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武藤記念講座(講演会事業)

記念講座の記録(要旨)

2013年7月20日(土)

前防衛大臣 森本 敏氏
「最近の東アジア情勢と日米同盟」 
 大阪 「武藤記念ホール」


  第T部 中国問題

第一章 尖閣諸島領有権主張までの戦後史

第1節 「国民党政府軍を台湾に転進させ、中国全土を支配した共産党軍」
  第二次大戦が終り、我が国が大陸から手を引いてのち、抗日戦線を組んでいた蒋介石の国民党政府軍と共産党軍は、2年半に亘りその後の主導権をどちらがとるかという激しいリーダーシップ争いを演じたが、国民党政府軍は、優勢な毛沢東の共産党軍に押されて徐々に台湾への転進を余儀なくされた。然し転進と言っても、実際は敗走であり、1949年末までに蒋介石は将兵80万人を含む200万人を率いて台湾に移り、中華民国政府は台湾に本拠を構えることになった。一方、中国共産党はまだ大陸を完全に掌握してなかったが、やがてゆっくり支配の手を全土に拡げて行った。その後中国の正統政府と認められるまで3/4世紀近くの時間がかかったが、毛沢東はマルクスレーニン主義に基づき人民公社を中心とした社会主義経済を進めて行った。

第2節 「蜜月だった中ソも、修正主義と教条主義で対立へ」
  当時ソ連はスターリン全盛時代であり、スターリン拡張主義をすすめていたが、50年代の中ソ関係は共に社会主義をすすめ、互いに手を結ぶ蜜月時代にあった。然しソ連は、スターリンの死後スターリン批判が起こり、フルシチョフが全権を握ると、「修正主義」により徐々に資本主義的思考を取り入れて行った。一方、毛沢東はこれに反発してマルクスレーニン主義の「教条主義」にこだわった。かくして、米ソ冷戦下、60年代後半には同じ共産主義陣営の中ソはイデオロギーのみならず政治・軍事対立を深めて行った。

第3節 「米中接近後、共産党政府が正当国家として国連加盟へ」
  トルーマンドクトリンによりソ連を封じ込めようとした米国は「敵の敵は味方」の論理で中国への接近を図り、ニクソンは1971年7月にキッシンジャーを遣わし、72年2月には自らも訪中、79年に中国との国交を回復した。一方、日本は72年9月に中国と国交正常化を行ない、台湾との外交関係を断ち切り、台湾を国家ではなく、地域として認めるとの、対中政策の転換を行った。中国共産党は台湾を中国の一部と見ており、国民党との決戦は毛沢東以降も実現せず、台湾統一の宿題は未解決のまま現在に至っている。然し共産党総書記・軍事委員会主席・国家主席として中国の最高指導者となった習近平は就任以来「中華民族の復活」を唱えており、「中華民族」の意味するところは不分明であるが、暗に在任中の台湾統合の決意を示している。

第二章 尖閣諸島領有権主張の背景

第1節「中国型社会主義市場経済と外資導入で経済成長軌道へ」
  中国は社会主義経済体制では豊かにならないと、その限界を感じ、80年代末以降は、「中国型社会主義市場経済」の道を進むようになった。然し国内資金不足の為、外資導入によりインフラを整備し、工場を造り、安価な労働力と技術革新により出来た製品を輸出して外貨を稼ぎ、その外貨を労働者に分け与えることにより、国民生活のレベルを上げる経済モデルを遂行した。この「外資の導入」と「貿易の振興」の経済モデルは、ケ小平の言った韜光養晦(才能を隠して、内に力を蓄えるの意)に従いつつ、今日の中国経済を豊かにした鍵であり、20年間平均年11%以上の経済成長を遂げた。然し2008年のリーマンショックにより米国への輸出が低迷すると、内需拡大策と金融緩和策により、その後も年9%の成長を維持して来たが、最近は7.5%(インフレ率は2.5%)に落ち込んでいる。これは明らかに外資の流入が細っており、かつ先行きも投資に慎重な国が増えているため、中国経済の成長は鈍化していると見ざるを得ない。ちなみに中国の外資導入先も輸出の相手先も米国と日本が他を圧倒している。よって中国は日米両国とは本格戦争は出来ない経済構造となっている。

第2節 「さらなる経済成長に必要な資源エネルギーの確保へ」
  中国の経済発展にとってもうひとつ重要であるのは資源エネルギーである。中国は莫大な石炭を産するが、中産階級は、電化と車の生活を始めている。中国の年間の新車販売台数は2000万台であり、(日本は500万台、米国は1500万台)2030年までには3000万台になると言われている。 従って工場を動かすだけでなく、人々の生活のレベルを上げ、特に自動車を動かすために、原油を中東、南米、北アフリカに求めて来た。特にシェールガス革命により、米国の中東の石油依存度が下がっており、中東の原油はインド・日本・中国で全部消費されるようになると言われている。このことは米国が中東にあまり大きな関心を示さなくなることを意味するのであり、これからますます依存度を高める日本にとっては悩ましい問題である。

第3節 「海洋資源にも触手、尖閣諸島領有権主張へ」
  以上のように中国は自国の経済発展のために世界各地にエネルギーを求める外交の手を出して来たが、それでもまだ足りないので目をつけたのが海洋資源である。国連が1969年に東シナ海と南シナ海に資源探査を行った結果莫大な天然資源と水産資源の潜在力を有すると発表した翌々年、尖閣諸島の領有を主張し始めたのである。
  このように中国が経済成長・経済発展につとめているのは、中国共産党による一党独裁体制の下で統治を安定させるためである。即ち、中国にとって経済成長は国民を統治に従わせるための手段であることを忘れてはならない。

第三章 尖閣諸島の領有権紛争

第1節 「尖閣諸島が日本固有の領土であることに一点の疑問もない」
  そもそもサンフランシスコ条約で日本が返還しなければならない島の中に、尖閣諸島は入っていなかった。その後、沖縄諸島は米国の信託統治下に置かれ、沖縄返還時に尖閣諸島も一緒に日本に返還された。従って中国側の「明の時代から中国の領有」と言う主張は全くの言いがかりである。又同じく中国の言う「棚上げ論」や「共同管理論」に同意することは、我々が主張する日本固有の領土であることを自ら否定するものである。日本の領土の面積は世界190ヶ国のうち61番目であるが、細長い約3千kmの列島は約6850以上(5つの本島と、約6400の無人島)の島からなるので、領土の沿岸から約370km(領海は22km)にある排他的経済水域(EEZ)の総面積をカウントすると世界で6番目となる。従って小さな島(岩では駄目であるが)と言えどもおろそかにせず、外国の侵略から領土を守るのは国の重大な責務である。

第2節 「中国の領海侵犯に対しての対応の難しさ」
  マスコミの言う国有化と言う言葉は国が強制的に管理すると言う意味があり、国の「取得」と言う方が妥当であるが、それは別として、昨年9月の国による取得以来中国の国内反発は大きく、無害通航権(領海を一定速度で迅速に通り抜ける権利)で認められる範囲を超えている。(法執行をするための)停泊や徘徊をする無害でない運航が毎週行われ、又昨年の12月には領空侵犯も起こっている。領海侵犯に対しては音声又は無線による退去要求しか出来ず、放水したり、船をぶつけたり、威嚇射撃することは国際法上出来ない。そして近寄るとお互いが妨害活動をして、責任を押し付けあうトラブルとなるので一定の距離を保ってギリギリの駆け引きを行っている。中国の公船が日本の領海を、自分の領海であると主張して、日本の漁船を拿捕した場合、それを取り戻す交渉において、領有権問題があることを認めよとの交渉条件を出して来た場合は厄介であるので、海上保安庁の船は両者の間に分けて入って拿捕を防いでいる。日本の領海内で中国の公船が自国の漁船を拿捕することも、中国の領海であることを内外に示すことになるので好ましくない。いずれにしても中国公船による我国漁船の拿捕や、両国船の衝突による船の損傷と怪我などの不測の事態が発生すると、必ず両国民の間に反感感情が大きくなり、外交問題に発展するので中国を挑発しないよう十分配慮する必要がある。

第3節 「ひとつの島でもおろそかにする国は尊敬されない」
  しかしながら、常に近寄って来る中国には必要な措置を取らねばならない。然し絶対スキを見せないように、不必要な挑発をせず静かに守らねばならない。ひとつの島でもおろそかにする国は歴史の中で尊敬を得ることは出来ない。日中間は尖閣問題の他に靖国参拝に係る歴史認識という問題もあり、どうにもならない状況にある。日中首脳会談、さらには閣僚レベルの会談も開かれず、日本車は傷つけられるので売上げが落ちており、対中貿易、対中投資、日本からの観光客も減っている。その結果、中国も経済が悪くなって困っており、最近ではある種の微笑外交を行い、米国にも近寄っているが、尖閣問題はもともと日本の固有領土であるので、交渉する必要はないし、国際司法裁判所に提訴する必要もない。両国ともが主権を主張しているのでどうしようもないが、引き続き警戒監視機能の強化は必須である。


  第U部 北朝鮮問題
  父親の金正日は20年間の後継者教育を受けたが、30歳前に国家と軍の最高指導者になった、金正恩の訓育と教育期間は3年足らずであり、まだ国家主導者としての知識と知恵を有していないと思われる。然し、就任以来国内視察を100回おこなっており、又自分に忠誠を誓う権力構造の基盤を強化するため、軍人の降格を含む人事異動を頻繁に行って国内指導者としての基盤づくりに努めつつ、それなりに振舞っているが、まだ外国の首脳と一度も会談を行っておらず、父正日や習近平の外交交渉能力には及ぶべくもないだろう。
  北朝鮮の国家目標は金体制の存続であり、金正恩がフセイン、カダフィー、オサマビンラーディンのように米軍に殺されることを最も恐れている。それを防ぐ方法はひとつしかない。それは彼の身の危険が迫った時に、核ミサイルを米本土に打ち込む実力を有することを米国に確信させることである。その為にミサイルの射程距離延長と核弾頭の軽量化・小型化・宇宙から大気圏に入る時のシールドの耐熱化の技術開発に余念がないのである。
  中国は石油・天然ガス、武器弾薬と食糧で支援して北朝鮮の体制の存続を図っているが、それは中国の利益にならないと言うことを中国に悟らせる以外に、北朝鮮の挑発行動を止めさす方法はないが、日中関係が冷え込んでいるので難しいのが現状である。


  第V部 韓国問題
  パク・クネ大統領は必ずしも国内の支持率は高くない。然し就任後すぐ行われた米国議会での演説は大好評であり、米国との関係は良くなっている。然し日韓関係は日中関係よりもっと難しい。その8割は竹島問題であり、もうひとつが慰安婦問題である。竹島問題については、そもそも韓国が島を奪っているのに、韓国の人々の怒りの方が、奪われた日本人より、はるかに大きい。韓国の人は、日本が領有権を主張していること自体、反日ナショナリズムのシンボルとなっているが、いずれにしても日本人はもっと領土に執着するべきである。
  されたという証拠はない」と言うのが概ねの趣旨である。韓国の方は「正しい歴史認識」慰安婦問題について、河野談話は「慰安婦問題は確かに存在したが、慰安婦制度が強制されたという証拠はない」と言うのが概ねの趣旨である。韓国の方は「正しい歴史認識」と「信頼と原則」が必要であるとしているが、その意味するところは「問題解決の方法は日本側から示すべきであり、正しいかどうかは韓国が判断する。さらに日本の解決案が信頼に足るならば、韓国は原則に従って行動する、信頼に足らないならば原則に基づいては行動しない」と主張しているが、そのような一方的な考え方では日韓問題は解決にならない。どうすれば問題を解決できるのかを一緒に模索するのが外交である。
  つまり慰安婦問題は日本が起こしたのであるから、日本が提案して解決するべきであり、解決出来ないのならば、日韓関係はこのままで構わない、軍事面では米韓関係があり日本に頼る必要がないし、経済面では中韓関係があるので日本に依存する必要はない、と主張しているため、元に戻すのは非常に難しく、現時点で首脳会談が行われる状況にはない。
  終りに
  結論としてふたつのことを大切にするべきである。ひとつは米国との関係をきちっと繋ぎとめておき、上述の諸問題について米国にその理解を得ておくことであり、もうひとつは歴史認識については、日本の立場を自信をもって説明出来るよう、正しく教えられて来なかった明治以降の「近代史と現代史」を勉強し直すべきことである。
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