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武藤記念講座(講演会事業)

第992回武藤記念講座要旨

2014年7月5日(土)

  産経新聞社 専務取締役 大阪代表 齋藤勉氏
 「中露の『歴史転覆』工作と日本」 
       大阪「武藤記念ホール」


セミナー


講演中の 齋藤勉氏。
プーチンの故郷レニングラードと姉妹都市の大阪からつねにプーチンをウオッチしていると話す齋藤専務取締役。


第一章「「ソ連共産党独裁放棄」から「プーチン」まで」

第1節「ペレストロイカに迎えられて」
  私は1987年から5年間モスクワに一回目の駐在をした。然し、幸いにもそのときはすでに1985年からペレストロイカが始まっており、言論の自由はまさに百花繚乱の趣であり、目の前の出来事をすぐ記事に出来るようになっていた。それまでの共産党体制下では、党にとって都合の悪いことは、真実という意味の「プラウダ」紙も全く真実を書かなかったし、情報という意味の「イズベスチャ」紙も全く本当の情報を伝えていなかった。それでも私の先輩達は、後生大事にそれらの行間を苦労して読み取り、日本への記事を書かざるをえなかった。又それら党機関紙に頼らず街で集めたニュースが日本で記事になると、狸穴のロシア大使館がそれを翻訳してKGB(ソ連国家保安委員会)本部に打ち返し、党にとって都合の悪いことが書かれていたら、呼びつけられて厳重注意を受けた。即ち共産圏の国の情報は国を利するためのものであり、真実の情報は出て来ず、言わば謀略の情報であったので、それに乗る特ダネは危険であると、本社から禁止されていたのである。従ってその特ダネが解禁された時期に、私がソ連崩壊の特ダネを書けたのは、時代の賜物であると思っている。

第2節「世界に先駆けた「ソ連共産党、独裁を放棄へ」の特ダネに成功 」
  特ダネを書くのにウォッカが力になってくれた。単身赴任でもあったので、私は毎晩のように飲み歩いていた。そしてそこで出来た人間関係が取材網となったのである。少し前までは人を新しく知ると尾行がついたが、その心配もなくなっていた1990年の雪の降る1月末のある日、小さなパーティーに参加した私はそこでウォッカ友達に出会った。そしてその友達が、ソ連共産党が大変な変革をするとの噂があると、耳打ちをしてくれたのであった。私は詳細を是非教えて欲しいと懇願したが、きちんとした「文書」を持っている人に聞くべきだとアドバイスしてくれたので、自宅に帰りウォッカ友達に、片っ端しから電話をしたが知っている人はいなかった。然し三日間かけて文書を持っている人を探し当て、翌日会ってくれることになったのであった。然しその人からは、文書は渡す訳にはいかない、要点を読むのでメモせよと言われ、「ソ連共産党、独裁を放棄する」の内容には仰天しながらも、ロシア語と悪戦苦闘しながら書き取ったあと、取って返して東京に電話したが、まだ世界中の通信社からその報道がなされてないことを知り、一時間で原稿を書き上げ、地元のタス通信も出し抜いて翌朝の一面トップを飾れたのであった。
  「閑話休題」
  然し、KGB(ソ連崩壊後はロシア連邦保安庁FSBとなったが、この稿では分かりやすいので引続きKGBとする)はこのまま改革がどんどん進むと米国と対抗して来た帝国が、いつどうなるか分からないと焦り、変な記事を書いた新聞記者には尾行を強め、いやがらせをしたのであった。私はKGBの駐在所のすぐ前の宿舎に駐車していた車のタイヤを四つともパンクされたり、夜帰ると宿舎の家具の位置が変わっていたり、本棚がひっくり返されたりしたのである。しかも二年前ロンドンオリンピックの時にモスクワに立ち寄り、旧知のある知識人に会おうとしたが、私はまだブラックリストに載っているので、会うのを拒否されたのであった。

第3節「野望を実現し続ける男、プーチンとは」
  私は、プーチンが大統領に就任した2000年から3年間2度目のモスクワ駐在となりプーチンの第一回大統領選挙戦に立ち会うことが出来、まだ若造だった選挙委員長のメドベージェフにもインタビューすることができた。プーチンは日本が好きだから柔道を始めたのではない。彼は幼い頃体が弱く、よくいじめられたので人に負けまいとして柔道を始めたのである。従って彼が柔道をしているので北方領土を返してくれると考えるのは、間違いである。又彼は家が貧しかったので、その分出世欲が強く、そのためには「スパイになるに如かず」と故郷レニンラード大学で法律を学んだが、専らスパイ学を学びKGBにスカウトされた。ドイツ語が堪能な彼はソ連崩壊時には東ドイツのドレスデンに駐在していた。その後彼はKGBを一度は辞めたが、複数の行政官庁で出世を重ね、エリツィン大統領にKGBの長官に抜擢され、さらに首相を務めたのち、エリツィンの後継者に指名され、選挙に勝利して大統領となった。なぜプーチンが大統領になれたのか、ロシアはそれまで革命前の一時期を除き、民主主義を経験していなかったので、自由にはなったものの政治も経済も混沌となってしまい、国を締め直すためKGBの後押しでプーチンが抜擢されたのであった。プーチンも最初の三年間は民主主義的であったが、やがて身の回りをKGBと軍の出身者で固めて、硬直した強行策を始めたのである。日本の北方領土で獲れた魚を、すしネタとする沢山の寿司屋と、プーチンの配下にあって利権にありついた、石油成金の林立している超豪華金ぴかマンションが、当今のモスクワの光景であるが、一皮むけば北方領土についても、金ピカマンションについてもプーチンの「新スターリニズム」が見えてくる。なぜならば彼は何よりもスターリンが大好きであり、さらにロシアを近代化・西欧化した、故郷のピョートル大帝のようになりたいのである。彼の政治手法は虐殺と粛清こそしないが、精神構造はスターリンとそっくりであり、二千万人の国内の戦死者を出しながらも、米国に対抗できる国を創り上げたスターリン時代の大国ロシアの復活を心から望んでいる。そのため陸地では15の国に分かれて小さくなったので「海洋大国」にしたいとの公約を就任時に掲げた。ところが、まもなく起きた潜水艦の沈没事故により、海洋大国の夢が一時頓挫してしまったが、その後14年間その気持ちを持ち続け、今回のクリミア併合となったのである。尚彼が尊敬する人物はもうひとり、KGBの大先輩アンドロポフであり、彼は二人の誕生日にはクレムリンの元勲の墓にカーネーションの花輪を捧げており、独裁者に対する尊崇の念は大きい。

第二章「中露の歴史転覆工作 」

第1節「スターリン、ヒットラーと同一手法の露のクリミア併合」
  今回のウクライナの動乱に直面して、プーチンはウクライナがロシアから離れ、西側に走るかもしれないとの危機感に駆られた。なぜならば、ロシアの台所である大穀倉地帯と工業地帯を有し、西側との大緩衝地帯でもある、フランスと同じ4500万人の人口のウクライナを失うことの戦略的意義は非常に大きく、失えば欧米との冷戦を戦えずプーチンの大国ロシア復活の夢に大きな支障となるからである。さらにウクライナはスターリンが死んだ翌年に、フルシチョフがご褒人が沢山住んでいることを名目に、国中が大混乱している隙に、クリミアをとるのは今だと、軍隊が「ドヤドヤと押し入りガバッとぶんどった」のである。然美に自分の故郷に与えた国であり、もともとはロシアの領土という意識がある。そこでロシアしこれは全く国際法を無視したものであり、まさにプーチンがスターリン的本性をむきだしにした一瞬であった。そしてこれはスターリンが北方領土を日本から奪ったのと、全く似ていることに注目するべきである。即ち北方領土はスターリンが日ソ中立条約を一方的に破って、日本が武装解除したあとに火事場泥棒的に、ソ連の軍隊が一方的に強奪したものである。さらにこれはヒットラーがチェコのズデーテン地方を併合した手法と同じである。クリミア併合はまさにプーチンの世界戦略である海洋戦略を、不凍港であるセヴァストポリを基点とするためのものであり、かくして黒海から地中海、大西洋、北極海、太平洋へ繋がる海洋戦略の夢と野望は潰えなかったのである。以上の結果新しい冷戦が始まるのか否かは、昔の冷戦時代と比べロシアの力が落ちているので私は否定的であるが、当面東西に多少の緊張が生じて冷戦的になっていることは確かである。ロシアはクリミアと北方領土を奪取したが、ロシア人は、「領土は血」であるとの意識を有しており、一度確保した領土は一滴、1センチ四方たりとも譲歩しないとの、領土思想を有していることを忘れてはならない。又ロシアの領土交渉は情報機関が陰で動かしていることも、ロシアとの交渉がてごわい理由となっている。

第2節「プーチンと同じ手法の習近平の東・南シナ海収奪計画」
  習近平も帝国の復活を目論んでいる。中国の夢は阿片戦争で負けて国土をずたずたにされた屈辱を晴らすことである。そのため中国の歴史で最も広い面積を誇っていた大清帝国の領土を復活することが習近平の野望となっている。その戦略として、先ず2008年に足元を固めるべく、ロシアとの4千キロに及ぶ国境の確定を当初では考えられなかったのに、アムール川のウスリー島を、50%ずつ折半することで、お互いの利点を見極めて妥協し、一番の懸念だったロシアとの関係を安定化させた。然し一方でチベットとウイグルは徹底的に弾圧して漢民族化を進めている(これは今のところ失敗して暴動が起きているが)。以上により陸を平定して「海への覇権」を唱え、東シナ海、南シナ海のみならず、アフリカ、オーストラリア、果てはグリーンランドにまで出かけて、一人っ子政策をやめることもあり人口対策として、世界中で食料とエネルギー資源を漁っている。中国が南シナ海を強奪し、東シナ海では尖閣、最終的には沖縄を取ろうとしているのは、米国と直接対峙するための海洋戦略であり、ロシアがクリミアを奪ったのと、同じことである 。

第3節「中露連携による黒を白と言いくるめるオセロゲームが始まった」
  両国に共通するのは上記の海洋戦略のみならず、国内では言論の自由がなく、軍がのさばっており、汚職が蔓延し、暴動も最近ロシアではおさまっているが、中国ではチベットとウイグルだけでなく他地域で日常化している。又中国人は自分の国を信用せず、党幹部と金持ちは海外にお金と子女を逃避させている。ロシア人も知識人と金持が海外に亡命・流失している。このように両国は似た者同士であるが、両国が決定的に違うのは、詳しくは後述するが、ロシアの人口は減る一方であるが、中国は増える一方であるところである。然し人口の点を除き似た者同士の首脳が5月に上海で共同声明を出した。その出だしには「中露両国は第二次大戦におけるドイツのファシズムと、日本軍国主義への戦勝70周年を記念して共同で祝賀行事を開催し、歴史の歪曲と戦後秩序を破壊する企みに反対して」とあるが、これは自分たちがヒットラーとスターリンと同じことをやっているのに、それを棚にあげて、「日本をヒットラーに仕立て上げよう」とするものである。ロシアは、北方四島はそもそもロシア固有の領土であり、国際法で確定していると主張しているが、その国際法とは何かと尋ねるとヤルタ協定と言う答えが東京の公使から返ってきた。然し同協定にはドイツが降伏したらソ連は参戦してもよいと書いてあるが、四島を奪ってよいとは書いてないのである。又中国は、尖閣は清の前の明の時代から中国の領土であり、1895年日清戦争後に日本が盗んだと言い、その歴史文書もあると言っているが、それはお決まりのねつ造であろう。従ってロシアと中国の主張は全部嘘である。まさに嘘を真実と言いくるめるのは、「黒を白とするオセロゲーム」そのものである。

第三章「歴史転覆工作に対する日本の国家戦略の必要性 」

第1節「中露の連携は長続きしないだろう」
  上記の共同宣言の他に、天然ガスの長期大量供給契約をした中露の連携はどこまで長続きするのか。両国の関係が本当の同盟関係であったのは、毛沢東が中国を建国した1949年から、スターリンの亡くなった1953年の間だけであった。確かにプーチンはスターリンを、習近平は毛沢東を尊敬しており、歴史のめぐりあわせを感じるが、長続きはしないだろう。その理由は次の通りである。即ち両国の4千キロの国境紛争は解決したが、ロシアのウラル山脈以東のシベリアと極東の人口6百万人に対し、中国は4千キロの国境の南側に1億人の人口を擁し、しかもまだどんどん増加しており、ロシア側の労働力不足のため、非公式では最大で二百万人の中国人労働者がロシアに浸透していると言われている。さらに中国人男性とロシア人女性との結婚が進むと、シベリアが中国に席巻される恐れをロシアは非常に警戒している。又ロシア人は商売上手だが、人を騙し、ずるいと中国人を基本的には信頼していない。一方中国は、ロシアが中国と紛争中のベトナムに武器を供与していることに疑心暗鬼である。従って両国に基本的信頼関係は存在していないと考えられる。

第2節「中国の謀略活動に対して、日本も世界的情報活動を」
  中国は領土問題の嘘のみならず、靖国問題、韓国の慰安婦問題まで持ち出し、米国のマスコミ、特に日本の某新聞と論調が似ているニューヨークタイムズと、ワシントンポストを使って日本の悪口を喧伝している。なぜ米国を主戦場にするのか、その理由は、米国はユダヤ人が多いので日本がヒットラーと同じだとなると、日本はやはり悪い国なのではないかとなり、日本全体を貶めることができるからある。そして日本全体が悪いとなると日米同盟も弱くなり、さらにロシア同様の人口減少もあり、国力がさらに落ちて行き、中国の思う壺となるのである。又中国は世界各地に中国語と中国文化を普及する孔子学院をつくっているが、そこでも日本の悪口を喧伝し、日本へのスパイ活動を行っているのである。中国の諜報活動はこのように半端でないので、日本も安倍政権による集団的自衛権の確立を契機に、情報宣伝戦においても負けないように、中国、韓国などの情報活動に異を唱える世界的キャンペーン体制を早急に整えるべきである。安倍政権はそれが出来る戦略的内閣である。

第3節「領土問題は国家犯罪であり、国家犯罪に時効なし」
  北方領土、竹島そして尖閣の領土問題は領土紛争でなく、ロシア、韓国、中国の国家犯罪であることを認識するべきである。未だ楽観は許されないが、同じく国家犯罪の拉致問題が動き始めた。めぐみさんの両親は自分の娘だけでなく、全員が揃って帰って来ないと本当の解決にならないと言ってくれているが、北朝鮮を取り巻く大断末魔が始まっている。即ち中国からほとんど見放され、経済は悪く国内は反体制が増えてきて、ロシアも必ずしも助けてくれない大激変が起きている。一方北方領土も二島でよいと焦らず、四島全部耳をそろえて返してもらうべきである。なぜならばロシアは中国と天然ガスの長期供給ガス契約を結んだが、ロシアの輸出の7割が天然ガスと石油であり、他に国際競争力のある輸出品はないので、米国のシェールガス大増産の影響を強く受け、中国との契約だけでは安心できず日本への安定供給を望んでいるからである。さらに東シベリアのタイガ地帯のガス採掘には日本の掘削技術が不可欠であると思われる故である。世界は大激変を始めており、戦略的地殻変動が確実に始まっているので、国家犯罪に対しては、あせらずあきらめず「国家的戦略」で立ち向かわねばならない。その為にはじっと我慢して国家犯罪の真実を教科書に載せて、子供達にも知らしめるとともに、世界中に特使を派遣して訴えなければならない。ポーランドは、ヒットラーの犯罪と言いくるめられていたポーランド兵2万人が銃殺されたカティンの森事件を半世紀かけて世界中に訴えて、スターリンの犯罪であったことをロシアに認めさせた。国家犯罪に時効なしである。

「終わりに」
  集団的自衛権行使はまだ憲法改正へのつなぎ段階である。ところが集団的自衛権により戦争が出来る国になり、明日にでも戦争が始まると騒いでいる新聞があるが、常軌を逸している。中国が攻めてきて、「我が国にはこんな立派な憲法があるぞ、引き下がれ」と言って相手が引き下がる訳がないではないか。憲法九条は日本から戦争をしかけないという点において半分正しいが、憲法があるから攻めて来ないとする点で半分が抜け落ちている。中国が攻めて来て白旗を上げ、次に赤旗を掲げたら確かに戦争にはならないであろうが、我々は中国の支配下に陥ることになる。産経新聞社の作成した「国民の憲法」の理念である「独立自尊の道義国家」が今こそ問われている。


「質疑応答」
「質問1」

  反日的な考えを持っている人を変えるにはどうしたらよいか?

「回 答」  

  反日的な人にそんなにコアな人はいないが、無理やり説得しようとしても徒労に終わるであろう。それよりも是非産経新聞を毎日読んでもらって欲しい。食わず嫌い読まず嫌いの人がこんな新聞があったのかと、高い定着率の実績がある。某新聞に少しでも疑問を感じる人がいたら是非勧めて下さい。頭はすっきりすること請け合いです。

「質問2」

  活字をメイン情報にする人は少なくなっているので、さくらテレビ等、ネットから誘導していくべきではないか?

「回 答」  

  産経新聞のネットMSNは各社の中で一番利用率が高い。一時ネットがペーパーに取って代わると言われたが、最近ではネットからペーパーに移って行く人が増えている。

「質問3」  

  世界史の中で歴史認識はいつまで遡ればよいか?

「回 答」  

  中国の歴史では、その時代の王朝が正しいと言っていることが正しいが、日本の歴史認識は客観性に基づいている。従って日中で共同研究して歴史認識を埋めようとしても、それは無理である。よく徹底的に話し合うべきだとの新聞論調があるが、外交で中国を説き伏せることは絶対出来ないのである。そしてそれは出来なくてよいのである。

「質問4」  

  日本と欧米諸国の植民地政策の違いは如何?

「回 答」

  日本はその国の近代化と教育のレベルをあげることに意を用いたが、西洋諸国は搾取に重点があり又人種蔑視があった。日教組はその点を混同して日本の植民地がすべて悪かったとの議論をしている。  




文責

公益社団法人國民會館

(平成26年7月10日)
  

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