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武藤記念講座(講演会事業)

第1031回武藤記念講座要旨

    2017年6月3日(土)
    於東京「国際文化会館」
    政治評論家  
    屋山 太郎氏

 「『世界史の転換点』 〜世界の混沌、どう収めるべきか〜」 

セミナー





はじめに
  安倍総理の政治の特色は外交で、日本外交がこれだけ拡がったのは初めてである。小選挙区制では、国民の意志を体現した人が総理になる。国会議員は総じて利口で、安倍総理の見識を支持する意見が多い。民進党は「森友だ、籠池だ」と無理やり安倍総理の仕掛けにしようと一生懸命である。しかし規制改革の特区で例外を作ったのは、安倍総理の職権乱用でも何でもない。普通の人は、実に常識的に考えるから支持率は下がらない。民進党は「森友」で失敗したので「加計(かけ)」で勝負と考えているようだが、私はその「賭け(かけ)」は間違うよと言っている。そんなことで内閣が潰れるはずがない。安倍総理はグローバルに活動しており、働きの場は殆ど海外に移っている。人に好かれ、誰とでも友達になれ、懐が深い。サミットの顔である。

第一章 内 政
第1節 憲法改正は安倍総理の悲願
  安倍総理は最初「憲法改正は、先ず96条を変えたらどうか。国民投票は国民の過半数の賛成で承認されるのだから、発議も国会議員の過半数の賛成にしてよいのではないか」と言っていた。ところが民進党は「安倍総理の9条改正に至る陰謀だ」と言う。安倍総理は、維新元代表 橋下さんの「教育無償化と道州制」を持ち上げ、憲法改正の機運が高まってきたら、そこで9条を出す。それは安倍総理の戦略である。中曽根元総理は、自分のやりたいことを5年間で実行した。政治家は芯があって、それに突き進み、結果を出すのが政治家である。今まで1年〜2年で辞めた人達は、自分のやりたいことの半分もできず、実に残念な思いをしていた。安倍総理の強さは9年間あることである。この間に日本を大改造し、おかしな形のものは全部なくなると思う。
第2節 憲法論議は9条が焦点
  安倍総理は、先日突然「9条の改正は1項、2項はそのままにして、3項で自衛隊を明記する」と言った。1項の戦争放棄は私も賛成である。私は戦争の焼け跡の中を、妹の手を引いて逃げ回り、ようやく助かった。長じて戦争の経緯を聞くと、勝てる目算なしで戦争を始めたと言う。戦争は納得できない。2項は「戦力の不保持」である。警察予備隊が自衛隊となり、どんどん大きくなった。憲法違反と言われ吉田元総理は「戦力なき軍隊だ」と言った。戦力がない軍隊など無茶苦茶である。しかしそれで現在まで済ませてきた。今核を持たないものの世界有数の軍隊である自衛隊を「戦力でない」と言うのはおかしいが、安倍総理の頭の中では「9条1項、2項は絵に描いた餅で、自衛隊は現実にある。これを同じ額縁に入れて、どこがおかしい」という持ち掛け方である。「前文に、ありもしないことを掲げているくらいだから、2つのきれいごとと、1つの実質的なものを一緒にするというのは有り」と思う。本当に賢いと思う。安倍総理の発言で、憲法論議の焦点は完全に9条に絞られた。今まで自民党の憲法草案は2回作った。1回目は「2項を削って、新たに5項作る」案であるが実に分かりにくい。最近の自民党案は「1項はそのままで、2項に、前項の規定は自衛権の発動を妨げるものではない」となっている。それでもいいが「絵に描いた餅に、現実のぼた餅を付けるのは、一つの絵としてすっきりしない」と言う議論が今進んでいる。
第3節 政界再編
  「憲法改正20年施行」という前に、政界の大きな動きがあると思う。安倍総理は今年の1月に選挙をやらなかった。来年の秋、選挙を考えている。今度の東京都議選で民進党の蓮舫代表は威信失墜し、責任とれという声が中から上がってくる。昔「NO2ではダメですか」と言っている頃は、まだ無邪気で、ユーモアがあったが、今は代表にしがみつき、何とかしようと「険」がある。野党4党と言うが、数人の政党もあり、それを全野党といって誤魔化している。実態は野党に力がなくなってきた。民進党の支持率は5〜7%へ落ちると思う。これでは支持率40%近い自民党に選挙で負ける。しかし国民が永久に自民党でよいのであれば、支持率は60〜70%となる筈だが、どうしても過半数にいかない。それは国民が、まともな野党がいた方がよいと思っているからである。保守党と反体制というのは日本だけである。冷戦が終わり、小選挙区にしたのが1994年。そろそろ政界の大変革と民主党に政権をとらせたが、鳩菅政権はとんでもない政権で、国民は皆酷い目に遭ったと思っている。だから民進党の復活は無理である。ただし違う政党が出てくれば話は別で、それが維新だと思う。維新は野党であるが「この問題賛成。この問題反対」と全部自分たちの意見を言う。これがヨーロッパやアメリカの2大政党の役割である。維新は、橋下さんや松井さんが出てくれば全国区となり、日本の政党は保守二党となる。どちらが政権をとっても大きな違いがなくなる。国民が、これなら心配がないとするもう一つの政党を維新と考えるならば、第二党に躍進してくる可能性がある。そこで「何でも反対」という時代が終わる。これは戦後日本の国会の大変革である。民進党が割れて、一部は維新と一緒になり、左は限りなく左となり、まともな議会政治となる。

第二章 外交(1)朝鮮半島 
第1節 北朝鮮への攻撃はマティス国防長官の判断次第
  アメリカ国防長官のマティスは、軍人・司令官としても最高の人で、アフガンでは40両の戦車で、敵の戦車800両を潰し、相手の戦力をなくす大手柄をたてた軍功がある。共和党、民主党全員が賛成して承認された人で信用がある。家庭も持たず、テレビも見ない。本を読むのが趣味で7千冊を読む。引っ越しで持って行くのは本だけという。古今の歴史に通じていて、中国、朝鮮のことを本当にわかっている。初めてそういう人が国防長官になったと思った。マティスは「戦争になれば大変な被害が出る。ソウルには1千万人いるが、何千門という通常兵器がソウルを向いており、ボタン一つで弾が飛んでくる。なるべく戦争はしたくない」と考え、今中国の動きを見ている。中国が石炭の輸入を止め、石油の輸出を止めれば、2〜3カ月で北朝鮮は動かなくなる。昔マカオにあるバンコ・デルタ・アジアという金融を押さえ、北朝鮮が参ったことがある。今度は国連決議で、金融を全部締め上げる。私立銀行も含め全ての金を止める決議した。2カ月たっても効果が出ず、アメリカの軍属や家族24〜25万人、日本人6万人が避難を始めた時は、覚悟しなければならない。いざとなればマティスは決断する。
第2節 戦えば甚大な被害
  アメリカは航空母艦もあるし、本土からミサイルも打てる。とにかく臨戦態勢で、実際に戦争が始まれば20~30万人がソウルで死ぬ。しかし北朝鮮という国はなくなる。アメリカはそのくらい戦力をもっている。例えば北朝鮮は地下に基地を作るのが好きだけれど、「爆弾の母」と呼ぶ爆弾は山一つ潰せる。「隠れても駄目だ」と見本を見せた。シリアではロシアが使っていた飛行場をミサイルで60発のうち1発不発であと全部命中させた。北朝鮮は日本へも撃ってくると思うが、日本の防衛は2段構えになっており、かなりのものは防げる。ただ次々と撃ち落としても、無尽蔵に弾を持っているわけではない。中国は、北朝鮮が潰れると隣国にアメリカ人が入ることになるので、本気で北朝鮮に止めさせようとするだろう。北朝鮮は、国際監視でじっと見ていても、裏で何をやるかわからず信用できない。突然気が狂ったみたいになる危険があり、アメリカは用心している。マティスはあらゆる場面を想定し、じっと見ている。

第三章 外交(2)貿易協定
第1節 「公」の概念がない中国
  今までのニクソンやオバマは中国人を知らない。日・中、仲良くした方が良いと言う人もいるが難しい。理由は儒教にある。日本の儒教の教えは、家族を大切に。しかしその上に「公」の精神がある。戦争中はそれで戦意高揚を狙ったが、それ以前から日本人には家族の上に殿様がいて「忠・公」という概念があった。中国は、家族が単位で「公」の精神がない。中国の教えでは、例えば孔子の弟子葉公は、村人(息子)が、「親父が羊を盗んだ」と届けてきたことに対し、「それは間違いである。父親の罪は徹底的に庇わないといけない」と云ったという。「公」の精神がないことで何千年もきたのである。したがって中国の統治の仕方は完全に独裁で、恐怖心で抑えている。それでないと「公」のために尽くす人はいない。公務員が毎年10万人捕まっているが、日本では考えられない。先進国のモラルと泥棒しても平気な中国とは違う。
第2節 トランプは政治家ではない
  TPPは戦略的に、例えば「サイバー攻撃をすれば罰則がある。知的財産権を保障する」とか、アメリカと日本が中心にならなければできないモラルを基に作った。しかしトランプは貿易問題を全くわかっていない。貿易はルールを作り、皆がWin-Winで儲けて大きくなるということであるが、トランプの考えは、丸い円を理想的にもっていこうとせず、凸凹のところだけ捉えて「けしからん」と言う。「アメリカファーストで自分に都合の良い協定を二国間でやる」と言う。環境条約やTPPから抜け、アメリカファースト、アメリカグレイトでは世界に通用しない。アメリカの一部の人達は助かるが、全体では絶対マイナスである。哲学なしで「儲ければよい。凸凹のところだけなんとかしろ」と言うのは、政治家ではない。
第3節 安倍総理のTPP長期戦略
  「事業で成功した人は部下に仕事を任せる」と言われているが、トランプが世界一の戦略家マティスを国防大臣に、ティラーソンを国務大臣にしたので安心した。ティラーソンはパリ協定からの脱退反対であるが、実際の脱退は4年後である。トランプが再選さえしなければ口先だけとなる。TPPはアメリカが抜けたら意味がないが、安倍総理は残り11ヶ国をまとめようと一生懸命やっている。それは安倍総理の任期が2021年、トランプの任期は2020年末で78歳となる。2期目はまずできない。トランプが辞めた後1年ある。アメリカ以外の国を固め、TPPをペンディングにして、次の新しい大統領を口説くのが安倍総理の長期戦略と思う。
第4節 RCEPは見込みがない
  今度RCEPを日中韓が中心に作る動きがあった。貿易のルール作るのに、同じモラルを持っていない相手と協定を作ろうと言う話である。中国は大きい国で、4000年の歴史があり、56の民族がいる。易姓革命が次々と起こり、自分達の政権・民族に都合のよい歴史を書く。ほとんど嘘を書いている。中国人の約束はあてにならないし、世界中で中国を信用している国は無い。リーマンショックの時、中国は「一帯一路」で4兆元(60兆円)出して世界の景気を救ったと称しているが、L字型成長でいつまで続くかわからない。今のGNP6.5%も相当な嘘で、スリランカ、タイ、ビルマ、インドネシアなど、あちこちでトラブルが続いている。技術はみんな盗んできたもので、本物ではないからである。日本がRCEPに入ったら、金を持ち逃げされるだけの話である。中国と付き合う時は、絶対気を許すことはできない。607年、聖徳太子は中国に小野妹子を遣わし「あまりちょっかい出すな」と言った。
福澤諭吉が「脱亜入欧(脱亜論)」と言ったのは日本人の救いである。韓国も慰安婦像作り、歴史を捏造する点では中国と同じである。

第四章 外交(3)移民問題 
第1節 移民の過剰流入
  ヨーロッパでイギリスがEU脱退したのは移民問題である。アメリカがメキシコに壁を作るのも移民問題である。一定の人種がいる社会で、外から移民が入る数には限度がある。ヨーロッパの場合、ドイツのメルケル首相が「100万人受け入れる」と言うから、他の国も自分の国は困ると言えない。ドイツは移民が入っても、居心地が悪いため移民は居つかない。「シェンゲン協定」で、移民が一旦入ると、EU27カ国どこへ行っても良いとなっているので、ドイツが100万人受けると、皆イギリスやフランスへ移動する。イギリスやフランスは、本当に移民が多過ぎるため、街の治安は悪くなる。移民が悪いというのではないが、貧乏だから、施設へ入れても、じっとしていない。移民は安く雇えるから、イギリス人が職を失う。みんな同じ原理である。
第2節 日本の労働力不足と移民問題
  昨年、日本に入った移民は281人である。これは国際的に大きな声では言えない。もう少し何とかしなければいけない。ただ外交官に聞くと、日本に行っても幸せではないそうである。日本人は、きっちりし過ぎている。ドイツ人よりしっかりしていると聞く。ただドイツ人みたいに露骨に嫌な顔はしない。なんとなく受け入れるような顔でニコニコして面倒みる。しかしそれは281人のことだからで、移民が10万人入ってきたら大変である。労働不足で移民を入れろと議論をするが、入れたら大変である。それより私は、女性の産後の復職を進めるべきと思う。子供を産んだら元の職場に戻る。新聞記者なんかはベテランだからネタも取るし、男に劣るという面はない。保育所を作り、徹底的に職場へ戻したらよい。その方が社会の役にも立つし、生活も楽になるはずだ。そういう社会にすれば、移民を何10万人入れろという話にはならない。安倍総理もそういう方向に踏み切ったと思う。嫌がらせをして、辞めさせようとする経営者は、認識が無さ過ぎる。私は人口が減るという状況を断ち切るため、とりあえず、女性にどんどん戻ってきてもらい乗り切るしかないと思う。

おわりに
  今ヨーロッパがアメリカから離れつつある。ドイツのメルケル首相は「ヨーロッパが他国に依存する時代は終りつつある」と言い、これに乗じてロシアは勢力を挽回する。ロシアは冷戦で敗れ、ポーランドなどの隣国みんな盗られた。そこでクリミア半島を盗った。この辺で、ヨーロッパが落ち着き、ロシアも満足してもらうということを、安倍総理は仕切ると思う。ロシアは安倍総理の言うことはよく聞く。非常に信用があるし、好かれている。この4年間のトランプ時代を乗り切れば、「嵐が過ぎるかな」と期待をしている。

質疑応答
「質問1」

  ポスト安倍についてお聞きしたい。小池さんの目はあるのですか。

「回答1」

  小池さんは都知事選でひと花咲かせ、それで戻ってポスト安倍と考えていたようだが、今度で決断力がないことがわかった。野心は人一倍あるけれど、再入党していきなりは無い。あの人はクールビズを思いつく程度の政治力が限度で、ちょっと無理です。そのくらいなら小泉進次郎に行くかもしれない。


「質問2」

  トランプは選挙中「必ず日本を守る」と言わなかった。それが日本人を目覚めかけさせたのではないでしょうか。

「回答2」

  トランプは大統領になると「尖閣は日本のものだ。守る」と言いました。それは安倍総理が、一番先にトランプに会って、トランプが惚れ込んだからです。これは大統領就任前、ファミリーのイバンカ、クシュナー夫婦と会い、率直に話をし、信用を得たことが、トランプに影響を与えている。「国際政治は安倍総理の話を聞けば良い。会議ごとに必ず会おう」と約束した。今度のG7でも「パリ協定破棄だ」とトランプが言い出した時、安倍総理が、それをすると溝が出来るので「再検討する」と譲歩させ、一応「環境は重要だ」ということで収まった。


「質問3」

  何でも反対の共産党ですが、宮家のことを言うのは何故ですか。

「回答3」

  共産党のことは詳しくないので分からない。どうせ政権を取らないと思っているし、民主集中制というのは、実質独裁である。国際的にもそういう定義です。共産党は、スターリンからの金で出来た国際共産主義の日本支部です。それをみんなが忘れてはいけない。


「質問4」

  憲法改正で参議院を失くすことはできないか。

「回答4」

  参議院は本当はいらないのだけれど、憲法に「参議院の3分の2が議決しなければ、国民投票で改正出来ない」と書いてある。参議院は、自分達を無くすことには大反対する。だから参議院は人数減らすとか、条約だけやるとか、そういう役割にすれば良いと思う。


「質問5」

  アメリカには民主党党首、共和党党首という人はいないのですか。重鎮の院内総務が党の運営をしていますが、どういうシステムになっているのですか。

「回答5」

  アメリカは政党の党首と大統領とは違う。フランスもそうです。議員と大統領を国民が別に選ぶとそうなるのです。イギリスは国会議員を選んで、国会議員が首相を選ぶ。そうすると日本と同じになる。私は、日本式の方が良いと思う。つまり「ねじれ」が出来て、大統領がいつも少数派というのでは、約束したことが出来ないから。



以上は、「政治評論家 屋山太郎氏の講演」を國民會館が要約・編集したものであり、文章の全責任は当會館が負うものです。



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