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武藤記念講座(講演会事業)

第1054回武藤記念講座要旨

    2019年1月26日(土)
    於大阪「武藤記念ホール」
    立命館大学客員教授・元外務事務次官   
    藪中三十二氏

 『緊迫の国際情勢と日本の針路』  

セミナー





はじめに
  今大学で学生を教えておりますが議論することが上手くありません。そこでグローバル人材の育成と交流の場として「寺子屋」を始め、英語で「Speak out, Speak out with logic, Outstanding Performance”( とにかく話せ、論理的に話せ、頭が一つ跳びぬけること)と言っております。日本語では「あいつは口数が多く、理屈っぽく、結果として目立ちたがり屋」となり、日本では最悪の人間となってしまいます。しかし国際的にはそれくらいでないと通用しません。もう一つ大事なことは、世界がどう動いているのかを理解するということです。世界は今物凄く大きな変革の時期を迎えております。本日は、世界の流れを理解する観点から、緊迫する国際情勢を概観し、その中で、日本の国益をどのように守っていくのかということについてお話したいと考えています。

第一章 戦後の世界システムの崩壊
第1節 揺らぐ同盟関係
  第二次世界大戦が終わって74年になります。その間当たり前だった世界の平和と繁栄のインフラが覆る時代に入っています。戦後の世界システムは同盟関係(Alliance)と自由貿易体制(Free Trading System)とりわけ多角的自由貿易体制が根底にありました。アメリカを中心に結んだ同盟関係は、ヨーロッパではNATOであり、アジアでは日本、韓国、フィリピンあるいはオーストラリアと2国間で安全保障条約を結んでいますが、その中核は日米同盟です。もともとアメリカは1776年からの長い歴史から見ますと、モンロー主義など世界に関わりを持たない歴史です。第二次世界大戦後の体制の方が珍しいわけです。同盟関係とは、ヨーロッパ諸国が攻められればアメリカが出て行き、アメリカ人が血を流すという約束(Commitment)ですが、それを我々は当然だと思っています。世界の防衛費を見ますと、アメリカがGDPの3.3%、ロシアが5.4%です。今トランプさんはドイツがGDPの1.2%しか負担していないと非難するわけです。しかし日本は1%を切っています。日本の安全保障は元々大した装備は持たないということで来ましたから自衛隊だけでは不十分です。それを日米安保条約でカバーしてきたわけです。それが未来永劫続くのか、今そうでないことが起きています。去年のNATOサミットでトランプさんは同盟関係の確約をしませんでした。その理由は第一に「誰が敵か」ということです。「ロシアか」と言うと「俺がプーチンと話をすれば上手くいく」と言うわけです。第二にNATO諸国はお金ばかり儲けて貿易黒字である。そして第三に防衛費を払っていないと言うわけです。アメリカとNATOは相互防衛条約です。アメリカで起きた9.11テロの時、NATOの国々はイラク、アフガニスタンに兵を出したわけです。しかし今NATOの国々が「トランプのアメリカは頼りにならない」と言っています。日本も危ない時代になったということです。今までの世界の平和と安定の礎であった同盟関係が揺らいでいるのは明らかです。
第2節 自由貿易体制の危機
  戦後の経済発展を支えてきた基本は多角的な自由貿易体制です。60年代にケネディラウンド、70年代に東京ラウンド、80年代にウルグアイランドがありますが、交渉に10年間ぐらいかかるわけです。自由貿易は自転車のように漕いでいかないと倒れてしまいます。そこには保護主義の圧力があり、各々国が政治的に対立するわけです。その中で多角的な自由貿易体制を進めてきた歴史です。そして今はWTO(世界貿易機構)も出来上がりました。しかしトランプさんは多角的なことも、自由貿易も大嫌いです。自分が二国間で交渉(Deal)して出来上がることしか信用しません。多角的自由貿易体制は完全に危機に瀕しています。TPPからも離脱しました。トランプさんのもとではアメリカ一国主義で自由貿易には反対です。NATOなどの同盟関係も軽視しています。戦後74年間続いてきた体制が今まさに大きな試練に直面している状況です。
第3節 危機感のない日本
  日本では「安倍さんが上手いことやっている。トランプさんも日本については酷いこと言っていない」とさほど切実感や差し迫った危機感が持たれていません。ヨーロッパはじめ世界各国は相当危機感をもっています。アメリカの中でもマティス国防長官が辞任する前に「トランプ大統領は同盟関係を重視しない。世界の平和はこの同盟関係を重視するアメリカ外交があって初めて成り立つのだ」と言っております。あと2年我慢すればトランプは辞めるであろう。あるいはそれ以前にすぐに辞めるだろうと言われていましたが、今トランプさんは本気で再選を目指しています。特別検察官がロシア疑惑を調査していますが、大統領を追いつめることは大変なことです。あと6年間トランプさんが大統領を続けますと、戦後の世界システムは完全に崩壊してしまいます。しかも民主党の大統領になっても実は自由貿易には反対です。アメリカの兵が海外に出ていくことにも反対です。前のオバマさんでも“We are not any more world‘s policeman”(もはや世界の警察官ではない)と言っていました。アメリカ国民自身がそう思っているからです。トランプさんが国民の雰囲気を代表しているところもあるわけです。我々は、今のアメリカの状況を認識し、アメリカが助けてくれない時、日本はどうなるかを考えておかなければなりません。

第二章 米中関係の行方
第1節 米中貿易戦争はどうなるのか
  アメリカと中国は去年から一年間、お互いの輸入品に対し関税の引き上げ合戦を行ってきました。そして先日のアルゼンチンで とりあえず今年3月1日まで90日間の休戦協定を結んだわけです。仮に3月1日までに合意が達成されなければ、アメリカは中国からの輸入品2,000億ドルについて関税を10%から25%に引き上げることになります。そうなると米中貿易戦争が本格化することは間違いありません。3月2日に株が暴落することは確実です。トランプさんは貿易赤字が一番ダメだと言っています。2017年のアメリカの貿易赤字は約8,000億ドルで約半分の3,752億ドルが中国です。日本は9%で日米貿易戦争にはなることはありません。かつて1990年にアメリカの貿易赤字が1,000億ドルで半分が日本であった時、日米貿易戦争が起こりました。1980年代にアメリカ企業が次々と日本企業に敗れ自信をなくし、最後に自動車まできた時、日米貿易摩擦は非常に激しいものがありました。今アメリカの貿易赤字の半分が中国ですから当時の日本とよく似ています。
第2節 本格的な覇権争い
  しかし今アメリカの中で起きていることは単なる貿易赤字の問題ではなく、本格的な米中対立の構造になっています。去年10月にペンス副大統領は「中国は経済だけではなく軍事面でも南シナ海で色んなことをやっている。経済ではアメリカの技術を全部盗んでいっている。またアメリカ世論に攻勢をかけ、大学あるいはシンクタンクで勢力を伸ばしている。今我々は立ち上がらなければならない」と言ったわけです。特に軍事とハイテク分野での覇権争いです。アメリカはこの70年間圧倒的に世界の覇権を握っていましたが、中国がそれを脅かし始めたわけです。覇権を脅かした時は徹底して叩くというのがアメリカの政治理論です。2000年には日本のGDPが中国の3倍でした。それが2010年に追いつき、今は中国が日本の2.5倍以上になっています。この間中国が急激に伸びて来ているわけです。国防費も膨張を続け、アメリカの覇権を脅かし始めました。1996年に中国が台湾海峡に向けてミサイルを撃つわけですが、アメリカの原子力空母が出て来て静かになりました。それは中国とアメリカとに圧倒的な軍事力の差があったからです。今はアメリカが台湾海峡へ出ていくことに二の足を踏むぐらい中国は力を持ち始め、南シナ海でも自由勝手なことをやっています。中国の国防力増強と人民解放軍の行動をチェックしなければならないというのが軍の主流の考え方です。それと完全に一致しているのがハイテク分野です。インターネットは軍と非常に関係が深いわけですが、その先端技術が中国に完全に盗まれています。中国政府は補助金を出し自国の企業の力を延ばしています。アメリカは軍とハイテク分野での中国の台頭を一番心配しています。したがって覇権争いは簡単には終わらないと思います。
第3節 個人的関係を重視するトランプ
  ところが、トランプさんは必ずしも米中関係の全体像を理解しているわけではありません。個人的関係が大事なわけです。そういうことから言うと、トランプさんは習近平さんについて大変愛着をもっております。米中貿易戦争も「自分が習近平と話せば問題は解決する」と言っています。過去1年間の中国は、トランプさんのそのメッセージをうまく受け止めなかったわけです。今後中国は、一つはアメリカから沢山物を買うことと、もう一つはハイテク技術を盗まない体制を作り、それを守っていくことです。ところが習近平さんがトランプさんの圧力に屈してなるものかという立場を取ると難しくなります。過去1年間、米中間で閣僚会議を何回も行いましたが、トランプさんは閣僚が合意しても全然意味がないと思っています。去年中国は農業に圧力をかければトランプは困るだろうと大豆関税を引き上げる措置をとりましたが、逆にトランプさんは2,000億ドルの輸入について関税を引き上げると出ました。完全にやり方を間違ったわけです。習近平さんが最終ギリギリのところで、直接トランプさんに働きかければ、米中貿易戦争は回避されると思います。しかしこの合意は一時的なものとなるでしょう。基本的には米中関係の大きな流れは、覇権争いがこれからずっと続いていくことは間違ありません。新たな冷戦の始まりです。日米貿易摩擦はあまり心配はいりません。日本は米中交渉の行方を見て、安倍・トランプ会談である程度のお土産を持たせればよいということです。

第三章 北朝鮮問題
第1節 戦略を見誤ったオバマ大統領
  「トランプさんになって何故急に北朝鮮の核問題が大騒ぎになったのか」ということですが、前のオバマ大統領の8年間は、北朝鮮の核問題を全然問題にしなかったわけです。オバマさんは「戦略的忍耐」(Strategic patience)という戦略をとり「北朝鮮が非核化について具体的な行動をとらない限り話し合わない」と放置したわけです。これはアメリカ軍の関係者が「北朝鮮はアメリカ本土を危険に陥れるような核ミサイル能力は持てない。持つには相当な時間がかかるだろう」と間違った見方をしていたからです。ところが北朝鮮はどんどん核実験とミサイル開発をして、2016年には、あと2〜3年もすれば本格的にアメリカ本土を射程に収める力を持つだろうとみられはじめた。ちょうどトランプさんが出てきた同じタイミングでした。
第2節 第一回米朝首脳会談の問題点
  「アメリカ本土が危ない。今抑えなければならない」という状況下で、去年6月、米朝首脳会談が開催されました。合意したことは、先ずあらたな米朝関係を確立するということです。二番目は平和体制を築く。三番目に朝鮮半島における完全非核化に努力する。四番目に遺体の収容です。会談後トランプさんは「金正恩はなかなか良い奴だ」と言うわけです。先日ナンバー2の金英哲が行った時にも「素晴らしいメッセージをもらった。素晴らしい進展がある」と言いました。つまりトランプさんにとって大事なことは、第一に自分がやったということ。第二に個人的な関係から金正恩は良い奴だということ。第三に首脳会談以降、北朝鮮は一切ミサイルを撃っていない。安心して眠れるということです。しかし重要なことは、北朝鮮の核をなくすことです。トランプさんは、アメリカ本土が危なくなければよい。北朝鮮がこれ以上ミサイルICBMのテストはしなければよいと言う可能性があります。今回金正恩は、米朝関係では今も朝鮮戦争が続いている。だから先ず戦争の終結をしましょう。その上で非核化がある。それも朝鮮半島の非核化とは北朝鮮だけではなく、韓国も関係する。核兵器を搭載した米軍のB52が飛んでくるのは困ると言うでしょう。北朝鮮は順番が重要なのです。米朝首脳会談の後ポンペオ国務長官が非核化の具体的フォローアップをしようと北朝鮮へ行きました。北朝鮮は「ギャングのやり方だ」と言ったわけです。先ず新たな米朝関係を確立すると言っているのに、非核化だけを言うのはおかしいと主張するわけです。理屈は北朝鮮に分があります。要はトランプさんがもっと詰める必要があったわけです。3月に韓国から「あなたのおかげです、あなたが厳しくやったから北朝鮮は心を変えて非核化をすると言っている。あなたに会いたがっている」と言われ、トランプさんは首脳会談を了解してしまいました。北朝鮮の核ミサイルについて、事前交渉で詰めなければならなかったわけですが、それが全然出来てなかったことが問題であるということです。
第3節 第二回米朝首脳会談の行方
  第二回では大きな進歩があると言っています。多分北朝鮮は見かけ上はかなりのことをすると思います。「寧辺の核施設を廃棄する、または約束する。さらにアメリカの本土を脅かすようなICBMの実験はしない。その代わり経済制裁は解除してくれ。大体良い米朝関係を作ろうと約束したのだから」という話だと思います。それにトランプさんは乗る可能性がある。しかし非核化とは一部の核施設を廃棄したところで不十分です。先ずどれだけ核施設があり、どれだけの核爆弾を持っているのかを全部申告させることが非核化交渉の第一歩です。トランプさんのやり方では、アメリカ本土は安全ですが、日本向けには大きなICBMは全く要りません。200発以上持っているノドンで十分なわけです。核が何十発も残っていれば危なくてしょうがないわけです。それにも拘わらずトランプさんは「あいつは良い奴だ。経済制裁は解除だ」しかも「非核化はお金がいるから日本に出せ」と言われたら大変なことです。米朝交渉が進めば、時を置かずに日朝会談をしなければなりません。核の問題、拉致の問題は日本にとって大問題です。今安倍さんがすべきことは「北朝鮮の金正恩の言っていることに軽々と乗ってはいけません」とトランプさんの頭の中に叩き込むことです。

第四章 日本の針路
第1節 中国とどう付き合うか
  ヨーロッパの中では、経済で中国がアメリカを抜き世界一になるという見方が強い。日本は引き続きアメリカが世界一であるという見方です。中国経済が順調に6.5%で伸びていき、アメリカが2.5%ぐらいの成長であれば、数字上は中国がアメリカを抜き世界一になると計算されます。しかし中国は大変な経済的問題を抱えています。果たして順調にいくのかどうか。また少子高齢化もすでに相当進んでいます。したがって中国がそう簡単にアメリカを追い抜くことはないと思います。しかし大国であることは受け入れざるを得ないわけです。日本では「中国を信頼出来る」と思う方はほとんどいない。「あんな国が大国になるのは嫌だ」「何か言うと南京虐殺など過去のことを言ってくる」「尖閣を自分のものだと言う」あるいは「ビジネスのルールをすぐ変える」と理由は色々です。しかし今日は敢えて意外と中国は律儀に日本との関係をやっているということをお話ししたいと思います。2008年の東シナ海のガス田の合意の件です。中国は沖縄トラフまで自分の海だと言いました。国連海洋法条約では、中国の大陸棚が延びていれば350カイリまでは主張できると書いてあります。沖縄トラフで海溝となっており、そこまで大陸棚であると主張ができるわけです。一方、国連海洋法条約では、二つの国が向き合っている時は話し合いで決めるとも書いてあり、日本は中間線で線引きするべきだと主張しました。それが2008年になって、「中間線が中を走る域内で共同開発をする」ことで合意しました。これは日本の主張に沿った合意です。この合意は中国国内で批判を受け「条約にするのは少し待って欲しい」と言われました。2010年に条約交渉を始めようとした直前に、中国漁船が海上保安庁の船にぶつかってきました。これを潰しに来たと思いました。そして習近平さん時代になり、この合意は反古にされると心配をしていました。しかしこの2年間で日中首脳会談が3回あり、2008年の合意が確認され、事務的な作業を加速することになりました。これは日本が持っている最大の武器の一つで、東シナ海の半分の海を平和外交で取れるのです。尖閣がありながら東シナ海の北の方でこのような合意をしているわけです。2008年の日中共同声明では、「東シナ海を平和と友好協力の海にする」と書いています。これを南シナ海にも展開していくことが日本外交の役割だと思います。平和攻勢をかけるのです。
第2節 アセアン諸国で平和外交を進める
  アセアン諸国は日本を信頼しています。2012年の信頼度調査では日本と中国は33対5でした。しかし2017年には25対14に迫ってきています。これは国によっても違います。全体としては日本を信頼しているわけですが、中国も大国で恐い存在です。貿易相手国としても重要です。したがって一番良いのは日本と中国が一定の協調関係を結び、日本に、中国が一方的に国際法違反の行動を取ることをチェックして欲しいということです。日本の立ち位置はそう悪くはないと思います。日本はアメリカとの関係がありますが、これだけには頼れません。日本の総合力というものを中心に置いて、一定の防衛力整備をしつつ、しかも外交力・平和力も使う。日米同盟関係を維持しつつも、中国との共生も図るということが重要だと思います。世界の国々は「日本はなかなか素晴らしい国だ。信頼がおける国だ」と評価しています。この「日本ブランド」を使って平和外交を進めることです。
第3節 原理原則を曲げてはならない日韓関係
  韓国については、しばらく放置しておくしかないと思います。原則を絶対曲げてはいけません。1965年の基本条約請求権協定は、国と国との合意で、約束です。「何か知恵を出して、落としどころはないのですか」という人もいますが、そういう問題ではありません。原理原則です。実は数年前の慰安婦の問題では、韓国は中国と手を組んでアメリカに「日本はこんな悪い事をしている」と訴え、成功するわけです。今回中国は日本との関係正常化を進める中で、沈黙を保っています。アメリカのトランプさんは全然そんなの知ったことではないということです。日本が言っていることは正しいわけです。色々なところへ、しっかり言っておいた方が良いと思います。今韓国で起きていることは市民革命です。彼らは「国と国との合意と言っても、1965年は朴正熙政権で、国民を代表していない。我々は正義のことを言っているのだ」と言うわけです。しかし近代国家では、国と国との約束は守らなければならないということです。中国は今短期的かもわかりませんが、日本との協調関係を模索していますので、日本が原理原則を守り、韓国を突き放しておきますと、元に戻ると思います。あまり感情的な発言は控えて、国際的には淡々と日本がやっていることは正しいと主張することだと思います。
第4節 日露関係は焦らないこと
  日露関係はロシアに足元を見られないようにということです。安倍さんは、1956年を基礎にということで、歯舞、色丹の二島ということに踏み込んだわけです。それが問題だという受け止め方もあります。しかし四島と言っていれば一生還ってこないという現実的な判断だと思います。そういうことでいえば1956年を基礎にしてというのは双方が受け入れ可能で、現実的に考え得るということだと思います。問題は2プラスアルファに出来るかということです。足元を見られれば向こうからドンドン攻め込まれますし、6月迄ということも言わない方が良いと思います。こちらが焦っているという話になると、益々ロシアは過大な要求をしてきます。しかし安倍、プーチンの間で、平和条約と北方領土の問題を片づけてもらいたいと期待しております。

おわりに
  全体としては、日本の置かれている立場は悪くないということです。今後しっかりと日本の総合力を生かした平和外交を進めていくことが重要です。今まで通りに日米同盟があればすべて良いという時代ではありません。そういう時代に入ったことを踏まえながら対応していく必要があります。日本の国際的な立場は、日本人の多くの方が思われる程弱くはありません。演じ方によっては結構強くなり得ると思います。そういう中で安倍さんという非常に発信力のある総理もおられます。是非「東アジアの平和は日本が作っていく」という思いで外交力を発揮してもらいたいと期待しております。

質疑応答
「質問1」

  韓国の文在寅政権に対し日本はどうしていくべきなのか。

「回答1」

  文在寅さんは北朝鮮との関係改善を一番重視していることは間違いないわけで、最終的には北朝鮮と連邦国家的なことを思っているのではないでしょうか。体制も経済も違いますので、少なくとも近い将来には無理だと思います。また世界は北朝鮮の核を許容するのでしょうか。日本は北朝鮮の核廃棄を確実にしていくことを重要な課題として取り組んで行かなければなりません。


「質問2」

  北朝鮮の非核化という話が、朝鮮半島の非核化と話がすり替わってきている。アメリカは北朝鮮が核保有国と認めたのでしょうか。

「回答2」

  一番のポイントはCVID、北朝鮮の核廃棄です。それがトランプさ んのやり方では必ずしもそうはならなかったのが昨年の6月です。もう一つは在韓米軍 の問題です。トランプさんは米韓軍事演習には金がかかるので、止めるという話です。 安全保障とはそんなものではないということが彼の頭の中に入っていかないのです。マ ティスさんは在韓米軍を縮小することに絶対反対という立場をとっていましたが、トラ ンプさんは全然聞きません。今は正にそういう時代にあるわけです。我々が思うほど簡 単ではないという状況だと思います。


「質問3」

  我が国が原爆を持つことは如何でしょうか。

「回答3」

  日本という国は心理的なことも含め、日本が思う以上に国際的に大きな影響力があります。どの専門家も、その気になれば一番早く核を持てるのが日本だと 思っています。それだけの技術的な能力を持ちながら日本は核を持たない。世界が核の 時代、軍備拡張の時代に入っています。日本は能力を持っているけれども、核を持たず に平和を語ると言うのが重みだと思います。


「質問4」

  外交では喧嘩別れは絶対に止めて貰いたい。後をどう続けて継続的に 国益を保って行くかは大変難しい事だと思いますが、如何でしょうか。

「回答4」

  外務省は基本的には国益しか考えていません。外交のプロフェッショ ナルに徹しろと後輩にも言って来ました。外交のプロとして「自分達は日本の為にこう しなければいけない」と政治家に自信をもって説得しなければなりません。何が国益か ということを常に問いかけてやっていると思います。


「質問5」

  イギリスがEUから離脱でもめていますが、イギリスをどのようにお 考えでしょうか。

「回答5」

  イギリスは奥深い国で、シンクタンク、メディア、金融の世界でも大きな影響力を世界に発してきました。現状は相当悲惨で、国家としての体をなさないぐ らい物事を決められない状況になっています。日本にとっても残念なことです。日本外 交から言いますと、海洋国家として日英が手を組むことはあります。期待するのはイギ リスの発信力、国際的な世論づくりの中でオピニオンリーダーとしてのイギリスの力はあると思います。人的なネットワークを活用するシステムを持っています。そこをうま く活用すべきです。


以上は、立命館大学客員教授・元外務事務次官 薮中三十二氏の講演を、國民會館が要約、編集したものです。文章の全責任は國民會館が負うものです。



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