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武藤記念講座(講演会事業)

第997回武藤記念講座要旨

2014年12月6日(土)

  プロゴルファー岡本綾子氏
 「ゴルフと私」 
       大阪「武藤記念ホール」


セミナー


これからは後進の指導で、彼女らを世界に送り出すことに「情熱と挑戦」を続けたいと熱く語る岡本綾子氏


「はじめに」半農・半ゴルフと愛犬と
  私は55歳まで国内ツアーに参加していたが、50歳になる前から将来の定住地を探していた。太平洋に面した斜面に沿った地下一階から、水平線の見える場所をイメージし、図面を描き、日記に記して、年に数回はその夢の実現を願って来た。そのため不動産業者には茨城県・千葉県房総半島から宮崎県の日南海岸までを、探してもらったが、偶然にも、それは必然だったのかもしれないが、広島県の実家から20キロ離れた場所を見つけてもらい、その地に家を建てて、6年前に引っ越した。土地を見つけた頃、両親は健在だったので、一緒に住みたいと思っていたが、柱を立てた頃に、二人とも他界したのは残念だった。そして現在、その家で「クラブを置いた」時に目標としていた「半農・半ゴルフ」の生活を、愛犬「シャンク」とともに、送っている。農業は、自分で小さいユンボ(掘削機)を運転して、畑地まで作るほどに好きで、そこで野菜をピーマン以外は何でも作っている。然しなぜか、クラブを置いても、畑の草むしりをするのが間に合わない位、日本全国を動き回っているのが現状である。又2カ月前に、現役時代から体を酷使したために、痛めていた膝の手術をしたが、幸いよくなりつつある。
第一章「私のゴルフ勝利の軌跡 」

第1節「ゴルフを始めて3年でプロに、国内8年間で26回の優勝」
  さて私のゴルフ人生は、ソフトボールを始めたことを起点とし、大和紡績(現ダイワボウホールディングス、以下ダイワボウとする)があって、初めてスタートできたと言っても、決して過言ではない。なぜならば、18歳の時、ソフトボール部全盛期のダイワボウの福井工場に入り、20歳の時エース・ピッチャーとして和歌山国体で優勝した。祝勝ハワイ旅行に連れて行ってもらったことが、将来の米国ツアーの夢を育んでくれた。然し、ソフトボールは3シーズンでやめ、21歳の時には、工場に隣接していたダイワボウ経営のゴルフ練習場勤務となってゴルフを始め、22歳になる年からは、大阪の池田カントリークラブで、キャディーをしながら練習に励み、23歳(昭和49年)でプロテストに合格し、24歳の5月にプロデビューし、そのシーズンの最後のトーナメントで、当代一の樋口プロを破って、プロ一年目で初優勝でき、プロ3年目には年間4勝した。

第2節「米国の10年間で18回、帰国後国内13年間で18回の優勝」
(1)翌年28歳の時、米ツアー予選会に挑戦するも不合格となったが、3年後に31歳(昭和57年)で合格、すぐ米国ツアーに参戦した。そしてその年に米国で初優勝したこともあり、翌年32歳の時に「米国で生活し、1年間ずっとプレーしたい」と、ハワイに行った時の夢を実現しようと決意したが、スポンサーのダイワボウには反対の人もおり、女子プロ協会も反対だった。然し米国のゴルフ事情をよく知っている人達に相談し、最終的には樋口さんに相談すると「行きたいなら行った方が良い。あとで後悔するから」と後押ししてくれた。結局ダイワボウにも了承してもらい、協会に休会届を出して、米ツアーに本格参戦することとなった。
(2)35歳には、腰を痛めてマイアミで手術したが、リハビリの積りで出たトーナメントの2戦目に優勝出来、私はスポーツ、勝負事に運気がついていると、我ながら思ったものであった。そして37歳の時米国の賞金女王になった。41歳の時、結果的に米国最後となった優勝をしてから、突然ホームシックにかかって、無性に日本に帰りたくなり、42歳の時は日米半分ずつだったが、43歳になって主戦場を日本に移した。
(3)然し徐々に体の調子が悪くなり、老眼も始まって遠近感と動体視力も落ち、46歳になって、また腰を痛め、前回と同じ米国の先生に手術をしてもらうことを余儀なくされたが再度、その後のリハビリを兼ねた試合に出て、優勝することになった。その後も7〜8年現役を続けたが、健康上から、意図する球筋が打てなくなって、上述の通りクラブを置くこととなったのである。

第3節「勝利の方程式」
(1)樋口久子さんが本年、ゴルフ界から初の文化功労賞を受賞されたことは、我々ゴルファーにとって大変名誉あることであった。彼女は日本女子プロゴルフ協会会長として、ゴルフ界のために大きな功績を残したが、その会長選挙の際には、選挙運動で私は若い選手の票を取りまとめたことが懐かしい。私は数々の試合で技を競わせていただいたが、「常にプレーに全力の第一人者」の彼女には、勝利のための努力の大切さを教えていただいた。
(2)17年前に、パクセリ選手が20歳で、全米女子オープンで優勝して以来、韓国の選手勢の大躍進が始まり、今でも国内のトーナメントで、3〜4人に1人は、韓国の選手が優勝争いにからんできている。その強さの秘密は何か、色々な分析がなされているが、私は、韓国の選手達が大変「シンプルで理にかなったゴルフスイング」をしていることにあると考える。即ち日本の選手達は、個性的なスイングをしているので、何倍もの練習をしないと、安定した球筋(正しいボール回転のこと)を打てないのである。家族を背負っていることも、要因のひとつかもしれないが、日本にも同じ境遇の選手は少なくないし、もうひとつは民族性もあるのではないか。
(3)さらに「指導の仕方」も関連しているのではないか。そして「シンプルなスイング」とならび大切なことは、メンタル面では「スイングへの一打集中」である。これら三点については、次章で具体的にお話をしたい。

第二章「「チーム岡本」のリーダーとして」

第1節「ゴルフ以前のこととして教えていること」
  第一線を退いてからは、ボールを打つことから、人を指導して育てることへ次第に熱が入るようになり、プロ選手を指導・マネージメントしながら、ゴルフを教えている。彼女らに先ず具体的に指導していることは、第一に人に頼らずに、自分で考えて、自分ですることを身につけさせており、例えばプロキャディでなくハウスキャディを使うようにさせている、第二にスポーツ新聞や人を傷つける週刊誌でなく、まっとうな活字を追いかけること、第三に週一回は、ゴルフから開放されて、気分転換のためカラオケ、ピアノ、英会話など、何でもよいから習い事をすることによって、肝心のときに一打集中できるようにするべき等、厳しいことを言っている。

第2節「相手を思いやることができる「チーム岡本」へ」
  「最近の若い子は」という言葉がある。ゆとり教育で育ったというが、ゆとり教育とは、礼儀を何にも教えないことなのかと、思ってしまうが、全部で5人になった「チーム岡本」には、礼儀を重んじさせている。メンバーが4人から5人に増えれば、私が一人に教える時間が減るので、4人の同意がないと入れないと、4人の意思を確かめたが、皆が賛成して、仲間への思いやりの気持ちが高まった。遠征で食事をするとき、空いた皿は自分で片づけることも徹底させている。即ち、与えられるだけでなく、人に与えることも大切にするよう指導している。

第3節「自分の頭で考え、かつ行動すること」
  第1節で少し触れたが、自分の頭で考えて、工夫して何かをやろう、行動しようとすることが何よりも大切である。悩むだけでは、一歩後退し、工夫もしないし、自己主張も出来ない。誰がどの角度から見ても素晴らしいスイングをするには、頑固に一日ひたすら千球を自己流に打つのではなく、自分の頭で考えて、今のスイングを180度変える練習を積み重ねるなど、素直に私の教えに従ってもらうことを、参加の条件にしている。血液型は絶対的ではないが、各血液型に応じた指導方法も大切であり、又何よりも、各人のリズムとテンポは、大切にしてやらねばならない。

第三章「質疑応答から」

第1節「世界で戦うには」
  「質問1」いろいろな外国人とゲームをされて、彼らの勝負についての考え方と態度について、日本人と比べて悪い点、良い点、あるいは日本人とは、随分考え方か違うと感じられたことがあったら、教えて欲しい。
  「回答」
  まずスポーツ界の競技ルールは、世界万国共通である。即ちビジネス界と比べて、ルールは一つである。地球上のゴルファーは、皆それに従わねばならない。然し、人道にはずれれば、問題となる。例えばプレーが遅いことについて言えば、我々プロは一打の持ち時間が決まっており、遅いとペナルティーとなる。素行の悪い人もいるが、皆で無視すればよい。又人に対する意地悪をする人は、どこの世界にもいるが、その人はバチがあたるだろう。いずれにしても競技ルールは、意外によくできている。ゴルフ場の中での人種差別は一度経験したことがあるが、その人の言うことは気にしなくてもよいと、周りの人がアドバイスしてくれた。渡米前に男子ツアーについて、差別があると聞いていたが、私は、上記以外は経験しなかった。性格的に順応できない人、また要領の悪い人もいるが、人間性はどこに行っても伝わると思う。又人の声を聴ける人は、皆に好かれるだろう。いずれにしても競技ルールはひとつ、と言うことで、意外に平和に収まっている。
  「質問2」日本の女子プロと韓国の女子プロの強さの差はどこにあるのか?シンプルなスイングがよいと言われたが、その技術面と、さらにはメンタル面に分けて、その差はどう考えるか?
  「回答」
  すでに述べたが日本人が海外でなぜ、もう少し活躍できないかであるが、樋口さんや私クラスがもう3〜4人そろっていれば、世界を制せると思う。逆に言えば、韓国にはそのクラスのプレーヤーが、日本より沢山いるということであろう。もうひとつは、アメリカツアーが下り坂の過渡期にあり、いまやインターナショナルツアーが主流となって、世界的にもゴルフビジネスの規模が大きくなり、盛んになっていることである。中国にもゴルフ場が沢山出来ており、将来的にはフォンシャンシャン(現在日本5勝、米国4勝) のような有力なプレーヤーがこぞって現れて来るだろう。メンタル面では国内に外国人が来れば来る程、日本人は、しんどいところがあるかもしれないが、なぜこのプレーヤーが強いのかを分析できる、頭のよい選手が増えていき、逆に甘っちょろい考え方の選手が減っていけば、日本はもっと活躍できるだろう。そうならなければ、年間試合数がもっと増え、賞金額も高くなれば、日本のゴルフ界は、海外の選手に占領されかねないだろう。
  「質問3」ゴルフと外国語は関係あるか?
  「回答」
  関係ない。外国語をマスターするには、その意志があるかどうかである。
  「質問4」韓国の選手がここ一番に強いのは、何故か?
  「回答」
  一言では言い表せない。色んな要因が考えられるが、私は優勝戦線に何度も食い込んで、100人に一人のふるいにかけられた、ゲームの流れを掴む、勝負運の感性があるか、の問題であると考える。
  「質問5」米国ツァーで日本人が活躍するには?
  「回答」
  洋芝では飛距離を出すために、もっとフォロースルーが必要となろう。変則スイング、オーバースイングでは駄目でコンパクトにしなくてはならない。又男子では150ヤードはウエッヂ、ドライバーは300ヤードとなるが、7〜80%のスイングで飛ばさねばならない。

第2節「ゴルフ技術編」
  「質問6」技術的にはシンプルスイング、メンタル的には一打集中とのアドバイスをもらったが、どのようにすればよいのか、特にイップスのための、メンタルコントロールはどうすればよいのか(注釈)イップス(Yips)は、精神的な原因などによりスポーツの動作に支障をきたし、自分の 思い通りのプレーができなくなる運動障害のことである。
  「回答」
  無い物ねだりはやめましょう。私達人間は欲をかく動物である。然し大事なことは、欲が自分に相応しい欲か、望んで当然の欲なのか、さらにその欲をゲットしたら、どういう影響があるのか、先を読むことが大切である。もうひとつは、目先の欲は、今ここで求めなくても、我慢すれば次にゲットした時幸せは2倍、3倍になって返って来る、それまで心して待つことも、大切である。従ってイップスも少しずつでもいいから、時間をかけて直さねばならない。色んな方法があるが、倉本プロは打つ前に大きな深呼吸をするそうである。然しそれは絶対的なものではなく、兎に角、何でもやって見ることである。
  「質問7」右から左への体重移動は、どうすればよいのか?
  「回答」
  これは簡単である。石川遼になりなさい。ポイントは年齢に関係なく「フィニッシュで」体を1秒か2秒止めることである。そうできない人は、体の回転が出来ていない人である。回転が出来ていれば、背筋、腹筋、側筋のバランスがきれいに整うようになる。絶対出来ます。出来ない筈はありません。又人前で恥をかかないと上手になれないだろう。又リズムとテンポのよい上手な人のフォームをよく見ることも大切である。

第3節「メンタル編」
  「質問8」野村元監督の「勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし」の経験はあったか?
  「回答」
  私は優勝しても、肩で風切って歩くことはなかった。トーナメントは毎週行われ、プロ達は先週岡本であっても、今週は自分であるとの、自負を持った人達ばかりである。確かに負けた試合からは沢山の教訓をもらうが、勝つことによって、その教訓を一瞬にして忘れることがある。然し浮き沈みを少なくするために、自分をどうしていくか自重し、勝てば勝つほど有頂天にならないならば、いくらでも優勝できるのではないか。諸先輩の言葉には時々グサッと来ることがある。
  「質問9」ゴルフの英才教育について、運動神経と動体視力がよいことが、前提条件となるのか?
  「回答」
  あった方がよいが、余りにも運動神経がよ過ぎるのも困りものではないか、必ずしもゴルフに適するとは限らない。
  「質問10」プロゴルファーが恋愛することについて?
  「回答」
  私は恋愛推奨派である。何故ならば、恋愛により、自分の心の痛みが、相手に対して人の心の痛みとして、ちゃんと表現できるような選手に育って欲しいからである。気が弱いとか、恋愛できるのか、出来ないかどうかの気持ちを、アスリートは持つべきではない。確かに恋愛することによって、いい意味でどのように影響するか分からない。然し恋愛を経験しないと自分の足許が見えないものである。勿論恋愛するときは、浮足立っているので、いい数字を残せるか分らない。そこでいい数字を残せる場合もあるし、相手はいい人なのに数字を残せない場合もある。然しいい結果を残せないのは、相手がよくないとは決め付けられないのではないか。


文責

公益社団法人國民會館


  

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