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武藤記念講座(講演会事業)

第980回武藤記念講座の記録(要旨)

2013年9月21日(土)

   政治評論家
 屋山太郎氏

「安倍内閣の今後の課題」 副題 再び大国を目指す日本
 大阪 「武藤記念ホール」


第一章「官僚主導から政治主導へ転換

第1節「政治主導による異次元の政策」
  15年間もデフレ不況が続いたのは、政府がそれに対して全く無策であったからである。その結果世の中全体が下向きの気分となり、働き盛りの若者までが、倹約することばかり考えて希望を失っていた。然し最近になってようやく全体の気持が上向きとなって来た。さらにそれは単に景気が上向いただけでなく、その結果日本が再スタートのラインに立った感じがする。
  なぜ政府は無策であったのか。それは、時代の曲り角に政治は官僚内閣制が依然として続いており、政府が主導しない官僚組織では「異次元の政策」が取られなかったからである。そもそも官僚とは前例を繰り返すことを仕事と考えている。然し良いときは同じことを繰り返しておけばよいが、悪いときに展望なしにひたすら同じことを繰り返し、良い方向へ舵が切れないようでは、無策以外の何ものでもない。
  官僚機構を変えるとの公約を掲げた民主党への政権交代に、私は一抹の希望を抱いたが、彼らは完全に官僚に取り込まれてしまった。一方安倍首相は就任以来、官僚に「君達の言うことは分かるが、それは間違いだから、政治主導でこうやる」と強い意思で官僚をリードして、先ず日銀総裁を政治主導で選んで財務省支配を打破した。然しそれは官僚を蔑んでいるのではなく「官僚の論理と政治の感」は全然違う次元の話であるからである。そのため国家公務員の幹部600人の人事を一元管理して、官僚が省益のためでなく国家のために働くしくみを目論む「内閣人事局」の実現を、抵抗勢力が幾多あるなかで稲田行革大臣をして進めさせている。

「閑話休題」
  麻生副総理は官僚に差配されることがあるが、外交では右利きであり、鳩山・菅両氏のように左利きでないので安心出来る。

第2節「政治主導の為の内閣の布陣と手順」
  前回の安倍内閣はお友達内閣で失敗したと言われた。然し自ら目指す政策を実現していくには同じ志を持つ人たちで官邸を固めるのは当然である。今回は一番大切な官房長官を筆頭に、ベストメンバーを揃え、この陣容で乗り切る覚悟が見てとれる。特に菅氏は無私の人であり、言ってはいけないことは言わないが、うそ・はったりがなく、首相に私心なく仕える信頼感のある内閣の要である。
  さらに今回はやりたいことを雑貨屋のようにテーブルの上に全部をのせず、政策実行に優先順位をつけた。即ち就任早々の12月にアベノミクスを断固打ち出し、株価と景気を上向かせて内閣支持率を確かなものとしてから、TPP参加を3月にテーブルに出した。さらに9月には集団的自衛権を持ち出して、内閣法制局長官を入れ替えた。然し肝心の憲法改正は長期政権を目指しているのか、ある程度時間をかけて国民の理解をゆっくり得ようと構えている。即ち思ったことを手順よくやり、ハンドリングも大変安定感があると言える。その結果官僚も恭順の意をやむなくされている。
  この度の消費税増税の議論については、官僚は将来の景気がどうなろうとも、税金を徴収して借金を返し、勘定を合わすことだけを考えるが、安倍首相は官僚の敷いたレールにそのまま乗るのではなく、税率を3%(税収増は8兆円)引き上げるが、2%に相当する5兆円は、投資減税、法人税率の引き下げ等の税制改革により、景気回復に資すべきとしている。それが浜田宏一内閣官房参与の1%ずつ引き上げの意味するところである。

「閑話休題」
  かくして7年後のオリンピックまで首相続投という線も出てきた。然しそのあとに時代を担うカリスマ性のある人は橋下徹氏であろう。彼のように政治問題の本質と根源に正攻法で迫る能力、発信力、そして勇気ある行動が出来る人は他にいない。学力テスト、犯罪発生、生活保護受給、失業率、離婚率においてすべて全国ワースト5に入る大阪が悪い根源は、「教育が悪いからだ」と、教育行政と教育委員会の改革を断行した。又教育基本条例と職員基本条例により、教員、職員の政治活動を厳しく制限した。一方みんなの党の渡辺喜美氏は橋下氏と「義絶」すると言ったが、認識違いも甚だしい。第二極をつくるためには政界再編をしなければならないのに、参院選を一緒に戦わず大きなマイナスとなった。橋下氏が堺を含めた大阪都構想で中央集権体制を打破して、全国の地方活性化をリードすることを期待するものである。公務員改革の要は地方分権であるからだ。

第3節「政治主導による構造改革と規制改革の仕上げ」
  4600もある天下り法人廃止は、自民党時代も、又根絶を公約した民主党政権もひとつも実現出来なかった。「規制」をする側の行政府が、補助金と天下りで、事業にまで手を出している「構造」の打破は、安倍内閣の政治主導でなければ出来ないのではないか。私も関与した土光臨調による国鉄の民営化により、2兆円の赤字であったのに7千億円の利益を出せるようになった。その時土光さんに郵政も同時にと進言したが、このような大きな問題は「時が来て、機も熟し、ひとりの気狂いが必要」と諭された。然しその後、小泉首相は三つ目の要素を自ら満たして見事に郵政改革を成し遂げた。
  又、電力会社の長が各地の経済界の長になっているが、競争入札もしない殿様企業であるから地元の企業から推されているのであり、電気料金を「総括原価方式」で決めるのでは、事業ではなく管理人に過ぎない。又電力料金は「発送電分離」により競争入札で2〜3割安く出来るだろう。
  安倍首相は女性の能力の活用も成長戦略のひとつの核としている。そのため結婚後もキャリアーウマンを続けるためには育児施設が不可欠である。世田谷区は民間企業の参入を拒んで待機児童を3万人も抱えているが、横浜の林市長は予算を増やし、かつ民間企業も活用して1万5千人をゼロにした。

第二章 「価値観外交」の展開と「TPP」の実現

第1節「中国抜きの価値観外交とTPPへの参加」
  最初は日中韓の集まりであったが、それがASEAN10ヵ国を加えた共同体構想となり、さらにインド、豪州、ニュージーランドを加えた16ヵ国のRCEP(東アジア地域包括的経済連携)が構想されていた。
  然しマレーシアのマハティール氏の指摘の通り、16ヵ国の中で日本とインドを合わせても、中国とのバランスが取れない中で、小さな四カ国でスタートしたTPPに、米国が乗り出して主導権を握った。それは始めからの米国の策略かもしれないが、日本はそれに乗り換えた格好となったのである。その大義名分は「自由、民主主義、基本的人権」の価値観の共有による見えざる対中包囲網の形成(中国抜きの経済圏の形成)であり、日本経済がアジアを引っ張らねばならない。
  日米の利害が一致しているのは知的所有権の模造品対策であり、中国の参加を牽制するものである。農業分野と医療分野は反対論が多いが、ふたつの分野とも鎖国で守ることは出来ない。然しそれらの開放の成果はアベノミクスの成否の鍵を握るだろう。日本全体の国益を考えれば安倍首相の交渉参加決定は正解である。

第2節「TPPを奇貨とする農政の転換」
  政府と農協は農業保護を言い続けたのに無策のまま、農業生産額を11兆円から8兆円に減らしてしまった。その原因である後継者不足と耕作地放棄に対しては、株式会社等による新規参入の自由を確保し、経営規模を大きくし、かつ強要されている減反政策と増収米の品種改良を解禁すれば一俵15000円の米価は、4〜5000円に下げられるだろう。
  又農家の生産物販売、肥料・飼料等の仕入れ、与信・保険について特権的利益を得ている農協組織にメスを入れなければならない。農家はジリ貧だが、農協はボロ儲けである。先進国でこのようなお粗末な農業政策の国はない。よって基本となる農地法の改正による制約のない「農地売買・貸借の自由化」及び農協法の改正による無条件の「農協設立の自由化」を行わねばならない。これまでは土地の売買については、市町村の農業委員会が許認可をしていたが各委員は地方のボスであるので、土地の流動化は彼等によりむしろ妨げられていたと言えるからである。以ってTPPをむしろ奇貨として農業を革命しなければならない。
  日本の農業技術、品種改良の能力、土壌と水質の良さは決して欧米にひけをとらない。特に果樹と蔬菜の分野は自立した専業農家が多く、開発能力と事業センスがあれば、農協や国の援助なしに、世界に打って出て勝負できるのである。

第3節「TPPにより規制をはずせば医療は成長分野となる」
  考えられないかもしれないが、医療部門は薬品も含めると3兆円もの輸入超過である。日本の医療機器や、技術、薬品開発力からすれば相応の数字とは全く思えない。それは良いものを持ちながら規制が多すぎるからである。例えば新薬開発・承認の期間が外国は2〜3年であるのに日本は10年かかり、試験している間にまだ売れる旧薬を売り続けているのではないかと怪しまれている始末である。日本と外国との間にこのような許認可の期間に差があるのは、天下りによる製薬会社と厚生労働省との癒着があるからではないか。

第三章 「国防」情勢の変化への対応

第1節「日韓、日中に和平なし」
  国際関係に於ける一番大きな問題は中国問題である。現代の「汚職」と「水」の問題も深刻であるが、中国五千年の歴史と言うが、古代と中世で終っており、近代の歴史はまだないと言える(倉山満著、嘘だらけの日中近現代史、扶桑社刊参照)。即ち漢籍に書いてあるような孔子とか孟子のような人は現在誰もいないうえに、中国の人達には「近代」の考え方が出来ず、習近平は権力闘争で手一杯で、近代に必要とされる国の秩序がない状態である。よって朝貢を拒否した聖徳太子の外交に見習い「脱中国」するしかない。同様なことは何かにつけて勝手なことを要求する韓国に対しても言えることである。朴政権は反日でしか政権がもたないのだから。

第2節「米中覇権争いのはざまで」
  米国はヒスパニックやアフリカ系が増えて、議会で民主党が常に多数を占めていくと考えられるので、強いアメリカを追求する共和党と違い、シリア問題に見る如く民主党政権下での米国の外交力は弱体化して行くだろう。今後防衛費を中国がこれまで通りの軍事費の伸びを続ける一方、米国は健康保険等の社会保障の充実のため、逆にほぼ同額の軍事費を減らして行くならば、10年経てばその軍事力のバランスは大きく崩れるので、米国は「ピボット作戦」と称して兵力の中東からアジアへの「リバランス」を考えている。

第3節「日米関係を集団的自衛権で強化する」
  このような情勢の中で集団的自衛権の行使について、権利はあるのに行使できないとの解釈では国を守れない。そもそも憲法98条では条約(国連憲章)遵守の義務があり、条約に謳われている集団的自衛権は国内法である憲法に優先するのである。従って集団的自衛権に基づいて日米安保体制を強化し、日本の「技術力と人間力」をもってすれば、中国に対して優位を保てない筈がない。日英同盟で日露戦争に勝利したように、中国に対しては米国との二国同盟が最強である。それは日英同盟のあとの四カ国条約は何の力にもなりえなかったこと、又現在の国連軍も頼りにならないことを考えれば明らかである。

「閑話休題」
  ロシアが国際的発言力を増している。プーチン大統領はシリアの穏健派に売った武器が過激派に流れているとドイツとフランスを非難する一方、シリアに化学兵器を破棄させ、オバマ大統領に軍事介入をやめさせて彼の権威を地に貶めた。一方ロシアは日露関係の改善に期待を寄せているのではないか。

「質疑応答」
質問1 

  ケネディー大統領の娘の駐日大使就任について

「応答」

  本来、反戦・平和主義者の大統領が、キューバ危機でロシアを屈服させたのは、米国の軍事的能力はソ連に優位すると判断したからであり、一方ロシアの方は負けると判断したから引いたと言われている。然しその勇気ある決断、悲劇的な最後は、かっこよさも手伝い、判官びいきの日本人には、尊敬されている。オバマ大統領は父同様に親日家でもある彼女を大使として派遣して、「日本に友達を送る」メリットを考えたのではないか。


質問2

  安倍・菅ラインについて

「応答」

  総裁選挙で安倍氏を最後に推したのは麻生氏であり、安倍・麻生は盟友ではあるが、麻生氏には次は俺との思惑があるかもしれない。然し二人は官僚に対する考え方が、麻生氏の最初の行革の失敗にも見る通り、決定的な差があり、安倍氏はしらけているのではないか。それに対して菅氏は、麻生氏のように全く思惑はなく、その無私の姿勢は見ていて気持ちがよいのである。


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