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武藤記念講座(講演会事業)

第993回武藤記念講座要旨

2014年8月3日(日)

  自民党政調会長、衆議院議員 高市早苗氏
 「日本の国力の強化を目指して」 
       大阪「武藤記念ホール」


セミナー


会場から見える、生駒山のすぐ向こうの地元に思いを馳せつつも政治信条である 「美しく強く成長する日本国」を青年達に熱く語る高市先生。   


  はしがき「日本の国力とは何か」

一国の国力とは、主に経済力を指す場合が多い。然し広義の国力とは、経済力のみならず、日本が昔から誇ってきた素晴らしい人材力、安全で清潔な社会、及びその究極の使命がしっかりと果たせる体制が整った国の姿を言う。そしてそれらの個々の国力がすべてつながって総合的に発揮されてこそ、強い国力を持つ国となるのである。尚国家の究極の使命を果たすとは、国家の三大要素である国民と領土と主権を守ることであり、具体的には国民の生命・財産を守り、領土・領海・領空及び資源を守り、そして国家の独立と名誉を守ることである。

第一章「「経済力」による国力強化」

第1節「成長による富の創出」
  平成24年12月までの民主党政権の経済政策は、長いデフレと行き過ぎた円高による、手の打ちようのない閉塞感の中で、恵まれない人達にお金を配るだけでなく、本当は自立出来る人達にまでも、お金を配る「分配政策」を骨子にしていたことにより経済は縮小均衡に陥っていた。それを安倍内閣は大転換して「成長による富の創出」を打ち出した。即ち行き過ぎた分配政策でなく、一人一人が昔からの自立と勤勉の倫理を取り戻して、経済のパイを大きくして、多くの人がそれを享受し、又国の債務も返済していくことにより、「国力を強化」しようとしたのである。
  安倍政権発足後間髪を入れず、第一の矢として物価安定目標2%の数値目標を掲げ、 政府日銀による大胆な量的・質的金融緩和策を打ち出した。さらに第二の矢として失業率上昇と景気の底割れを防ぐ緊急経済政策として、10兆円規模の大型補正予算による機動的な財政出動を行った。そして第三の矢として、世界で一番企業が活動のしやすい国にすることを目標として、内閣に日本経済再生本部を設置、その下に産業競争力会議を設けた。
  その結果トップ外交のお蔭もあり、インフラシステム輸出戦略による受注額は政権発足時に比べて3倍となり、農林水産物食品の輸出戦略による成果は過去最高を記録、観光立国戦略による訪日外国人は1000万人を突破し、次の目標2020年の2000万人を目指しており、クールジャパン戦略(文化産業戦略)も動き出した。又、個別の各規制の必要性と合理性について、国際比較に基づいた検証を行う「国際先端テスト」を導入して、安全と衛生と治安が損なわれない限り、規制改革が進められている。然し、昨年の参議院選挙の段階では確かに経済指標はよくなって来ていたが、まだ実感は伴っていなかったので、公約のキャッチフレーズは「実感をその手に」とした。

第2節「企業立地競争力の向上」
  法人税率引下げは企業優遇税制であるとし、企業対個人の対立した概念にこだわっている限りは、日本経済は元気にならないだろう。そもそも引下げの目的は、マザー工場は残すなど、日本企業の海外移転を抑制し、一方で外国企業の日本進出を促進することにある。内外の企業が相まって国内投資をする結果、雇用は拡大して賃金も上がり、賃金が上がれば消費拡大により企業収益が上がって、引下げにより減る税収を補えることとなる。そして企業収益が上がれば、さらに投資が行われる好循環を生むことになるのである。安倍首相は既に来年度の大胆な法人税率の引下げを決意された。

第3節「最終的に目指すのは財政の健全化と成長の両立」
  さらに、マクロでは拡大する国際市場の活力を日本に取り込み、ミクロでは中小企業小規模事業者対策でその活性化を図り、稼げる農林水産を目指す。すでに実質GDPは6四半期続けてプラス成長続けており、月例賃金引上げ率は過去10年間で最高、夏季賞与も過去30年で最高となっている。そして来年度のための骨太の戦略では、「財政の健全化と成長の両立」を目指し、日本再興戦略の改訂版を用意している。

第二章「「人材力」による国力強化 」

第1節「人口減少社会における労働生産性の向上」
  有効求人倍率は政権発足時の0.83から今月には1.1へアップした。女性の就業者も内閣成立以来53万人増えたが、地域、一部の職種では相当深刻な人手不足感も出てきている。然し労働者一人当たりの時間単位当たりの付加価値を表す、日本の労働生産性は、G7の中で最低である。その要因のひとつに残業が多いことがあげられる。何故なら、残業することにより給料は増えるが、残業しなくてもよい場合に比べて、労働生産性は低くなるからである。従って、労働時間と成果物の因果関係が希薄な職種は、時間でなく、成果により給与が決定されるべきである。マスコミからは、働き過ぎが起こり、残業代ゼロ法案となると叩かれたが、これは働き方の選択肢を増やすもので、本人からの希望によるものとし、強制されるべきでない。又健康管理もしっかり行われるべきである。なおこれはホワイトカラーエグゼンプション(労働時間規制適用免除制度)とは違うものである。

第2節「女性の就業率の向上による人材の活用」
  女性がそのライフステージの中で多様な働き方が出来る制度が整備され、彼女達の就業率向上が検討されるべきである。例えばテレワークで労働しても、雇用保険制度では育児休業給付は月10日以上の労働をすると支給されない。然し1日1時間の労働でも1日にカウントされるので、時間制にして例えば80時間以上(1日4時間として20日)とする等の新しいルールをつくる運びとなった。又配偶者控除についても、夫婦合計で一定額の控除額を公平に使え、夫婦の課税所得から合計で減算されるようにする新しい制度をつくるが、それは働く女性を優遇するものではなく、専業主婦がいる世帯と共働き世帯の税負担の公平性を保つ制度として、来年度に向けて提案したものである

第3節「地方を元気にする人材力」
  地方の人口低迷、地方経済活性化のために、地方にも人材力が必要である。高い規範意識、学力、勤勉に働く価値観を有しており、地方を大切に守り、地域の安全、子供や高齢者への配慮が出来る人材が必要である。定年退職して地域に帰ってきた人には、自宅近くで多様な働き方が出来るテレワークが有効である。以上の「ローカルアベノミクス」のために、来年度は地方へ予算の重点配分を行っていく。

第三章「「防衛力」による国力強化」

第1節「備えのための法整備が重要である」
  国家安全保障に限らず、エネルギー政策、治安の問題もそうだが、国にとって一番大切なことは最悪のケースを想定して、備えのための法整備を用意して、リスクを最小化することである。然し法整備しようと思えば、実際にその事態が起こる必然性があるかが問われることになる。集団的自衛権の議論のとき日本人を救出する米艦隊を日本が守ることはありえないとの議論がなされた。然し過去にレバノンからイギリス、リビアからスペインが邦人を救出してくれ、ペルシャ湾で米国は日本の艦船を守るために血を流してくれている。自国民が人質となった場合、米国、ドイツならば突入して奪還作戦をするだろう。然し日本からは誰も助けに来てくれない。日本ではまず外務省の外交保護権が当該国に対して行使され、助けてくれと頼むが、警察官が派遣されても奪還作戦はもちろん出来ない。又空港までは自衛隊機は飛ばせるが、陸路は自分で逃げて来なければならなかったが、その後の法整備により陸路の避難を警護できるようになった。まだ第一歩であるが、さまざまな備えのための選択肢を揃えておくべきである。

第2節「情緒に走らない正しい防衛論議をするべきである」
  某新聞が「あなたの子供を戦場に送るのか」「徴兵制の国になる」とはやし立てているが、いい加減にしてほしい。日本国憲法18条では刑罰に服する時以外、意に反する苦役に服されることはない、22条では職業選択の自由を有している。又集団的自衛権の審議の際、国会で議論する前に閣議決定するのは誤りであるとの議論がなされたが、閣議決定してから国会に提出されないと、国会では審議されることはない、理の当然のことを知らぬふりした、為にする議論であった。

第3節「憲法解釈は時代により変えていくべきである」
  1946年公布、同47年施行の現憲法では、そもそも「日本は、自衛権は有しない、自衛のための軍備も有しない」と当時の吉田首相は国会答弁したが、1952年に独立を回復すると1954年には最低限の自衛権を有するとの解釈変更により、警察予備隊が生まれ、1956年国連加盟時には、国連憲章の51条で認められる個別的自衛権・集団的自衛権の行使を、留保せずに調印したので、国際法上では集団的自衛権も行使できるようになった。又1964年までは自衛官は文民であるとされていたが、以降は文民ではないとされ、自衛官は内閣総理大臣と閣僚になれなくなり、1972、81年には、必要最小限の装備を個別自衛権として保有できるようになった。然し個別的自衛権も又「備え」である。何故ならば訓練はしているが、使用していないからである。但しそれを行使するか否かは、リスクの程度と総合的国益から判断されるべきであり、前後に国会の承認が必要である。
  「閑話休題」
  憲法改正は自民党の党是である。参議院選挙公約集のリード文と写真は政調会長としてこだわった。その憲法改正の項の写真に「真っ青な空を背景に、日の丸がとても美しくひるがえっている」美しい写真を載せようとしたが、ある長老からは国旗を消して欲しい、でなければ憲法改正の記述を消して欲しいと言われて、党議決定は全会一致が原則であるので、涙、涙で取りやめざるをえなかった。

「質疑応答」
『会場での質疑応答』
「質問1」

  原発再稼働について

「回 答」  

  安全性の可否は独立機関である原子力規制委員会が決定して、それを受けて電気事業者が稼働するか否かの判断をするが、総理はそれに対して関与は出来ず、稼働せよとも稼働するなとも言えない。我国の稼働基準は世界最高水準の厳しいものであり、設備のガードも想定を超える頑丈なものが構築されているが、政府ができるのは、地方自治体と住民の理解が得られるよう働きかけることである。私は安全が確認されれば再稼働するべきと考えている。中国は約50基を建設中、計画中であり、韓国、台湾なども拡大に前向きである。又このままだと人材が散逸し、技術そのものが消滅してしまうことが怖い。法人税を多少下げても、電力料金の値上がり分で吹っ飛んでしまう。上述の立地競争力強化も、エネルギーが安定供給出来なければ成り立たないだろう。

「質問2」

  外国人労働者を受け入れて永住権を与えることについて、どう考えるか?

「回 答」  

  特定の職種では、滞在期間の延長も含め、段階的に受入を増やしていくが、安倍内閣は、移民政策は取らないとはっきり言い切っている。なぜならば日本社会はまだ治安悪化などへの対応ができていないし、来てもらう外国の人達に必要な社会サービスを提供出来る体制も整っていないので、かえって気の毒なことになるからだ。もう一つ理由がある。完全失業率は完全雇用に近い状況だが、いまだ若者層の失業率は高いので、健康な体を持っている我国の若者に、働き場所を提供することを優先するべきである。

「質問3」  

  何故に「閑話休題」のような発言がなされたと考えるか?

「回 答」  

  自民党が右傾化しているとみられ、票が減ることを心配されたからであった。


『事前質問と回答』
「質問1」  

  日本はカルタゴの二の舞にならないか  

  二千数百年昔、ローマ帝国がカルタゴを叩いてのち、カルタゴはローマが守るから軍備は持つなと言われ、カルタゴがそれに従い無防備になると、周辺の国はカルタゴを侵略し出した。困ったカルタゴはローマに訴えた、「我々を守ってくれ」と。ローマは考えた。カルタゴを守るためにローマ兵の血を流しても、誰も喜ばない。この際カルタゴを攻めてその土地と富める資産を、ローマのものにしてしまえば、ローマ兵も市民も得るものが大きいから喜んで戦いに参加する。こうしてローマは突如カルタゴを攻めた。だまされたと知ったカルタゴは必死に防ぐが、国土も人もすべてを奪われた。カルタゴを攻めた周辺の国を中国に例えると、アメリカが突如ローマ帝国に変身することは、有り得るのではないか?日本は小国と皆思っているが、実際は、その領海防衛領域は世界の五指に入る程広く長い。これをネズミ一匹が通ってもキャッチできるように固い防衛網を造る必要があり、当然海上警備隊の新設増員をしておくべきであり、これらのための投資は日本の景気回復に大きく寄与する。将来を睨んで、この計画の立案・実行を急ぐべきではないか。

「回 答」

  現在の日本外交の基軸は日米関係である。然し国際政治に絶対はなく、「NEVER SAY NEVER」である。従ってご指摘のカルタゴのようにならないかについては、万分の一のリスクはありうるので、一国だけに頼らず、自国の防衛力を強化することが正道である。然し現在のところ、米国は信頼できる同盟国であり、かつ日本は攻撃型の装備を保有せず、専守防衛の装備しか有していないので、米国に頼らざるをえない。尚現在最も怖いのはサイバー攻撃であり、同攻撃により自衛隊機能だけでなく、通信・金融・電気など重要インフラ機能がストップしてしまうことに対する備えも大切である。米国との関係を深めれば「巻き込まれ論」となり、逆の「置いてきぼり論」のはざまでの賢明な見極めが要請されるところであるが、米国が日本に対するプレゼンスをどのように変化させていくかは誰にも分からない。日本は米国の変化に合わせて徐々に変えていくことになろうが、一挙に変えれば自民党はとても選挙でもたないだろう。景気回復にも寄与する領海防衛網整備については、来年度の防衛産業育成の予算の中に計上できた。尚それらは民政への転用も可能である。

「質問2」  

  集団的自衛権は憲法改正で迅速に堂々と  

  平和が維持できるのは国民が国を守る、と言う意識を明確に持つこと、平和を守るには究極国民の血が流されるのは、当然ついて回る事で、今や強大な中国の脅威を跳ね返すには、それに対抗できる力を日本が持つしか日本の平和を守る方法は無い。究極血も流さずに平和、平和と言って黙って中国に好きなようにされて、指を咥えて見ていて領土が侵食され、それでも平和が良いのか?これぞ「国無くして山河のみあり!」である。最早、国土防衛は綺麗事では済まされない、瀬戸際の最重要問題と言うところまで来ているのである。国民に国を守る気概がどの程度有るのか、国会を解散して国民の意識を問わないと、幾ら議論をしても始まらない問題である。なぜならば左翼勢力とは立っているスタンスが違い過ぎるからである。バブルが、まだはじけたとは言えない中国の資金量は膨大で、我が国にはこれに対抗できる資金など及びも付かず、中国の日本謀略作戦に惑わされない今のうちに、国民がしっかりとした覚悟を持たず、このまま推移すると中国の思うつぼに嵌まってしまうのではないか。この国の平和を維持するために、「憲法改正」の是非を国民に問う「国民投票」を早急に実施して、憲法を改正しないと、何時までたっても反対勢力が騒ぐだけであり、日本国危急存亡の時が間際に迫る今、堂々巡りの議論は全く無意味なことである。最早、厳として日本国の平和を守るのか、侵略されて日本が他国に蹂躙されてもいいのかの、選択の瀬戸際の時が来たようである。

「回 答」

  憲法改正は選挙公約にも入っており、個別・集団自衛権を一本の自衛権とする改正草案も既に用意されている。手続き面でも、国民投票法の年齢(18歳)と公務員の選挙活動問題も6月に解決した。今回の集団的自衛権も、正道でいけば憲法改正で行うべきであったのだが、衆議院は何とかなるかもしれないが、参議院では三分の二を有していないので、憲法改正は発議できない。従って現実問題としては、解釈でいかざるをえなかったのである。




文責

公益社団法人國民會館


  

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