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武藤記念講座(講演会事業)

第1037回武藤記念講座要旨

    2017年10月21日(土)
    於東京「国際文化会館」
    政治評論家   
    安廣欣記氏

 『安倍一強政権は、この国の安心、安全を守り抜けるか』  

セミナー






第一章 安倍総理の人物像
第1節 安倍総理の人柄
  安倍総理がまだ若い頃、今度文部科学大臣となった林芳正さんが山口で参議院に初めて立候補された時「佐藤さん(佐藤栄作元総理の息子で元運輸大臣、通産大臣)、高村さん(現自民党副総裁)、河村さん(麻生内閣の官房長官、元文部大臣)、安倍さんの4人で応援の新聞を作りたいので執筆してくれないか」と言われ、安倍さんと色々やり取りをしたことがあります。その時の印象は「文章の細かいことにまで拘る方であった」と覚えております。その後の安倍さんの政治手法にも同様なところがあるように思います。「世論調査」で安倍総理を支持しない理由でいつも多いのは「総理の人柄が信頼できない」です。先日のNHK調査でも35%で嫌いな理由のトップでした。そこで先ず安倍総理の「人柄」ついて考えてみたいと思います。安倍さんは小学校から大学まで成蹊学園です。お父さんの晋太郎さんが、知人を通じて慶應幼稚舎に入れるよう頼んだのですが、幼稚舎に入れなか
った。お母さんの洋子さん、この方は岸信介元総理の娘さんですが「政策とか、基本的な物の考え方は、祖父の信介。性格は父親の晋太郎に似ている」と言っております。安倍総理ご自身は「父は自分の生き方についてしょ
っちゅう悩んでいて、竹下さんと総理の椅子を争った時も、俺で総理が務まるのかなと悩んでいた。それに比べ岸のお祖父さんは、自負と自尊心の塊で絶対の自信を持って何事にもぶつかって行く性格であった」と言っております。そして総理の座に就いてからは「岸信介総理にあやかりたい。そのやり残した仕事をやりたい」という気持ちが非常に強いようです。
第2節 安倍総理に最も影響を与えた岸信介元総理
  岸信介さんは、大東亜戦争を始めた東條英機内閣で商工大臣兼軍需次官を務め、ガチガチの軍国主義者と見られがちですが、実は日本の上空にB29が飛びはじめた頃、東條内閣が「日本は1億総玉砕だ」と日本本土での決戦を主張した時、「サイパンを最後の戦場とすべきだ。日本全土を焦土にするようなことはすべきでない」と真っ向から反対し、商工大臣をクビにされました。戦後、GHQは、岸さんもA級戦犯として巣鴨に収容しましたが、結局釈放しました。それは岸さんが本土決戦に最後まで反対し、その後東條内閣が総辞職して、日米双方が最小の被害で終戦を迎えることが出来た。そのことが評価されたが故に、岸さんは政界に返り咲くことが出来たと言われております。岸さんの晩年、私はよく事務所にお伺いしました。代議士は引退されましたが、政界にはまだ大変な影響力をもっておられた頃、岸さんはヒョウヒョウと私共にお茶を淹れて下さる老爺でございました。若い頃からそういう性格だったようです。安倍総理のお母様洋子さんは「父の岸は、夫の晋太郎よりは優れて居りましたからねえ。あれほど気持ちの座った政治家はいま居なくなりましたね」とよくお漏らしになっていたようです。岸信介元総理の思想そして安倍晋太郎元外務大臣の性質を受け継いで安倍晋三さんが総理として登場いたしました。
第3節 第一次安倍内閣
  安倍さんは、小泉純一郎元総理が俺の後継者にと思い定め、自民党の幹事長、内閣官房長官を経て総理の座を射止めました。官房長官だけしか閣僚をやっていない人が総理になったことは日本政治史上ありません。だから安倍さんは張り切って「戦後レジームからの脱却」を大きな旗印に第一次政権に臨んだ。「憲法改正」も呼号した。かつてお祖父さんの岸信介元総理が「日本にとって半端な安保をある程度対等なものにする。アメリカがしっかり日本を守ってくれる憲法にする」と改正を目論み、亡くなるまで、それが岸さんの念願だった。それを安倍総理は何とかやり抜かなければならないと考えた。まず安倍総理が力を入れたのが憲法第96条の改正です。今の憲法は硬質憲法と言って、改正することが難しい。これをもっと軟性にした方が良い言うことです。先ず憲法改正に向けて国民投票法を作り、そして「憲法改正は、国民投票で国民の意思によって決まるのだから、国会の発議条件を厳しくし過ぎることは国民の権利を国会が縛っている。はく奪している」という論理で、憲法改正条項第96条の改正を一生懸命やろうとしました。しかし参議院選挙に敗れ、難病の大腸炎を患って退陣、それが果たせなかった。

第二章 アベノミクスで国民の安心を守れるか
第1節 憲法改正を封印して打ち出したアベノミクス
  2012年、今から5年前、第二次政権を組閣してすぐ憲法改正条項の「三分の二の衆参両院議員の賛成によって発議」というのを、もう少し軟らかく「二分の一」と提議した。ところが憲法学者からも、国民世論からも猛反対をくらった。「憲法改正条項を三分の二から、二分の一にすることは裏口入学と同じではないか」という議論まであり、総スカンを食った。結局封印をせざるを得なくなった。その直後の2013年の初めから安倍さんは憲法改正を口にしなくなった。そして憲法改正を封印して打ち出したのがアベノミクス(経済再生)です。これは岸信介元総理の後を継いだ池田勇人元総理が「所得倍増論」つまり安保を封印し経済再生に力を入れ成功したことに学ぶということです。またレーガン大統領が米ソの冷戦構造に終止符を打つために打ち出したレーガノミクス、すなわち軍事力を増強すると同時に様々な規制緩和と大幅減税で経済と軍事力を伸ばし、強いアメリカを作ろうとしたことに学ぶということです。したがって安倍総理は、憲法改正は勿論ですが軍事増強ということも考えていると思います。アメリカに日本を守ってもらうため、日本も応分の負担をしなければならない。そのため敢えて閣議決定で法制局の見解を変更し、集団的安全保障、集団的自衛権への道を開いた。これがアベノミクスの本質であると思います。
第2節 アベノミクスの三本の矢
  アベノミクスでは三本の矢を持ち出しました。三本の矢は、安倍総理の出身地の長州藩祖・毛利元就公が息子三人に「一本一本の矢ではすぐ折れてしまうが、三本固まれば、つまり三人が常に、協調し、協和し、仲良くやっていけば非常に強い力が発揮できる」と教え諭した故事にあやかって打ち出したものです。一番目が大胆な金融緩和、二番目が機動的な財政政策、三番目が民間投資を喚起する成長戦略です。私は非常に素晴らしいと思いました。
  金融緩和については、「絶対にインフレにしない。金融の安定が大事である」という日本銀行の白川総裁を首にし、新自由主義の持主で安倍さんと同じ考えに立つアジア開発銀行総裁の黒田さんを総裁に据えて大胆な金融緩和に乗り出した。2年間で日本の国債を130兆円、これまでの2倍買ったそうです。そうなれば市場にお金がたっぷり行き渡る。外国から見れば日本の貨幣価値が下がる。つまり円安を演出したわけです。円安になれば輸出企業を中心に儲かる。輸出大国・日本は、第二次安倍政権がスタートした2012年493兆円だった国内総生産が今や543兆円と50兆円も伸びたわけです。企業は活況を呈して、平成28年度の企業収益は市場初の75兆円にのぼりました。
第3節 実質賃金アップの取組みが課題
  企業収益が増加したと同時に増えたのが企業の預貯金です。いわゆる内部留保が406兆円となった。来年度の日本の国家予算が約100兆円ですから、国家予算の4年分を超えるお金を企業が持ったわけです。ところが実質賃金が増えていないため国内総生産の6割を占める個人消費は伸びようがない。企業が賃金を上げないからです。企業側は人口が減少し市場が縮小している。この先どうなるかわからないから、しっかりお金を握っておかなくてはという。企業も国内消費を喚起するため、賃金を上げる方向に向かわなければいけないように思います。そのことについて安倍総理も努力をしていないわけではありません。政府と労働組合、連合と日本経団連で話し合う政労使会議を作っております。企業が個人消費に目を向けて「賃金をアップさせ、デフレを脱却していくことが、結局企業を潤す」という気持ちで取り組んでいただかなければならないという気がするわけです。本日のテーマであります「安心なくらし」のためには、アベノミクスで経済を何とかしてもらうということです。

第三章 国民の安全を守るため「憲法改正」は必要か
第1節 日本の安全保障環境は戦後最大の危機
  いま日本は戦後70年の中で最大の危機にさらされております。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は自らの権威、権力を保持するためになんでもやるという。金正恩委員長がトップに立ってから自分の叔父さんも含め330人を粛清しました。お父さんの側近7人中、すでに5人を粛清しました。まさにスターリンやヒトラーの手法に似ています。核実験は6回、ミサイルの発射はすでに14回です。8月30日の13回目では2,700kmとグアムに届く距離まで飛ばし、9月15日には3,700kmとアメリカ西海岸にまで到達するといわれております。総理はミサイルが飛ぶたびに「断じて容認できない」と言います。しかし何ができるのか。対話、交渉、そして最後の手段としての軍事力の行使の3つがあります。総理は最近「もう対話の時期ではない。圧力をかけるのみ」と言い始めています。国連総会では「日本、韓国、中国、ロシア、アメリカ、それに北朝鮮を加えての6者会議で核廃絶するということを北朝鮮は約束した。しかし、この約束は自分達の時間稼ぎではなかったか。着々とミサイル開発、核開発に打ち込んできたのが北朝鮮。われわれを欺くための手段が6者会議であったのではないか」と演説しました。しかし「圧力を強める」と言っても、そもそも北朝鮮は今の金正恩のお祖父さんの金日成がソ連の後押しで作り上げた国です。ロシアは北朝鮮と新たな航路を開いて密かに交易を進めています。中国はかなりアメリカに同調して、貿易面で制裁を加えていると言われておりますが、石油の輸出入禁止は未だに守らないそうです。国境を接している中国は、北朝鮮がなくなり、アメリカの息のかかった政権ができると常に足元を脅かされるわけです。米韓共同でサードというミサイル迎撃態勢を整えようとすると、真っ向から反対するのが中国です。中国は韓国が北朝鮮を飲み込んでも困るし、北朝鮮が韓国側、アメリカ側についても困るわけです。北朝鮮はとにかく核を持ち、アメリカと対等な国として平和条約を結び、自ら朝鮮半島を統一することが目的ですから、簡単には音を上げないと思われます。
  一方、アメリカは、トランプ大統領が金正恩のことを「チビのロケットマン、あんなならず者をのさばらしておけない」と軍事的な攻撃をにおわせるような発言をしております。軍事評論家の先生方も「アメリカのトランプはいつ軍事攻撃に出るかわからない」と言っております。軍事攻撃に出れば、北朝鮮からの難民、そして隣接する韓国にも何十万人という被害者を出し、避難民も生まれるでしょう。その避難民の対応を日本も考えておかなければなりません。日本人が誇るべき資質を他の外国人は持ち合わせていない。外国人は日本の礼儀作法に戸惑うでしょうし、我々もこの大事にしてきた日本の美しい伝統を外国人に踏み荒らされたくない。そういうところからも難民対策は考えていかなければならない。大変です。しかし「アメリカと手を組んで国際的な世論を巻き起こし、6者会議的な会合を全て封印し、圧力を強めるだけ」では余りに危険ではないかという気がします。これから世論を含めどういう方向に行くのか、安倍一強体制を占う大きな試金石になると思います。そしてアメリカと歩調を合わせて行くということであれば、「憲法は改正すべき」と思います。
第2節 現行憲法の成り立ち
  昭和20年8月15日終戦。終戦と言っておりますが敗戦です。その7年後の昭和27年4月28日サンフランシスコ条約が結ばれるまでは我が国は主権というものがなかった。主権とは「国の領土、領空、領海、領民を支配する権利、そして排他的な統治権のこと」と思いますが、これを一切持たないで、日本国の最高法規たる憲法は作られたわけです。
  「押しつけ憲法」と言われますが、日本側で作った憲法草案がGHQのマッカーサーに何度も突き返され、結局占領軍であるアメリカ軍から選ばれた20数人で作りあげたのが今の憲法です。それを金科玉条のようにする理由はどこにあるのか。GHQ占領下の国会で明治憲法改正という段取りを経て今の憲法は出来上がったわけですが、田中義一元総理の息子さんで、貴族院議員であった田中龍夫さんは「確かに賛成はした。本当に一夜漬けに近い形でできたものであり、日本を徹底的に、特に軍事的には完膚なきまでに立ち上がれないようにするという目的のために作られた憲法であることは十分わかっていた。わかっていたが、あそこで賛成をしないわけにいかなかった」とよく話しておりました。中に一人か二人退席をした議員がいたそうでありますけれども、田中龍夫さんは賛成に回った。「ただ俺もその時は涙がぽろぽろ出た」という話を何度か聞かされたことがあります。おそらく日本国憲法の発布に賛成をした人たちの多くが田中さんと同じ気持ちではなかったかと思います。あの時アメリカがやったことは「ウォー・ギルト・インフォメーションプログラム」つまり「戦争責任は東條内閣と日本の軍国主義者が一方的に始めた侵略戦争であって、責任は全て日本の軍国主義にある。軍事力を持つことはいけないことだと国民を洗脳する計画」です。憲法の前文で「日本国民の生存とそして安全は、諸国民の公正と信義を信頼して」ではなく「公正と信義に信頼して、自分たちの安全と生存を託す」となった。護憲論者は「日本に平和憲法があればこそ、この70年間平和だった」「平和憲法があるから、どこも攻めてこないのだ」と言います。宮澤喜一元総理に「日本を守るため本当にこの憲法で良いのでしょうか。この憲法であるから他国は攻めて来ないのでしょうか。宮澤さん、韓国の憲法読んだことありますか」と聞いたことがあります。宮澤さんは黙ってしまいました。金正恩は日本国憲法を読んだことがないと思います。例え読んだとしても自分ファーストで、側近を300人以上も抹殺してしまうような人間が、簡単に占領して奴隷国として使えるならば、高い技術と勤勉な人そして経済力のある日本を放っておくでしょうか。「日本に平和憲法があったから平和が保たれている」とおっしゃる護憲一方の方に聞いてみたいと思います。
第3節 憲法改正への道
  安倍総理は、民主党から政権を奪取した2012年の衆院総選挙以来、封印してきた「憲法改正」を今回打ち出しました。最初は「来年の国会中には発議を」と期限を切りましたが、評判が悪いということで、期限にはかかわりなく国会で発議をする皆さんの論議を待とうと自分の案を引っ込めました。ただ唯一「憲法九条の改正では第一項の戦争放棄はそのまま残す。第二項の戦力の不保持、戦力を保持しない、交戦権を認めない、これも残す。第三項で、今や世論調査で9割以上の人がその存在を認める『自衛隊』を明記して、自衛隊の士気の高揚を図り、十全に使う」ということを出してきました。もちろん党内の理論家として知られる石破茂元自民党幹事長は「自衛隊の戦力は世界で五本の指に入るといわれている。これを戦力として認めない。認めないけれども憲法に明記する。これは今までの解釈憲法同様の矛盾をそのまま抱え込むことになり、小中学生にどう教えたらいいのだ」と反対を唱える。高村正彦自民党副総裁は「政治家は学者じゃない。発議をしなければ憲法は改正できない。発議をするには国会議員を三分の二を集めなければならない。そして国民投票で半分以上の賛成を得なければならない。その為には多少の矛盾はあっても、国民の9割が認めている自衛隊をまさに日陰から日の当たるところへ出してやる。そのことを強く訴えることで、国会議員の三分の二そして国民有権者の二分の一をオーバー出来るのだろう。政治は出来てなんぼである」という意見です。高村さんは中央大学法学部卒の弁護士さんですから。法律には非常に明るい人ですが、政治家として「法律の細かい詮索より、一番大事なところを抑え実現していくのが政治家だ」と言い切っております。したがって、これを土台に自民党の憲法審査会の話は進んでいくでしょう。そして今回の衆議院総選挙では、自民党と改憲派で三分の二以上を確保するであろうとは思います。
  安倍総理は「465議席の過半数233議席を取れば我々の勝利だ」と大変低いラインを提示しましたが、世論調査の結果からみて280議席は超えるだろうと思われます。公明党は34議席。落としても一つ二つと考えますと、それだけで三分の二の310議席をオーバーいたします。これに維新が加われば盤石の態勢になる。
  憲法改正は一つ一つの条項を問うことになりますので、真っ先に9条改正が提示されるだろうと思います。後は環境権、教育問題、地方分権などが改憲の対象になると思います。項目としていくつ出すのか決まっておりませんが、今の安倍政権は、自公連立政権であり、公明党にも配慮した「憲法改正の道」を進んでいくと思います。
第4節 安倍一強政権はこの国の安心、安全を守り抜けるのか
  「安倍一強政権は、この国の安心、安全を守り抜けるか」ということですが、これはやはり国を守ってもらわなくてはいけない。そして先ほど申し上げているような議席を今回自民党が獲得をするならば、安倍総理は来年9月の自民党の総裁選挙で三選を果たして、東京オリンピック、パラリンピックの翌年2021年まで安倍政権が続くということになろうかと思います。なお安倍政権をどう正していくかということが大きな問題になろうかと思うわけですが、今度立憲民主党が、第二保守、第二自民といわれた希望の党とほぼ同じぐらいの力を持ち、そして旧民進党の幹部であった人達で今回無所属で戦った人たちが合流するようになれば、安倍政権に色々注文をつけて、正常なる国会運営を通して、この国の安心、安全を守り抜いていかなければならないのだと思います。

第四章 解散総選挙の行方
第1節 「解散権」は総理大臣の専権事項
  安倍総理は「突拍子もない解散をしてしまった」と言われました。臨時国会が決まっていたにも関わらず、冒頭解散で「森友学園、加計学園から逃げ出したのではないか」という批判が飛び出し、「解散の大義がない」と言われました。しかし我が国の憲法で「解散権」というのは憲法7条と69条二つあります。69条解散は「内閣不信任案が可決をされ、あるいは内閣信任案が否決をされた場合、10日以内に衆議院を解散するか、10日以内に総辞職をしない場合は、衆議院を解散しなければならない」と明記してあります。したがって69条による解散が真っ当な解散です。7条は「内閣の助言と承認により、天皇が解散をされる」となっています。そして内閣総理大臣が閣僚の任免権、罷免権を持っており、名実ともにトップになっています。したがって第7条の内閣の助言と承認は、内閣総理大臣に変わっても事実上はまったく不思議ではありません。つまり「解散権」は内閣総理大臣の「伝家の宝刀」、なかなか抜きがたいけれど抜く権利は総理大臣しか持っていない。「総理大臣の専権事項」となっております。
第2節 安倍総理が解散総選挙を決断した理由
  安倍総理が解散総選挙を決断したのは、加計、森友両学園問題で落ちていた支持率が、その後の第三次安倍改造内閣で少し上向いて、支持が不支持を上回る世論調査が結構でてきた。まあこの機会だというのが一つあったと思います。
  次に、これまでの例から東京都議会議員選挙で大敗すると、その大敗が衆議院の総選挙にそのまま結びつく。自民党が大敗して民主党政権になった時にしても、あの時は都議会議員選挙で自民党が大敗したのですが、都議会議員の大物の内田自民党都連幹事長が、立候補直前に手を挙げた若者に都議選で敗れた。その結果がそのまま衆議院選挙に反映された。そういうことから、小池都知事が都知事戦で圧勝し、その勢いを借りた都民ファーストで都議会議員選挙にも圧勝し、その勢いが総選挙に乗り移る可能性が大きい。今回「希望の党」という名称になりましたが、それが国政選挙への準備が整わないうちにということがあったろうと思います。もう一つは北朝鮮問題です。安倍さんは国連でも「圧力を強めるしかない、対話の時期はとうに過ぎた」と言ってきた。これから益々圧力を強めると米朝、日朝、韓朝すべて緊張が高まってくる。とても解散総選挙をやっている暇はない。これもいま解散に踏み切る要因であったと思います。当初安倍さんは「2019年10月に今8%の消費税を公約どおり10%にする。この2%、5兆円分は、当初、財政再建に使うと言っていたが、幼児教育の無償化と教育充実に充てる。消費税アップ分の使い道を変えることを国民に聞く」と解散総選挙の理由を述べた。これは安倍さんの小さな心が頭を擡げたのだと思います。小池都知事からは「そんなしょぼい話を」と言われました。国家予算は政府が編成しますが、予算の使い道は国会の審議の上で決定すればよい。そんなことをいちいち国民に聞くために、大変なお金を使って総選挙する必要はないと思います。途中で気が付いて「国難突破解散だ」と北朝鮮を全面に押し出してきた。私はこれを先に言うべきだったと思います。
第3節 「希望の党」小池百合子代表の間違い
  「希望の党」の小池さんの間違いについては「前原さんからの話があった時、民進党を丸抱えすればよかった」と言われております。小池さんは「安全保障の問題で、民進党と同じように右から左、折り合わない連中が集まっても、これから憲法改正が問題になろうとする時期に、そんな異論分子を抱え込んでは、また分裂騒ぎで大変になる」と思って「選別」をしたのでしょう。そのことは間違っていなかった。如何せん「排除」がいけなかった。我が国で非常に馴染み深い聖徳太子の十七条憲法にも「和をもって尊しとなす」というのがあり、この国の伝統であり国柄です。それを高い目線から、自分の考え一つで誰とも相談もせずに「排除をする」なんて言ったのが失敗だった。これで「希望の党」はあっという間に支持を失ったと考えております。実は個人的な体験ですが、小池さんが小泉内閣で環境大臣の時、私は、地方新聞の組織である郷土紙連合に頼まれ、小池さんと環境大臣室で対談をすることになり、真夏でしたが背広姿で待っておりました。そこへ現れた小池さん、入ってくるなり「あなたよくこんな姿で来たわね。ここはそんなネクタイ姿では出入り禁止ですよ」と端から怒られました。「クールビズよ。私が提唱していることを知らないの。クールビズの人しかここには入れないのよ。今日は対談すると言っちゃったからやりますけれども」と言うことで始まった。小池さんは、上から目線で常に自分の思うとおりに進めていくというのが一つの性癖です。それが現れて「排除」という言葉になったのでしょうが、今回の選挙ではそれが、墓穴を掘ることになったということです。

質疑応答
「質問1」

  安倍一強と言われますが、他弱の結果としての一強だと思うのですが如何ですか。

「回答1」  

  他弱による「安倍一強」はおっしゃるとおりです。大叔父の佐藤栄作元総理は7年8カ月という戦後最長の政権でした。その時もライバルの河野一郎さんが亡くなり、大野伴睦さんが力を失い、他弱の状態が生まれ、非常にラッキーでした。いまの安倍総理も自民党内で他弱と言って良い状況です。安倍総理は島根県出身の細田博之元自民党幹事長の率いる派閥が母体で、90人以上おります。その他はどんぐりの背比べです。かつて自民党政権は「ヤジロベエ政権」と言われ、「右に行き過ぎると左が強くなる。左が強くなり過ぎると右」と上手くヤジロベエ的にバランスを取っていました。そこで安倍さんの後は、左の岸田文雄自民党政調会長と言われます。岸田さんは、池田勇人元総理がつくり、大平正芳元総理、宮澤喜一元総理を出した宏池会の流れを引き継ぐ派閥で、自民党内のリベラルを自他ともに認めるのが岸田さんです。安倍さんがタカ派で右寄りですから、次は岸田さんにということです。しかし岸田さんは党内全体への影響力が弱い状態で、一強状態になっております。もう一つ今の内閣が強いのは、2014年に内閣人事局を作り、人事権を官邸が握ったことで、菅官房長官を始めとする安倍側近の力が増しているところがあります。各官庁が立案する政府立法は官僚の力を借りなければならない。その官僚の人事を握っているのが内閣人事局で官邸ということですから、それも一強につながる。また政党も小選挙区制になり、派閥同士で競合することがなく、総裁・幹事長ラインで総選挙の候補が決まってしまうということも安倍一強の要因です。


「質問2」

  安倍さんの外交に対する努力を評価して良いと思うのですがどうでしょうか。

「回答2」  

  2013年から事実上スタートした第二次安倍政権で、安倍総理はこの7月までに訪問した国の数は70か国です。首脳会談は延べ400回です。これだけの実績を積んだ安倍総理なればこそ、国連演説で「国連加盟の全ての国が連帯して圧力を強めていかなければ北朝鮮の核開発を止めさせることは出来ない」と言えた。外交上の成果がなければ、お祖父さんの衣鉢を継いだような自信ある言葉は出てこなかったと思う。レーガン・中曽根、ブッシュ・小泉といった個人的な首脳間の信頼関係が大きな国同士の様々な取り決め、相談ごとにも影響して来るようです。そういう意味で安倍総理の外交は「安倍一強」の大きな要因ですし、これはもどんどん進めていっていただかなくてはならないと思っています。


「意見3」

  日本では「憲法は変えてはいけないもの」と言われる。世界の有力国は皆憲法を何回、何十回も変えている。時代の趨勢に応じて、その国の為に変えることが当然であると考えております。「安倍総理が安全を守り抜けるか」という題でありますけれど、安倍総理以外で誰が守り抜けるかと思います。安倍総理が私たち国民にとって、日本にとって最も必要な総理であると心から信じておりますし、皆がそれに協力すべきであると思います。これは右、左とは関係ありません。最後に安倍総理が右であると言われておりますが、私はごく中立の人間である。それは世界水準で考えたらごく普通の人間であると考えております。

「回答3」  

  おっしゃる通りです。日本が国家としてやることは、一つになって取り組まねばいけません。特に北朝鮮の脅威に対しては、日本自体が一つになる必要があります。そのための憲法改正です。日本が一番遅れていることは8月30日と9月15日、北海道襟裳岬上空をミサイルが飛んだ時、全国の瞬時警報というJアラートを鳴らして避難を呼びかけた。ところが、聞いた人達はどこに避難していいのか全然わからない。日常そういう教育を受けていないし、実際問題、核が飛んで来た時にどこへ逃げていいかわからない。核を防ぐシェルター保有率は、永世中立国で国民皆兵のスイスは100%、中東の火薬庫といわゆるイスラエルも100%、北欧三国の一つノルウェーが98%、アメリカが82%でロシアが78%、イギリスが67%です。日本は0.02%だそうです。それこそ安倍政権はシェルター建設を奨励して、補助金でも付けた方が良い。この核のシェルターなどというのはやはり外国に学ばなければならないと思います。それから電磁パルス攻撃。この前金正恩が豪語しました。電磁波で電気の関係、例えば交通とか通信とかいうものを一切だめにし、大きな打撃を与える。こういうものも、何かビルごと全部覆い隠す金属製の防備がすでに出来ているそうで、防御体制を進めていくべきだろうと思います。やはり先進国に学ぶべきところは多いと思いますし、お金は正にそういったところに使っていくべきでしょう。そうしたことを日本に普及させるように努力することが、これからの安倍一強で大事なことではないかと思う次第です。


以上は、政治評論家 安廣欣記氏の講演を、國民會館が要約、編集したものであり、文章の全責任は当會館が負うものです。



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