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武藤記念講座(講演会事業)

第1047回武藤記念講座要旨

    2018年7月14日(土)
    於大阪「武藤記念ホール」
    産経新聞社 外信部次長   
    矢板 明夫氏

 『習近平政権と今後の日中関係』  

セミナー





はじめに
  私は1972年に日本人残留孤児二世として中国の天津に生まれました。中国の学校では中国人と一緒に「共産党は素晴らしい」という教育を受けていましたが、15歳の時、家族一緒に日本に引き揚げて来ました。日本の町並みは美しく、空気や水はきれい。人々は優しく、警官は人を殴らず、役人は賄賂を要求しない。「日本は何て素晴らしい国だ」と思いました。中国の思想家 老子は「三流の政治家は恐怖政治をする。二流の政治家は国民に感謝される。一流の政治家は国民に馬鹿にされる」「政治家が何もなくとも、国民が自ら頑張って幸せになり、国が治まるのが一流政治家だ」と書いています。そういう意味で日本の政治家は超一流です。私は政治家を目指し、先ず慶應大学文学部国文科で日本の文化を勉強、その後松下政経塾に入りました。しかし塾の先輩 国会議員は皆新聞を見て国会質問し、問題提起するわけです。そういうこともあり中国社会学院留学後、産経新聞に入りました。新聞社では2007年から2016年末まで10年間中国特派員として北京に駐在しました。何故長くなったかと云いますと、中国政府の批判の記事ばかり書くため交代要員のビザを出なかったからです。2016年、習近平批判の記事を発信する私に困り、漸く後任のビザがおり帰国しました。今は外信部で世界各国のニュースを見ている状況です。

第一章 米朝首脳会談後のアジア情勢
第1節 中国と北朝鮮の歪な関係が復活
  米朝首脳会談は「世紀の握手」と云われましたが、中味は何もありませんでした。アメリカは非核化の具体的な日程の約束を獲りつけられず、北朝鮮も経済支援を取り付けられませんでした。結局単なるショーに終わってしまいました。しかし物凄く得をしたのが中国です。中国は北朝鮮を再び属国化することに成功しました。中国と北朝鮮は元々非常に歪な関係です。中国は北朝鮮が核実験をしても、ICBMを開発しても悪いと思っていませんでしたが、最近北朝鮮の金正恩委員長が親中派であった叔父の張成沢とその部下約千人を粛正したため、非常に関係が悪化し、口も聞かなくなっていました。今回トランプ大統領が北朝鮮への武力行使に言及し、経済制裁を実施したため、北朝鮮の金正恩委員長は中国に頭を下げるしかなくなったわけです。金委員長は外交が上手いと云っている人がいますが、外交には基本的に経済力・軍事力・情報力の3つが必要で、今の北朝鮮にはこの3ついずれもありません。今回金委員長は何も手に入れていません。得をしたのは中国です。金委員長の乗った飛行機には中国の国旗が付いており、世界中に北朝鮮が中国の属国になったことを示しました。
第2節 在韓米軍撤退検討と中国の勢力拡大
  トランプ大統領がシンガポールの記者会見で「米韓の軍事演習を中止する。在韓米軍の縮小も検討する」と云いました。これは北朝鮮にはどうでもよい話ですが、中国には物凄く重要な話です。北朝鮮は暴発の危険はありますが、軍事力は韓国が圧倒しています。つまり北朝鮮の牽制は韓国軍で充分で、在韓米軍の2万8千500人は中国を牽制するために置いているのです。軍事演習も実は中国を牽制するためのものです。今中国海軍には3つの艦隊があります。東海艦隊は台湾海峡・尖閣周辺で凄く活発化しています。南海艦隊は南シナ海に進出し話題になっています。しかし北方の北海艦隊は全然動いておりません。これは在韓米軍がいるからです。もし在韓米軍がいなくなれば、中国は一気に日本海周辺で海外拡張を始めます。日本は南からだけではなく、日本海周辺でも中国の脅威に曝されることになります。トランプ大統領は基本的にアメリカのことしか考えていないわけですから、アメリカに届くICBMと核の小型化さえなければよいと思っています。トランプ大統領は「米軍を海外に駐在させることはお金がかかる」と云っているわけです。今後アメリカ国内で「在日米軍も縮小しよう」という議論が出て来てもおかしくない状況です。気を付けなければなりません。
第3節 ロシアと南北朝鮮の接近
  ロシアのラブロフ外相が最近北朝鮮を訪問しました。また韓国の文在寅大統領がロシアを訪問しました。ロシアは南北朝鮮に同時に接近しているわけです。文大統領は「シベリア鉄道を延長して、北朝鮮と韓国を結ぶこと」を提案しています。一気にロシアの南下が具体的になってきます。日本は日清戦争以前からロシアの南下を脅威に思っているわけです。今度の米朝首脳会談で北朝鮮包囲網がなくなり、ロシアの南下の可能性も出て来ました。

第二章 変化する日本の外交・安全保障環境
第1節 日本に対する敵意が消えない北朝鮮
  北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」から米国帝国主義の批判がなくなりました。中国の批判もなくなっています。朴槿恵政権の時は韓国叩きをしていましたが、今は云わなくなっています。今北朝鮮が批判するのは日本だけです。北朝鮮は他の国とは和解しましたが、日本とは和解ができておりません。何故なら日本とは拉致問題という非常に高いハードルをクリアしないといけないからです。今北朝鮮は日本に対してだけ敵意を持っています。今後日本は、非常に危険な北朝鮮と対峙していかなければならない状況にあります。
第2節 周辺に三つの独裁国家と三人の独裁者
  金委員長とトランプ大統領が会うことで、北朝鮮の政権が延命されました。金政権は今後10年、20年続く可能性が高くなりました。中国は今年3月、憲法改正し、習近平国家主席が死ぬまで続投できることになりました。終身制の独裁者です。ロシアのプーチン大統領も今年3月、4回目の大統領選挙に当選しました。ロシアも憲法改正しており、プーチン大統領も死ぬまで大統領の可能性があります。つまり日本周辺に3つの独裁国家と3人の独裁者が生まれたわけです。全て旧社会主義国家の赤い独裁者で、社会主義が残した負の遺産です。彼らは虎視眈々と日本を狙っています。
第3節 内向化する米国は信用できない
  最後に日本にとって大事なことが「アメリカは信用できない」と云うことです。日本が米国と良好な関係を望み、日米安保を重視しているにもかかわらず、アメリカは、今回の北朝鮮との会談前、全く日本に相談もなく連絡もありませんでした。3月8日、韓国の特使がワシントンで突然「これからトランプ大統領と金正恩委員長が首脳会談を行う」と発表して、日本は初めて知るわけです。アメリカは今後自分のことしか考えなくなるわけで、非常に内向きになって行きます。唯一日本の救いは、トランプ大統領と安倍総理が友達として非常に良い関係が続いていると云うことです。もし日本が安倍総理でなければ日米の関係はもう崩れています。要するに6月12日の米朝首脳会談の合意で、日本の外交・安全保障環境は非常に厳しい状況にあるということです。

第三章 中国の権力闘争激化と外交
第1節 国内政治の特徴
  先ず中国の新聞記事は報道が目的ではなく、全て政治のため指導者個人のためにあります。記事をそのまま日本に伝えるとミスリードしてしまいます。中国の新聞は指導者をアピールしないといけません。習主席の写真を数多く新聞に載せることが重要なのです。また指導者を大きく撮れるカメラマンが出世するのです。逆に失脚した政治家は小さく見せることも中国メディアです。次に中国の政治家は全くアドリブがききません。中国は基本的に密室政治ですから、指導者が選挙で演説するという経験もなく、皆の前で話す時は原稿を読むだけです。昨年4月、習主席がアメリカを訪問した時、夜の晩餐会で「たった今、トマホーク59発でシリアを攻撃した」とトランプ大統領から突然云われます。習主席はケーキを口に入れたまま10秒間黙ったままで、そして「もう1回云ってくれ」と云いったそうです。中国のトップには、アドリブ能力、臨機応変能力が全くありません。3つ目に中国は権威に弱いということです。2008年5月14日、四川大地震が起きた時、私はすぐ深夜の飛行機に乗って四川に入りました。死者、行方不明11万人を超える大惨事で、中国人民解放軍が救援活動をやっておりました。新聞記者は人民日報新華社、中央テレビも現場に入ることを止められました。ところが私が奈良県の発行した「胡錦濤国家主席の顔写真入り記者証」を見せたところ、人民解放軍の幹部は敬礼して現場に入れてくれました。胡錦濤の写真は怖くて誰も止められないわけです。まさに忖度の世界です。胡錦涛時代が2013年の春まで続くのですが、4年半この記者証をあちこちで活用しました。アジアにおいて今後のビジョンを提示できる国は日本と中国しかありません。中国の「一帯一路」は、ユーラシア大陸の遅れた地域を中国の資金で開発し豊かにしていくということで好意的に受け止められています。一方日本の「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、法の支配を確立し、世界中の国が海を自由に移動できる。インド洋と太平洋を繋げ、北東アジア、東南アジア、南アジア、東アフリカの地域全体を繁栄させる構想です。大陸国家である中国が陸の構想を掲げ、海洋国家である日本は海の構想を掲げ戦っているわけです。この国際秩序観の対立は、自由主義や民主主義、法の支配、人権などの価値を重視する民主主義国と、それらの価値に否定的で権威主義的な諸国との間のイデオロギーを巡る対立でもあるということです。どちらの構想に基づいてこの地域の秩序が作られていくかということは将来にとって極めて重要となってきます。ところで安倍総理が去年6月、初めて中国の「一帯一路」構想を限定的条件付で支持を表明しました。その後の日中首脳会談でも、明確に協力可能な領域で協力すると言っています。つまりこの二つの秩序観は、日中関係が良くなればこれが融合し、日中関係が悪くなれば分裂するのです。現状は二つが融合する方向に動いています。今中国が日本との関係を強化している最大の要因は、トランプ大統領が中国に対し、貿易政策と安全保障政策で極めて敵対的な施策を提示しているからです。昨年12月のアメリカの国家安全保障政策で中国を最大の挑戦者として位置づけ、これに対抗する必要性が書かれました。中国では危機感が高まっているわけです。ところでアメリカのアジアにおける力の源泉は日米同盟です。日米同盟を分断すればアメリカの力は弱まるわけです。したがって今中国の日本に対する歩み寄りには二つの側面があります。経済的な理由やアジアの安定のために日中関係を良くしたいということと、アメリカの外交が予測不可能であるためアメリカの影響力を排除して日本との関係で安定的な秩序を作りたいという思惑が混ざっているということです。
第2節 ツートップの確執
  今中国は習主席と李克強首相のツートップ体制ですが、二人は非常に仲が悪い。一部メディアでは習主席が権力掌握したと云っておりますが、実はまだかなり拮抗しています。そもそも2人の政策が基本的に違います。習主席は経済に対する共産党の主導権を強化し、国有企業を育てたいわけです。一方李首相は、今中国の経済が非常に弱体化おり、規制緩和で民間の活力を競争させ、経済を良くしたいと考えています。規制緩和すれば共産党の影響力が小さくなるわけですから正反対の考え方です。全人代で、李首相が政府活動報告をしますと全員が拍手をします。しかし習主席だけは拍手をしません。これは習主席の党内掌握が完全ではない証でもあります。中国の組織は先ず総書記が1人で、その下に7名の最高指導部による「政治局常務会議」があります。日常的なことはこの会議で決めて行きます。その下に「政治局会議」があります。本当に重要なことはこの会議で決まります。軍のリーダーを含め25人おり毎月会議が行われます。実は過去の社会主義国家の大きな政変はこの会議で起こっています。旧ソ連のフルシチョフが失脚した時、毛沢東が死んだ後の四人組事件もこの会議で起こりました。2〜3日前、江沢民、胡錦涛など40人ぐらいの共産党長老がこの政治局会議を緊急に開くことを提案しているとの情報があります。「米中貿易戦争で中国経済が大変な状況になっている。これは習政権が対米強硬路線をとっているからで、中国は勝ち目のない戦争をやるべきではない、という意見が高まっている」とのことです。8月の北戴河会議で習政権の軌道修正あるいは一歩間違えれば政局になる可能性もあります。
第3節危険な習近平思想
  今回の党大会と3月の全人代で「習近平思想」が党の規約と憲法に入りました。個人の思想が党の規約と憲法に入ったことで、習主席に反対する意見を言えなくなりました。その内容は「2050年までに中国を社会主義強国にする」「法治国家を目指す」「中国人民解放軍を世界一位の軍隊にする」ということです。思想というよりも、やりたいことを並べただけです。しかしこの習近平思想は実は非常に危険です。党大会の直後のシンポジウムで、軍系シンクタンクの研究者が「中国が近未来でやらなければならない六つの戦争」を発表しました。要するに2050年に中国社会主義強国とするため解決しなければならないのは失地回復ということです。2020年〜2025年で「台湾統一戦争」をする。2番目は南シナ海の「南海戦争」、3番目はチベット南のインドとの「蔵南戦争」、4番目は尖閣を取り戻す「釣魚島戦争」5番目はモンゴル共和国を取り込む「外モンゴル戦争」、6番目はサハリンを取り戻す「庫頁戦争」です。2050年までにロシアと戦争しなければならないと云っているわけです。日本や周辺国にとって大変迷惑なことです。アメリカの学者は「中国は2020年までに台湾攻略の準備を完成する」と云っておりますが、最近台湾海峡における中国の軍事圧力が高まっております。
第4節米中の関係
  今アメリカのトランプ大統領は、米中貿易戦争を仕掛けていますが、いつでもディールに応じる可能性があります。今アメリカ経済は非常に好調ですが、経済が悪化した時には、本格的な対中貿易摩擦が起こります。一方中国国内では景気悪化の兆しが顕著になってきており、更に景気が悪くなりますと、ナショナリズムが高揚し反米の動きにつながると思います。要するに中米関係は両国の経済状況に影響されるということです。もう一つ重要なことはトランプの家族とトランプチームの関係です。中国のロビー活動により、トランプ大統領の娘イヴァンカと娘婿クシュナーは親中派になったと思います。バノンも親中的な言動が最近目立ってきました。一方トランプチームのマティス国防長官とボルドン大統領補佐官は、比較的中国を脅威と認識しています。今後トランプの家族とトランプチームの力関係の変化が米中関係に影響すると思います。また朝鮮半島の状勢が米中関係を左右する大きな要素です。中国は北朝鮮の核保有を実質的に容認しています。北朝鮮は、中国貿易に9割以上依存しているわけですから、本気で中国が北朝鮮の核開発を嫌っているのならば、国境を閉鎖すれば1か月で北朝鮮の経済は持たないと言われています。その制裁を殆どやっていません。今後気をつけなければならないことは、北朝鮮が具体的に非核化を進める時、中国の専門家が主導する非核化は非常に危険であるということです。中国は濃縮ウランを全部中国へ持っていこうと考えており、不透明な非核化になります。一方中国は、日本の核武装に絶対反対ですし、憲法改正にも反対しております。中国はアメリカに対し活発なロビー活動を行っております。

第四章 今後の日中関係
第1節 習近平政権の対日政策の変化
  習政権が6年間で行ったことは反日と腐敗撲滅の2つだけです。腐敗撲滅は政敵を粛清するための反腐敗キャンペーンです。反日は、2012年9月 習政権が発足した直後、民主党政権が尖閣国有化を決めるわけです。これで一機に尖閣叩きをします。反日デモを全国70都市で行いました。次が靖国問題です。2013年12月 安倍総理が靖国参拝をしたことに国を挙げて批判するわけです。世界中への告げ口外交で靖国キャンペーンを1年ぐらいやりました。その翌年の2014年は「南京大虐殺国家追悼記念日」を設けました。1937年12月に日本軍が南京侵攻で市民30万人を虐殺し、その追悼を行うということです。日本の学者は大虐殺を否定する意見が主流で、しかも中国は10年、20年、50年目では一度も記念行事や慰霊祭を行っていません。突然77周年という中途半端な年に、国を挙げて追悼し日本に対する憎しみを植え付けるわけです。2015年9月3日には「抗日戦争70周年軍事パレード」を行いました。2016年には漁船400隻を再び尖閣周辺へ出します。更に戦時中の強制連行問題です。三井、三菱財閥の旧日本企業が、中国人捕虜や中国人労働者を働かせたとして損害賠償の訴訟を中国国内で起こすわけです。1972年 田中総理訪中の時、「中国は戦争賠償を放棄する」とお互いにサインしているわけです。それを信じて日本企業は中国に進出したわけです。毎年反日のための違うカードを切っているわけです。そして2017年は日本人スパイ問題です。今8人の日本人がスパイとして中国に拘束されていますが、全員冤罪です。最近捕まった二人は中国人雇われて温泉を探しに行った70代と50代の職人で、中国語も出来ません。中国の反日活動です。
第2節 中国共産党の対日外交の歴史
  中国に北京ダックという食べ物がありますが、北京ダックの食べ方は「三吃」といって、皮を薄く切って包んで食べると。残った肉をもやしと炒めて食べること。残った骨をスープにして食べること。そうしますと一匹の北京ダックを丸ごと無駄なく食べられるわけです。中国共産党にとって日本はまるでアヒルです。先ず中国共産党は、国民党と内戦をして負けそうになった時日中戦争が勃発し、国民党が日本軍と戦っている間に勢力を拡大、日本の敗戦で政権をとったわけです。毛沢東は「日本軍のおかげで共産党が政権を取った」「日本を利用して政権をとった」と何度も言っています。次に1970年代の改革開の時です。ケ小平さんが日本に来て、あちこちで頭を下げ、日本の技術と資金によって中国の高度経済成長が出来たわけです。2010年には中国が日本を超えて世界2位の経済大国になったわけです。そして習近平政権になりますと、今度は愛国教育と云って、日本叩きで共産党政権の求心力をもう一度高めようと日本を利用しているわけです。日本はまるで北京ダックのように無駄なく中国に利用されているわけです。
第3節 今年の日中関係
  李克強首相が5月に訪日しました。これが日中関係回復する試金石です。次に8月、9月尖閣周辺に中国漁船が来るのかどうかが注目されます。3点目は日本人スパイの裁判です。どのような判決になるのかは、今後の日中関係の指標になります。中国はいつも自分の都合で日本と関係を良くしたり、悪くしたりします。今中国はアメリカとの関係が非常に悪化しており、一方で自民党は去年の選挙で圧勝し、安倍総理は9月の総裁選も再選しそうです。今日本と関係回復しないと3年ぐらい回復できないということで、中国は日本との関係を改善しようとしています。また中国は最近韓国や東南アジア、台湾、香港との関係が悪化しています。インドとの関係も悪化しており、それらの国々は日本との関係を良くしようとしています。中国は周辺の環境を良くするためにも日本と関係回復しようとしているえわけです。また今日本と台湾の関係が非常に良いわけです。日本は、日中関係が悪ためフリーハンドで何でもできるわけです。中国は日台接近を何とか阻止するため日中関係の改善を考えています。もう一つ中国の思惑は南シナ海です。日中関係は今まではずっと中国が攻める立場です。慰安婦問題、靖国問題、尖閣問題、全部中国が攻めて日本が守るわけです。しかし最近、南シナ海で安倍総理は反撃に出ております。南シナ海の人工島問題では岸田外相も中国に抗議するわけです。中国は、攻撃は強いが守りは弱く、攻められると以外にもろい。そこで中国は急いで日本との関係修復に乗り出しているわけです。2014年に安倍総理が訪中して習主席と握手した時は、習近平主席の仏頂面が結構話題になりました。しかし去年の年末のベトナムでは習主席は、安倍総理に満面の笑顔になったのです。安倍総理の対中政策は何も変っていませんが、中国の大きな政策転換があったということです。今年、日本は対中外交を展開するチャンスです。

おわりに
  今後日本は「人権問題」で積極的に発言していく必要があります。安倍総理は今世界各国に拉致問題を主張していますが、同時に中国の人権問題についても発言していく必要があります。この問題は中国の非常に弱いところです。つい先日ノーベル平和賞をとった劉暁波の妻 劉霞さんがドイツに亡命しました。これはメルケル首相が中国政府と交渉した結果で、世界的な大ニュースとなり、ドイツに対する好感度が上がりました。これまで日本は中国の人権問題についてほとんど発言していませんが、もっとアピールして中国を攻めなければなりません。野党も中国で拘束されている8人の日本人について政府に質問し、「政府は日本人を守っていない。外務省は何をしているのか」と追及しなければなりません。そうすれば産経新聞も野党を応援するわけです。

質疑応答
「質問1」

  中国の「近未来の6つの戦争」に沖縄が入っていませんが、中国は沖縄をどのように考えているのですか

「回答1」

  沖縄全体が中国の一部という文献は全くありません。中国の学者、軍関係者で沖縄独立支持者は多いのですが、中国の領土にする野心は今のところはない状況です。


「質問2」

  中国の都市戸籍の人達は豊になってきましたが、農民戸籍の人達は取り残され格差が広がっております。中国社会はどうなるのでしょうか。

「回答2」

  中国は「300家族5000人の特権階級が経済成長の7%を持っていくので、8%成長を維持しなければならない」と云う人がいます。貧富の格差が大きく一般庶民は全く豊かさを実感していません。最近全国各地で、公務員が給料未払いの抗議デモを行っております。今後、貧富の差が中国で大きな問題になると思います。


「質問3」

  中国の「一帯一路」の状況と、これに対する日本の対応について聞きたい。

「回答3」

  「一帯一路」は、中国の国内経済が悪くなり、雇用問題や過剰生産を解消するために始めたことです。アフガニスタンやスリランカの空港や鉄道を作るため中国はAIIB(アジアインフラ整備銀行)を作った。しかし国際社会には既にアジア開発銀行、世界銀行、IMFなど金融機関が沢山あるわけです。しかしお金を貸さないのは不良債権になることが目に見えているからです。内戦が続いている国に空港を作っても観光客は行かないわけで、中国のAIIBはいずれ破綻します。最近40位の鉄道建設でトラブルが起きています。日本はもう少し様子を見た方が良いと思います。


「質問4」

  習主席は、経済を共産主義ではなく修正資本主義の方向で進めようとしている。また国民を都市戸籍と農民戸籍と2分化し差別化している。治安費は国防費と同じくらいの予算で国民を終始監視している。中国に革命が起こる可能性はあるでしょうか。

「回答4」

  中国の一党独裁政権は永遠に続くものでないということが結論です。世界全体をみますと50年前に独裁国家が30〜40位ありましたが、今一党独裁国家は、中国、北朝鮮、キューバ、ベトナム、ラオスの5か国です。この5か国はいずれ民主化します。ただしその際、ソフトランディングで民主化するのか、独裁者を倒すとうい形で民主化するのか、中国がどういう道を辿るのかはわかりません。中国は1970年代から改革開放が始まり、すでに40年間経済高度成長しております。今年も7%以上の成長です。しかしこの経済成長が止まった時、必ず民主化の動きが高まります。それがソフトランディングか、ハードランディングか、時の指導者やいろいろな状況によります。


「質問5」

  海航集団の会長がフランスで転落死する事故がありましたが、あれは他殺ではないのでしょうか。

「回答5」

  他殺か自殺かどちらかです。一説によると彼の財産は全部家族が持っていて、彼は死なざるをえなくなったと云われております。彼が自殺した日は7月3日で、中国語でチー・サンと云って王岐山の発音と全く同じです。海南航空の実のオーナー王岐山から「死ね」と言われ、同じ発音の日に死んだのではないかという説もあります。もう一つの説は「死んだのは影武者である」という説です。事実は分かりません。


「質問6」

  残留孤児が最初に日本へ戻って来た時、新聞・ラジオ・テレビで報道放映されましたが、今そうした方々はどうさているのでしょうか。

「回答6」

  残留孤児というのは80年代から90年代ですが、日本語を勉強して日本の学校に入って就職してうまく日本社会に溶け込んだ人は沢山います。しかしうまく馴染めず中国に戻った人や、ヤクザと組んで暴力団を作ったメンバーもいます。人によって様々です。


「質問7」

   その中華思想を砕く方策はあるのでしょうか。

「回答7」

  今中国で直接投票しますと習主席が当選してしまうかも知れません。メデイアを完全に押えています。また過激派の「今すぐ台湾を征服する」「尖閣を取り戻す」という主張がうけ当選する可能性も極めて大きく、そういう意味では日本にとって危険なことです。中華思想は、中国を中心とした世界秩序をつくることです。決して国際社会で受け入れられるものではありませんから必ず失敗します。失敗を繰り返して気づくと思います。その間日本は引っ越すことが出来ませんので付き合わざるを得ないということです。今すべきことは中国の民主化を求める力を応援することです。


「質問8」

  習主席が権力を固めるのに王岐山を使ったと聞きますが、今習主席との関係はどうなっているのでしょうか。

「回答8」

  非常に難しい関係です。王岐山は基本的に習主席をかなり馬鹿にしています。王岐山の方が頭も良く能力も高い。しかし王岐山には海南航空などの不祥事があって、習主席に嫌われない様に一生懸命頑張っているわけです。そういう歪な協力関係にあります。


「質問9」

  米中貿易戦争は中国に不利だと言われていますが、中国で失業者が出て、更に経済が苦しくなると、政権に大きなダメージになると思いますが、どうでしょうか。

「回答9」

  まさにその通りです。今ZTEとファーベイという中国を代表する企業がアメリカから重点的にターゲットにされています。結局、中国の製造業は、靴とかオモチャしかなくなってしまいます。ハイテクは完全にアメリカに敗れるということは、経済と自信の両面で打撃が大きいと思います。またアメリカが関税を上げる何十項目は全部中国の痛いところです。中国が対抗するのは大豆や牛肉で、アメリカ経済を締めるには極めて小さいわけです。しかも大豆をブラジルから買うと、ブラジルはアメリカから買う状況が今始まっています。結局貿易戦争は中国の完敗です。しかし習主席は謝ることができない。そこで長老達が何とかしようという状況になっています。今年8月に北戴河会議がありますが、大きな山場になります。場合によっては政局になるかも知れません。


「質問10」

  中国ではいたるところに監視カメラがありました。今後中国で注意しなければいけないことはありますか。

「回答10」

  監視カメラは、外国人が泊まっている部屋の中にもついています。したがって、部屋で取材する時は筆談です。手で隠して重要な事をカメラに捉えられないようにすることもあります。監視カメラが安くなったので、沢山設置できるようになったのですが、逆に政権の自信の無さの表れということも云えます。しかし今かメラを見る人が足りない。また中国人は真面目に見ていません。電話は100%盗聴されると云われていますが、誰もしっかり聞いていないらしい。政権は自信がないから今後も監視カメラが普及すると思います。


以上は、産経新聞社 外信部次長 矢板明夫氏の講演を、國民會館が要約、編集したものです。文章の全責任は國民會館が負うものです。



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