴です。中国は、第一列島線戦略により、沖縄・琉球諸島を領有する積もりです。学生デモの横断幕に「琉球奪還」と書いてありましたが、中国でのデモは官製デモですので、中国政府は、琉球はもともと中国のものだと思っている表われです。中国が日本を攻撃するとは思いませんが、エネルギー問題で東シナ海と南シナ海の覇権を狙っていることは間違いありません。以上は、厳しい現実問題としてとらえるべきです。   

  尖閣の領有権に対して米国は、中立の態度をとりますが、日本の施政下の領土が攻撃されたら安全保障条約の対象になります。クリントン国務長官は前原元外務大臣に、尖閣が中国に攻撃されたら、安全保障条約の対象になると、はっきり言明しています。又米国は1972年沖縄を返還したとき、尖閣を日本の領土として返還しています。


(3)沖縄の戦略的重要性

  沖縄には、日本の米軍基地の7割がありますが、沖縄が東アジア防衛の戦略的位置にあるからです。平和を維持するためには、非武装中立主義で平和は維持出来ず、十分な抑止力を有して、初めて平和を維持できるのです。

  又軍隊はいつも訓練していなければ戦場で戦えません。特に、海兵隊は即応体制と統合性のある機動力が必要な軍隊であり、いつどこに派遣されるかわかりません。だから一年中訓練しなければならず、そのためには、海兵隊と他部隊が同じ場所でないと訓練できません。鳩山元首相が言った辺野古だけ県外では訓練が出来ないのです。つまり日本を防衛するためには沖縄が要るのです。それなのに日本の陸上自衛隊が米軍基地で訓練することになぜ反対するのか?沖縄に基地がなかったら平和になると言いますが、全く幼稚です。保守系の議員が、訓練の必要は分かるが、選挙があるから公には反対させて欲しいと抗議してきましたが、本音と建前の差が大きく二枚舌です。訓練は防衛のために行っているのです。

  米軍再編の合意の目的はふたつ、できるだけ基地の周りの負担を軽減すると同時に抑止力を、向上しようとするものです。そのために、日本の自衛隊とともに共同訓練しなければならないのです。さらに、基地の共同使用と総合運用性を向上しなければなりません。その共同訓練の促進によりトモダチ作戦が成功しました。具体的再編計画の中身は「普天間をキャンプ・シュワブの中に移す。次にそれが出来たら8千人の海兵隊をグアムに移す。そして残りの1万人は、人口密度の高い南の施設を返還して北部に移す」ものです。

  仲井真知事は、すべてをぶち壊した鳩山元首相が登場するまで基本的に賛成し、かなり協力的でした。然し、元首相が県外移設を約束したから、県内移設には乗れなくなって残念です。

「最後に」

  オスプレーの配備は、古い型から新しい型への切り替えの問題です。事故率は、これまでのヘリコプターと変わりません。特に沖縄から尖閣に飛べるオスプレーを、岩国から移すことにより、中国への強いメッセージを発するべきです。オスプレー配備に反対していては中国の思うつぼです。何も決断しないのではなく、速やかに抑止力を強化していくべきです。そのためには防衛予算を増やし、戦闘機導入のペースを上げ、イージス艦を増やし、海上保安庁を強化して、総合的に抑止力を強化するべきです。又島に駐屯地を設営するべきです。あらゆる手段で国を守るのは政府の責任です。


質疑応答
「質問1」
 

日清・日露戦争は、命をかけて戦われた、現在の日本では命をかけて決断できる政治家がいないが、どうしたらよいのか

「回答」

選挙民に迎合するのではなく、国のために命をかける政治家が欲しい。命をかけるという点では最近自衛隊の評価が高まっているが、国民は次の選挙で決断できる人を選ぶメッセージを出さねばならない。維新の会の勢力が強く、これまでの政治家ではない新しい人が選ばれるが、連立政権になるのではないか、なぜならば、国民は今までの決断出来ない政治にうんざりしているからだ。そして、それは政治家の責任だけでなく国民の責任であることも忘れてはならない。


「質問2」

米国は中国と、どのようにつきあうのか

「回答」

日米と米中は全く違う次元の関係にある。中国は米国にとっても無視できない重要な大国である。然し日米は同盟関係にありパートナーである。鳩山・菅時代でも日米安全保障関係は緊密に機能していたし、日米両軍は毎日共同訓練を行い、トモダチ作戦は成功した。どのように中国からの脅威があっても、日米関係は緊密に機能すると確信している。



「質問3」

中国、韓国のロビー活動で反日工作が行われているが心配である。

「回答」

反日議員は増えていないと思う。確かに、経済的な面で中国は重視されている。日本に対しては経済不況から乗り越えられるのか、又政治の混迷も懸念されている。又日米の議員間の交流はもっと進めるべきだ。



「質問4」

もしオスプレーの欠陥が疑われた場合、どのように欠陥に対して対処するのか?

「回答」

欠陥があったら直すだけである。これまでのヘリコプターはベトナム戦争の時に使われていたもう部品のないもので、沖縄だけでなく全世界でオスプレーに更新されている。10年前開発段階で事故を起こしたが、その後改良されて来た。配備されなかったら海兵隊が動けなくなるので、撤退するしかない。政争の具にするのは中国の思うつぼである。



「質問5」

中国はアメリカが出て来ないように軍艦でなく漁船監視船、漁船で上陸した場合に日米安全保障の対象になるか?

「回答」

よい質問だ。軍でない監視船、漁船でも武器を持っていれば安全保障の対象になる。              

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