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武藤記念講座(講演会事業)

第1060回武藤記念講座要旨

    2019年6月15日(土)
    於大阪「國民會館 武藤記念ホール」
    龍谷大学教授   
    李 相哲氏

 『どうなる? 朝鮮半島
     日本は北朝鮮・韓国とどうつきあうべきか』


セミナー





はじめに
  両親は韓国の慶州で生まれ1930年代に満州に渡りました。私は中国で生まれ、大学卒業後、中国共産党の日刊紙の記者を5年間勤め、社会主義を自ら体験しました。北朝鮮で何かが起こりますと中国での経験が頭を過ります。私は、金正日が亡くなれば朝鮮半島問題は解決に向かうと思っていましたが、彼は息子の金正恩に権力を継承することにしました。
  2011年2月、『金正日と金正恩の正体』(文芸新書)を出版し、その中で「金正日は3年以内に死ぬだろう。そして金正恩が権力を継承したらどうなるのか」ということを書きました。その年の12月、金正日が亡くなります。この本がメディアに取り上げられ、北朝鮮問題についてマスコミで解説する様になりました。ところで「金正日が3年以内に死ぬだろう」と書いたのは、2008年に彼が脳卒中で倒れ、それに関するCIAの報告書を読み、2010年には北朝鮮を訪問したクリントン元大統領に同行した主治医が「金正日は重い腎臓病に罹って、毎週腎臓透析をやっているのではないか」という記事を読んだからです。また韓国国内でも多くの人が金正日に関することを書いており、その情報に基づいて突き止めました。私は世界中の報告書や新聞の情報を突き合わせ、北朝鮮を分析・研究しております。北朝鮮問題については、その国の本質を理解して初めてわかることが多いと思います。

第一章 北朝鮮を巡る動き
第1節 金正恩とはどんな人物か
  ワシントンポストの女性記者で北京支局長を務めたアンナ・フィールドが金正恩に関し『最後の継承者』という本を書きました。その中で「金正恩は、4年間のスイス留学時代、非常に乱暴で時々同級生に唾を吹きかけ、足の膝を強く蹴る行動をしていた。授業でドイツ語が出来なくて、コンプレックスを感じていたのは間違いない。彼は開放的で開かれた世界を見ているので、北朝鮮の政治を変えるだろうという見方をする人がいるが、それは逆で、スイスでは同級生が全然大事にしてくれなかった。ところが北朝鮮では神様以上に大事にされるので、権力とは素晴らしいものだと、権力に執着している」と書いています。韓国情報院(旧KCIA)の元高官の証言では「金正恩は中学校の時から平壌にガールフレンドがいて、時々国際電話をかけるのですが、ある時彼女が金正恩にタバコを止めるように言ったところ、物凄く怒って、聞くに堪えない酷い言葉を浴びせるなど非常に情緒的に心理状態が不安定な子供だった」といいます。今世界中の人々は彼の一挙手一投足に注目し、分析しているところです。
第2節 問題のある「シンガポールの合意文書」
  2018年6月12日、シンガポールで金正恩とトランプ大統領が会って1年以上経ちました。会談以降、何の進展もありません。それは合意文書そのものに問題あると思っています。四項目の合意事項がありました。第一番目が北朝鮮とアメリカの関係改善です。今までお互いに不信感が募って関係が悪かったので関係改善しましょうというものです。二番目に新しい米朝関係を構築するということです。要するに、今アメリカと北朝鮮は戦争状態が続く中で、いつ戦いが始まってもおかしくない状況です。そこで「休戦協定」を結び、平壌にアメリカの事務所を置くことだと思います。そして三番目に「朝鮮半島の非核化をする。非核化に向けて努力する」ということです。四番目が遺骨問題です。今も朝鮮戦争で亡くなった約7,000人のアメリカ兵が行方不明です。その遺骨を探すということです。合意文書は全ての項目が問題です。特に非核化が三項目目に入っているということは大きな問題です。関係改善をして、関係構築をして、その後核を捨てるという順番になっているからです。もう一つ重要な問題は、北朝鮮は「北朝鮮の核を放棄する」と明確に言わず、朝鮮半島の非核化と言っているわけです。朝鮮半島の非核化とは韓国も核を捨てるという意味です。韓国には核兵器がありませんが、なぜ朝鮮半島の非核化と言うのか。米軍は1991年12月までに、韓国の戦術核兵器約600基を全部撤去しました。しかし米軍が韓国に駐留していれば、いつでも核兵器を持ち込めるというのが北朝鮮の言い分です。つまり米軍が撤退すれば非核化が実現するというのです。しかも朝鮮半島周辺、グアムや日本駐留の米軍も撤退して欲しいと。結果的に「核を捨てない」という意味です。朝鮮半島の非核化が何を意味するかを曖昧にしたままシンガポール会談が終わってしまったのです。
第3節 ハノイ会談は何故失敗したのか
  ハノイ会談では、北朝鮮は「核を全て捨てるつもりはなく、核施設の一部を差し出して制裁解除をしてもらいたい」という意向を示しました。北朝鮮には三つの核があると思います。過去に核弾頭を作り、核物質を抽出した施設が「過去の核」です。現在、北朝鮮は60〜65発の核弾頭をもっているとアメリカの研究機関、国防省傘下の情報機関のDIAが推定していますが、これが「現在の核」です。それから核戦力を更に高度化する「未来の核」があります。核問題が進展しないのは、非核化に関する概念が曖昧だったからです。
  シンガポール合意文書の4番目の遺骨返還問題は、アメリカ兵士の遺骨1柱、約10万ドルを請求する大きなビジネスで、核交渉とは全く関係ありません。アメリカがこの合意文書に署名したことが問題なのです。トランプ大統領やアメリカ国務省は「朝鮮半島の非核化とは北朝鮮が核を捨てるのが目的だ」と言いますが、北朝鮮は「そんなことはありえない、合意文書をちゃんと読みなさい」と言っています。ハノイ会談で北朝鮮は「寧辺にある核開発施設を全部破壊する。その代わりにアメリカは制裁を解除してほしい」と言いましたが、トランプさんは「寧辺以外に、その近くにある降仙など4〜5か所を廃棄してほしい」と言ったので、金正恩がびっくりしたわけです。「ない」と言えば嘘になる。「廃棄しない」と言えば決裂する。結局答えられなかった。そこでトランプさんは「我々と話し合う準備ができていない」と席を立つわけです。北朝鮮の崔善姫外務次官が慌てて「寧辺にある施設全部を廃棄する」というメモを持ってトランプ大統領が泊まっていたホテルに駆け付けましたが、アメリカ代表団から「その中に水爆に使われる中素実験施設も入っているのか」と言われ、また答えに窮して、戻ってしまいました。そしてトランプさんはアメリカ帰国の途につくわけです。
第4節 ハノイ会談以降の動き
  北朝鮮はハノイ会談に大きな期待をかけていました。韓国から沢山の支援が貰える。中朝国境では貿易商人達がスタンバイして、北朝鮮のビジネスが再開できると思っていました。しかし全てがだめになりました。北朝鮮はロシアのプーチンに会ったりしますが、アメリカは全く制裁緩和には応じてくれない。そこで5月4日と5月9日にミサイルを発射するわけです。このミサイルは固体燃料を使い、いつどこでも撃てるものです。核弾頭も載せられ、飛行形態も複雑でTHAADでも撃ち落とせないという非常に怖いものでした。しかしトランプさんは「それは小さなものだから、あんまり気にしない」と言います。一方で部下のジョン・ボルトンやポンペオは「これは国連制裁決議違反だ」と非難します。2006年11月の国連制裁決議では「北朝鮮は弾道ミサイル技術を使った如何なる実験もやってはならない」となっているのです。しかし今アメリカは、ベネズエラ問題、イラン問題、中国問題で大変忙しい。国連でこの話を延々としても、中国、ロシアが反対し何も導き出せない。そのため無視したと思います。しかしながら一方で、北朝鮮がミサイル発射した10分後に、アメリカは大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射しました。これは金正恩に警告する意味があったと思います。更に北朝鮮で二番目に大きな貨物船ワイズアーネスト(1万7千トン)を拿捕し、アメリカに引っ張っていくと発表しました。国連合意事項に「北朝鮮の石炭や鉄鉱石を買ってはならない」という禁止事項がありますが、この船が石炭を積んでインドネシア沖にいるところを差し押さえたわけです。普通、他国の船を差し押さえたり、拿捕したりするのは戦争行為と同じです。北朝鮮は反撃できるわけですが、アメリカに圧倒的な力があるので、抵抗できない状況です。更に同じ時期にウォール・ストリート・ジャーナルは「新しい兵器をアメリカが完成し、使っている」という詳細な記事を載せました。特定の人物を限定して殺害できる武器です。今年1月、中東のテロ組織の首謀者をこの武器で殺しています。表向きトランプさんは「急がない。金正恩はすばらしい奴だ」と言っていますが、裏ではこういうことが起こっています。どんどん金正恩の首を絞めている状況です。

第二章 韓国の動き
第1節 米韓関係がおかしくなっている
  今一番慌てているのが文在寅大統領です。彼は2年間ずっと「北朝鮮との和解、北朝鮮は本当に核を捨てる」と言ってきました。本当は見せかけだけですが、それが評価され支持率が高いわけです。しかしハノイ会談で「金正恩は核を捨てるつもりはなかった」ということが確認されました。文在寅は、今まで嘘をついていたことになるわけです。文在寅さんはハノイ会談の後「会談は失敗ではない。両者がまた早いうちに会って欲しい」と言っていました。ところがトランプさんは「急がない」と言うわけです。慌てた文氏がトランプさんに会おうとしますが、トランプさんは「時間がない」と断りました。そしたら韓国政府は、「都合のつく日を指定してほしい」と言った。そこで「4月11日なら良い」と返事した。そのようにして米朝首脳会談が実現しました。
  4月11日は、文在寅さんが大統領になって2年間準備した「臨時政府樹立100周年記念行事」の日ですが、アメリカへ飛んでいきました。北朝鮮のため、南北経済協力、開城にある工業団地の再稼働、観光事業の復活に関して、アメリカの承認を得たかったわけです。しかしトランプさんは、単独会談は2分しかしなかった。トランプさんは文氏を隣に座らせておいて記者たちとやり取りしました。「(文氏のいう)そういうことは時期的に適していない」と言うわけです。文在寅さんと二人だけで話をしますと、後に、必ず韓国が都合の良い発表をすることを知っていたからだと思います。
  後で分かったことですが、この2分間の会談を実現させるため韓国はアメリカから10兆ウォンの武器を買う約束をしたというのです。「2分間の単独会談をするために10兆ウォンの賄賂を贈った」と言われています。トランプさんが2分しか時間がないというのは嘘で、韓国に対しある種のメッセージを送っているのです。今米国と韓国の関係はよくありません。
第2節 世界で信用を失う文在寅大統領
  ハノイ会談決裂後、金正恩は「アメリカが態度を変えない限り我々は違う道を行くし、アメリカに妥協することはない」と言っています。アメリカも「核を完全かつ検証可能な方法で放棄すること。これでなければ話し合いは無駄だ」という態度を変えていません。もし金正恩が、もう少し強力なICBMあるいは衛星ロケットを発射すれば、決定的に米朝関係は崩れてしまいます。
  2017年後半、本当に戦争に踏み切る寸前までいった状態が再来する可能性もあります。文在寅さんは、もう一度トランプさんと金正恩が会って欲しいわけで、トランプさんを説得するためにアメリカに行ったと思います。先日文在寅さんはノルウェーの大学の講演で「金正恩さんと6月に合う可能性もある」と言いました。世界中の大スクープになるのですが誰も反応しません。文在寅さんは全く信用されていません。去年文在寅さんがバチカンを訪ね「ローマ法王がこの夏、北朝鮮を訪問することにした」と発表しました。しかし一週間後、ローマ法王庁は「状況が整えば行くことを考える」と全然違うことを言うわけです。また昨年「12月3日とか13日に、金正恩がソウルを訪問する」と発表しましたが、結果的に実現しませんでした。
  文在寅さんが金正恩と会いたいのは、トランプさんが日本に5月、6月と2回も来るのに、同盟国の韓国には立ち寄ることさえしなければ、韓国国民は「アメリカとの間で決定的な問題が生じているのではないか」と疑うのが心配だったでしょう。そこで韓国に是非ともトランプさんを呼びたいわけです。そしてその時金正恩とトランプさんを会わせたい。出来れば自分もそこに入りたいと思っているわけです。韓国大統領府は「そういう状況は整っている」と言っていますし、昨日のアメリカ国務省も「会談は環境的には可能性はあるのだろう」と報道しています。
  今、文在寅さんの頭には北朝鮮しかありません。日本との間で、徴用工問題、レーダー照射問題、それから慰安婦問題など様々な問題があるのに何も言いません。この政府が本当に機能しているか疑問です。徴用工問題では、去年の10月30日の判決以降、日本政府は何度も「政府間でこの問題をどうするかを話すべきだ」と言っても、韓国は話すら応じてくれないという状況です。文在寅さんが大阪のG20で安倍総理と話し合いたいと言っても、自民党や政権周辺は「文在寅と会うべきではない」という意見が根強いと思います。安倍さんと会いたいならば、文在寅さんは徴用工問題をどうするのか答えを持ってくるべきだと思います。
第3節 今の韓国の基本的な外交方針
  今韓国の基本的な外交方針は、中国に近づき、アメリカから少し離れようとする『脱米親中』です。日本に対しては兎に角『反日』です。そして北朝鮮には『従北』です。今トランプさんが韓国を訪問したら、三つくらい韓国に迫るのではないかと思います。一つは、北朝鮮の完全かつ検証可能な非核化に全面的に協力してくれと言うことです。文在寅さんは北朝鮮に経済支援をしながら上手く核を捨てさせる。飴を与えて非核化するという立場です。ところが今まで二十数年間説得し、飴を与えても北朝鮮は何もしなかったので、非核化をしたら制裁を解除するというのがアメリカの立場です。韓国と全く真逆なわけです。二つ目に、早く日韓関係を何とかしろと答えを求める筈です。
  韓国は日本を敵と見なす動きをしています。反日は北朝鮮とも共通しており、文在寅の左派政権にとって保守派を抑え込んで支持層を強化する効果があるわけです。しかしアメリカは日米韓で北朝鮮や中国に対処しようとしているわけです。日本と韓国の仲が悪いとこの三角関係がうまく機能しなくなり困るからです。そして三つ目の最も大事なことは、今米中貿易戦争で、アメリカは完璧に中国潰しにかかっています。中国を取るか、アメリカを取るか態度を示せと迫る。アメリカは「自由なインド太平洋構想」で、日本、ニュージーランド、オーストラリア、インド、シンガポールを結んで、自由な海、自由な地球をつくる戦略を進めていますがここに韓国は参加せよと求めています。いま、アメリカは北朝鮮の瀬取りを摘発するため日本とともにフランス、イギリスが加わって作戦を遂行していますが、何故か韓国だけは加わっていません。2017年5月、文在寅政権が発足しますが、その数か月後の10月、韓国は中国に三つのことをしないと約束します。一つ目が日米韓協力関係を同盟関係にはしない。二つ目が米軍の高高度ミサイル防衛システム(サード)をこれ以上追加配置しない。最後にアメリカが主導するミサイル防衛システムに韓国は参加しないということです。韓国は今益々中国に傾倒しています。アメリカはこれを食い止めようとしています。

第三章 北朝鮮の本質
第1節70年間続く恐怖政治
  トランプさんは「北朝鮮が核さえ捨てれば、この国を全面的に支援して豊かにしてあげる」といつも言っています。普通に考えれば、食べることも出来ない、お金がないのに北朝鮮はなぜ、核に執着するのかというと、それはこの国の本質に関わっています。北朝鮮が70年以上経っても崩壊しないのは、恐怖統治を70年間ずっと続けているからです。恐怖統治で象徴的なのが公開処刑です。今確認されている公開処刑場は北部だけで323ヶ所、北朝鮮全土で1,000ヶ所位あると思われます。金正恩政権は、反抗したら力で押さえつけ、脅して権力を握っているわけです。金日成時代から処刑はだんだん残酷になってきました。いまは、政治犯を処刑するとき親戚や若い人、一緒に仕事をしていた人達に見せるわけです。またそれより軽い場合は、政治犯収容所に入れるわけです。収容所は隔離され、過酷な労働を強いられます。大体30万人はいると言われています。政府機関や企業所には必ずスパイを植えておいて(秘密警察が予め雇う)、同僚や親戚、家族までを監視させ、密告するシステムを作っています。偉大な首領様に反対する気配が見えると即座に逮捕して収容所に連れて行きます。見せしめですね。
  また洗脳教育は想像を絶するものがあります。北朝鮮の教科書では、例えば「金日成はパルチザン活動で弾薬が尽きると松ぼっくりで手榴弾をつくり、葉っぱを水の上に置いて川を渡った」と書いています。また、「金正恩は3歳の時から拳銃を持ち歩き、撃ったら百発百中だった。7歳の時には平壌から二百キロ先の元山まで自分で運転していった」。普通に考えるとおかしなことを、保育園から小学校、中学校ずっと言い聞かされるわけです。北朝鮮の全ての機関に首領様の偉大性に関する教養学習室があります。ある農場では「金正恩が現地指導に訪れ、農薬の製造法を教え、それを使ったら1ヘクタールに15トンのお米ができた」と平気で書いています。それが本当なら北朝鮮は全然お米に困らないわけです。そういう方法で人々の洗脳教育をしています。また北朝鮮には、憲法の上に「10大原則(掟)」というものがあります。労働党唯一思想を確立するため「モーゼの十戒」を真似て作ったといわれています。必ず人々が守らなければならない十か条です。「首領様、金一族のために生きる。首領様、金一族の言葉は、絶対的で無条件である」というものです。
  北朝鮮には全ての家庭に金日成、金正日の肖像画が掛けられていますが、その下には忠誠箱と称するものがあって、その中には白い絹のハンカチが入っています。毎日肖像画を拭くためですが、本当に丁寧に拭いているかを検査する監察員がいます。それを怠ったら不敬罪に問われ、批判される。このように金一族を神様以上に大事にするわけです。これを破ると収容所に送る、場合によっては銃殺するわけです。北朝鮮の人達は、何にも持たない、自分の意見は言えない奴隷です。主人の言う通りにする。打たれたらそのまま我慢するということです。北朝鮮の現実は人民を完璧に飼いならしており、なかなか崩壊しないということです。
第2節 核にこだわる北朝鮮
  北朝鮮は1950年以来韓国を虎視眈々と狙ってきています。経済建設は後回しで、軍事力をつけ韓国を制圧する。そのために核にこだわるわけです。しかしアメリカがいるから実現できない。80年代まで世界の中でも北朝鮮の在来式武器はアメリカ、ロシア、中国、その次くらいに沢山の武器を持っていました。潜水艦も80隻以上持っていました。しかし今は全部使いものになりません。金正恩が政権の座についた2012年7月に大規模軍事訓練をしますが、戦車の70%が動かなかったという情報もあります。潜水艦はバッテリーを使うので14%ぐらいしか動きません。そのぐらい従来兵器は使いものにならないわけで、生物化学兵器と核兵器に頼らざるを得ない状況です。120万人の兵隊がいますが、ほとんど栄養不足の状態だといわれています。
  しかし、北朝鮮をあなどるわけにはいきません。例えば、北朝鮮の特殊部隊が韓国の空港を占領し、何らかの要求をつきつけ、要求を聞きいれなければ核兵器を使うぞ、と言えば今の文在寅は「分かった」と答えるはずです。それをさせないためアメリカは、金正恩の斬首作戦を考えています。それを北朝鮮は怖がっています。アメリカさえいなければ北朝鮮は意のまま韓国を動かすことができるのに、アメリカが邪魔なのです。だから、アメリカを朝鮮半島から追い出したがるのです。そのために北朝鮮は、核をつくり、長距離ミサイルをつくって、「我々はいつでも核爆弾をワシントンやニューヨークに落とせるぞ」と脅します。そこで、アメリカはソウルのために自分の国の領土に核爆弾が落ちるのは容認できないから、韓国から手を引くかも知れない。トランプさんは韓国から手を引く可能性についても口にしたことがあります。幸いに、アメリカ議会は「韓国に駐留する米軍を撤退するためには議会の同意を必要とする」という法律をつくりました。
第3節 テロ支援国家「北朝鮮」への対応
  北朝鮮は核を持っていない時から、拉致、テロ、暗殺等、色々なことをやってきました。今年のアメリカ国防白書でも「北朝鮮は不良国家である」と名指で批判しています。2017年12月に北朝鮮は再度「テロ支援国家」に指定されました。また北朝鮮は核をイランやシリアに拡散させる可能性もあります。実際、シリアで核施設を作り、完成間近にイスラエルが爆撃したという前例もあります。北朝鮮の生物化学兵器と核は拡散する危険性があるのでアメリカは絶対許さないはずです。
  北朝鮮から核を取り上げる方法は二つしかありません。一つは外交努力で、金正恩に心を入れ替えるように飴を与え説得する方法です。これは20年以上ずっとやって来ましたが効かなかった。北朝鮮は核がなければ、世界で一番貧しい小さな国になってしまいます。だから核を絶対捨てないわけです。もう一つは、圧力をかけることです。軍事行動をちらつかせながら圧力をかける方法です。いきなり北朝鮮を空爆したり、攻撃したりということではなく、段階を踏んでアメリカはやっていくと思います。今回北朝鮮が短距離ミサイルを発射した後、ワイズアーネス号を拿捕しましたが、これは戦争の一番初期段階ということができます。すでに海上ではアメリカが中心になって北朝鮮に対する臨検に入っており、それでも話を聞かなければ海上封鎖する。中国国境で北朝鮮に提供している石油を止めろと要求し、それでも聞かなければ軍事オプションに行く可能性は十分考えられます。しかしながら不確定要因も沢山あります。トランプさんが来年再選し更に4年間やるとなれば6年くらいの時間があります。北朝鮮と戦争に突入してしまえば他のことができなくなります。おそらくトランプさんは抑えて管理していこうと考えているでしょう。しかし北朝鮮の内部事情がそこまで我慢して、アメリカの制裁に耐えられるかといえば非常に難しい状況です。今年の年末までには、何らかの解決策をアメリカも北朝鮮も出さないとダメな状況だと思います。

おわりに
  「北朝鮮と韓国に関してこうすべきだ」と正しい答えがあるわけではありません。「これから朝鮮半島がどうなっていくのか」を見据えて皆で考える必要があります。「北朝鮮は絶対崩壊しない。20年間制裁やっても全然平気じゃないか」という人が多いのですが、しかし北朝鮮に対する国連制裁は、2017年の制裁から効果をあげています。出稼ぎ労働者を規制する。石炭と鉱物資源を売れなくする。石油を止める。北朝鮮の一般の人達はそんなに困っていませんが、困っているのは金正恩です。労働者を搾取して得ていたお金はなくなる。親父の50億の遺産も6年間でほぼ使い切った。食糧危機で一番困っているのは軍です。今北朝鮮は非常に不安定な状況になりつつあります。イエール大学の最近の研究チームの研究によれば、1964年から2008年までの間に316名の独裁者が政権の座から引きずり下ろされましたが、その中で、クーデターで失脚した割合が68%と一番高い。市民の反乱で失脚したのが11%、民主化で失脚するのが10%、外国が介入して失脚するのが5%という結果でした。おそらく北朝鮮はクーデターの可能性が一番高いと思います。今までは普通の人達が集まって話をすることは絶対禁止、移動の権利も奪っていたわけですが、今はクーデターや人民蜂起が起こる土壌ができてしまった。経済事情が困窮して、食べ物のために国中をさまよう人達がいる。自由市場が出来て10万人くらいの人々が集まる。往来も以前にくらべ自由になった。それに加え携帯電話が大体600万台普及し、4人に1人が持っている。内部で何か起こってもおかしくない状況にきていると思います。

質疑応答
「質問1」

  北朝鮮の軍隊について教えてください。

「回答1」

  北朝鮮の実態は、古い王朝的な体質、君主制とよく似ています。ただ金正恩になって労働党の位置付けが高くなり、形式的には労働党が国を支配する仕組みになっています。決議を得るようにしています。
  社会主義国の軍隊は全部党の軍隊で北朝鮮も同じです。ただ北朝鮮軍は他の国の軍と違います。120万人の中には、金一族だけを守る親衛隊があります。これは朝鮮労働党組織指導部が指揮しています。SPが500人、その外側に3,000〜5,000人ぐらいの護衛部隊があります。さらにその外側に3万人ぐらいがいて、金一族の施設を警備するそうです。
護衛部隊は約20万人いると言われています。残りの軍人たちも結局は金体制を守り支えるのが任務です。これが中国など社会主義国の軍とは違う部分です。


「質問2」

  北朝鮮の産業構造について教えてください。

「回答2」

  北朝鮮は1945年まではアジア、ヨーロッパで一番工業施設が整った国でした。 30年間の日本の植民地支配で作った重要軍需工場やセメント、重工業施設がそのまま残っていましたので、1950年の朝鮮戦争が起こる前まで、世界で経済発展速度が一番早かったです。しかし、朝鮮戦争で全てが破壊されますが、金日成は韓国に侵攻する野心を捨てず、戦後、全てを軍需工業に集中します。国民の衣食住を整えるという軽工業優先の良識派は全員粛清されました。したがって北朝鮮の産業構造は軍需産業中心で、民生関係はほとんどありません。電気も軍需工業に回され、民間には一日2時間しか供給されないと言われています。軍事費はGNPの30%と言いますが、そんなものではありません。もっと多いはずです。つまり軍主導の国家で、北朝鮮は全てを犠牲にしてミサイルと核の開発を行いました。韓国を征服すれば全て解決できると考えているからです。


「質問3」

  安倍総理大臣が「金正恩と前提条件なしに首脳会談をする」と言われました。この意味を教えてください。

「回答3」

  北朝鮮は日本と話し合いたいと思っています。しかし日本が拉致問題を解決するためには、国連制裁を無視してでも、北朝鮮に支援できる方法を見つけなけなりません。今年1月、北朝鮮船籍の船が漂流し、何人かの船員を北朝鮮に帰したことに対し北朝鮮赤十字社が日本政府に感謝の言葉を発表したことがあります。
  これは日本の反応を試すために発表をしたと思います。今回安倍総理が「条件なしに話し合う」と言うと、北朝鮮は「ずうずうしい」と発表しました。これは「条件が合えば会う」という解釈もできます。今北朝鮮と日本が話し合う可能性は二つの状況が考えられます。一つは、北朝鮮がアメリカと決定的にこじれて危険な目に合いそうなときです。多分日本に助けを求めてくるはずです。もう一つは、当然ながら核問題が解決する方向で国連制裁が緩和された場合です。しかし日本の拉致問題の完全解決は、金正恩体制ではありえないと私は思います。完全解決は金正恩以外の人が指導者になった時に初めて可能です。安倍総理は、アメリカと金正恩体制のレジーム・チェンジを考えるべきだと思います。


「質問4」

  金ファミリーは神格化されていますが、金日成が偽物であるということを 北の人はどれだけ知っているのでしょうか。
  また文在寅は「戦争時代に日本に抵抗したのは北だけで、正当性は北にある。自分達は北に吸収されても良い」と思っているのではないでしょうか。

「回答4」

  抗日戦争時代、金日成を名乗る人が5人ほどいたのは事実です。しかし、金正恩の祖父、金日成が偽物であるというのは違います。彼が若い時に抗日をやったのは確かです。彼の小さい時の名前は金成柱(キム・ソンジュ)です。当時、抗日をする人の多くが「金日成」という民族英雄の名前を使っていたので、彼も32年頃から金日成という名前を使いました。しかし、その後、北朝鮮は彼の功績を無限大に膨らませ、神話をつくったので、信じられなくなりました。今北朝鮮の歴史博物館に行くと、金日成が朝鮮人部隊を率いて130万人の関東軍を撃ち破り、祖国を解放したことになっています。しかし金日成部隊は一番多い時でも200人くらいしかいませんでした。誰が考えても嘘だと分かります。その後、彼は政権の座につき、次々と政敵を粛清していったことは事実です。
次に、文在寅さんの質問ですが、彼はそんなに崇高な人ではありません。ニューヨークタイムズは彼をスパイだと言っています。彼は戦争中に北朝鮮から韓国へ避難してきた親から生まれました。親は北朝鮮政府の幹部で、朝鮮戦争で米軍が文在寅のふるさと興南(フンナン)まで攻めていくのですが、そこに中国軍が出て来て米軍が撤退します。その時文在寅一家は米軍の撤退する船に乗って韓国に来たのです。父親は、韓国での貧しい生活に不満を持ち、子供に左翼思想を注入したのではないかと推測します。文在寅の自叙伝にも「父はいつも政府を批判していた」と書いています。
2004年、文在寅が大統領府の秘書官の時、北朝鮮でお母さんの妹に会うことになります。その時高齢者100人だけを選んで会わせたわけですが、なぜか、当時51歳の文在寅(当時は大統領府民政首席秘書官でした)が選ばれ、会ったこともない46歳の叔母(母の妹と称した)に逢っています。文在寅一家が韓国に渡った後生まれた叔母なので、本当かどうかわかりません。その時、文氏は北朝鮮に2日間も滞在しています。北朝鮮に何か目的があったと疑われても仕方ありません。本当は韓国のマスコミが追跡しなければならないことです。今の文在寅の北朝鮮に対する行為、屈従は度が過ぎています。どう考えても理解できない部分がたくさんあります。アメリカでは文在寅を金正恩のスポークスマンだと言っています。崇高な理想がある人ではないと思います。


以上は、龍谷大学教授 李 相哲氏の講演を、國民會館が要約、編集したものです。文章の全責任は國民會館が負うものです。



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