ホーム > 武藤記念講座(講演会事業)外交評論家
    石 平氏>『中国の経済・政治情勢と米中・日中関係』

武藤記念講座(講演会事業)

第1067回武藤記念講座要旨

    2019年12月7日(土)
    於大阪「國民會館 武藤記念ホール」
    外交評論家
    石平氏
 『中国の経済・政治情勢と米中・日中関係』


セミナー





はじめに
  今日は、今後の中国を見るうえで非常に重要な経済事情と、次に政治の話、最後に中国の国際戦略で、米中貿易戦争と日中関係改善という3つについて話をしたいと思います。

第一章 中国の経済
第1節 経済成長率
  国政府は今年第3四半期(7月、8月、9月)の経済成長率が6.0%であると発表しました。過去の成長率と比べ非常に低い数字です。これまでの経済成長率の推移を見ますと2010年10.4%、2011年9.3
%、2012年8.1%と、毎年少しずつ下がり続け、2016年には6.7%となりました。2017年一旦6.9%と回復しますが、これは共産党大会が開催された年だからです。2018年にはまた6.6%に下がってしまいました。今年は第1四半期6.4%、第2四半期6.2%、第3四半期6.0%です。2010年以降、経済成長率が大幅に下がっていることがわかります。しかもこれは中国共産党政権が公表した数字です。昔海外では「中国では、良い数字は大体半分、悪い数字は2倍掛けが正しい数字」と言われていましたが最近は中国の専門家も同じことを言います。政府の経済部門に多くの官僚を輩出している中国人民大学の向松祚教授は「今年に入ってから、中国企業の利益が殆どマイナス成長、国家財政収入もマイナス成長、国民所得もマイナス成長、何もかもマイナス成長なのに、経済全体の成長率だけが6.0%ということはありえない」とブログに書きました。実際の成長率はゼロ%もしくはマイナス成長になっているのです。
第2節 高度成長モデルの終焉
  中国の専門家が成長戦略を説明する時『二台の馬車』という言葉を使います。2010年までの数十年間に亘り中国の高度成長を牽引してきた二つの大きな原動力のことです。その一つが輸出で、二つ目が投資です。2010年までの経済全体の伸び率は毎年10%前後です。ところが対外輸出の伸び率は25%前後で非常に高いわけです。投資も国内の固定資産投資の伸び率は毎年25%〜30%とこれまた非常に高いわけです。問題は「消費」が拡大して来なかったということです。マクロ経済的に見れば、これまで数十年間に亘り、中国は国内の慢性的な消費不足に悩まされてきております。国の経済の中に占める国民一人一人の消費割合を示す個人消費率という指標があります。日本の個人消費率は大体60%前後です。日本経済の6割が国民の消費で支えられているということです。アメリカの個人消費率は70%です。ところが中国の個人消費率は僅か37%前後で異常に低いです。13億人の国民の消費が経済全体の4割未満で、6割以上が輸出と投資です。結論的に言えば、消費が不足している中で、中国は2010年までの数十年間に亘り輸出と投資という『二台の馬車』戦略で高度成長を引っ張ってきましたが、2010年以降の経済環境の変化の中で、このような高度成長モデルが通用しなくなったということです。対外輸出の伸び率は25%前後から最近はマイナス成長になってしまいました。税関が「今年8月、9月、10月の3カ月連続で対外輸出はマイナス成長」と公表しております。中国の対外輸出が落ちた理由の一つは労働力コストが上がったからです。昔は労働力コストが低かったからこそモノが安く作れ、世界市場で安く売れたということです。しかし2010年からインフレが始まり、毎年物価が上がり当然人件費も上がりました。その結果モノ作りの競争力が落ちて、市場をミャンマーやベトナムに奪われてしまったわけです。したがって中国の対外輸出の伸び率は落ちる一方です。しかも去年からアメリカが中国に対し制裁関税を発動し対米輸出は激減しました。その結果、対外輸出がマイナス成長となり、輸出という馬車が完全に止まったということです。またもう一台の馬車である投資も昔と比べ勢いを失っております。今年の1月〜10月までの国内の固定資産投資の伸び率は5.2%程度に落ちています。経済成長で調子に乗って不動産投資、公共事業投資をやり過ぎたため固定資産投資が飽和状態で余ってしまいました。売れ残りの不動産在庫が今6千万軒あるといわれ、真っ暗な幽霊タウンが沢山あります。当然企業の設備投資も飽和状態で投資の伸び率も落ちてしまい、『二台の馬車』は2台とも駄目になり、2010年までの高度成長が完全に終わりました。
第3節 深刻な問題を抱える中国経済
  今中国経済は、無理して成長してきたそのツケを時限爆弾として抱えております。一つは負債問題です。これまで民間企業、国有企業、地方政府は、銀行や闇金融から莫大なお金を借りて投資拡大を行ってまいりました。個人も銀行から借金し、自分の住む家以外に2軒目、3軒目のマンションを買っております。中国全体が皆莫大な借金を抱えております。政府の公表では、今年6月段階で国有企業の抱える借金は108兆元です。中国の去年のGDP(国内総生産)が90兆元ですから、国有企業の借金だけで中国の国内総生産を上回っているわけです。しかも民間企業や地方政府も借金を抱えています。向教授は「中国の全国民が抱える借金の総額は600兆元」と言っております。中国のGDPの6倍〜7倍で、日本円で9,800兆円の世界です。問題はこれから借金の返済期に入ってくるわけです。多くの民間企業が倒産し、国有企業や地方政府の不良債権を抱える銀行も破産することになります。この時限爆弾が爆発したら金融破綻の世界です。もう一つの時限爆弾は「不動産バブル」です。今上海や深?、北京や広州という大都会の不動産価格が大阪、東京をはるかに超えています。中国国民の平均所得が日本人の5分の1程度で、マンション価格が東京、大阪を超えているというのはどう考えてもバブルです。さらに中国の不動産バブルが構造的に危ないのは、普通のサラリーマンや公務員が自分の住む家以外に、借金して家を2軒、3軒買っているということです。しかし不動産価格は必ずどこかで頭打ちになります。すでに中古市場では兆候が出ており、いずれ不動産価格全体が落ちる方向に転じます。一旦落ちる方向に転じますと、中国人は一斉に売り出す行動に出ますので、一夜にして不動産価格が崩壊します。リーマンショックの2〜3倍の破壊力があるはずです。結論的に言えば、中国の高度成長は確実に終わり、不動産バブルの崩壊や巨額な負債問題という時限爆弾が爆発すると、中国経済は深刻な状況になるということです。

第二章 中国の政治情勢
第1節 習近平の独裁政権
  今中国を支配しているのは習近平政権です。習近平政権は2012年11月にスタートし、この7年間で個人独裁が急速に進んでおります。もちろんその前の胡錦涛政権、江沢民政権も共産党の一党独裁でしたが、指導部は集団的指導体制が採られていました。胡錦涛政権の時は、政治局常務委員7人(チャイナ・セブン)が相談して物事を決めていました。しかし習近平政権になってから集団的指導体制が完全に破壊され、習近平は政治、経済、軍事、外交あらゆる権限を全部一人で握っております。更に政権の中枢部は彼の幼馴染や学生時代の同級生を集めた側近政治です。確かに個人独裁はトップダウンですぐに実行できる面はありますが、そのためには独裁者本人の優れた判断力が必要です。ところが側近政治で、正しい情報はボスに集まって来ません。ボスが喜ぶ情報しか持って行かないわけですから、ボスは判断ミスをしてしまうわけです。
第2節 香港問題で行き詰る習近平政権
  香港問題で習近平政権は対応に行き詰っております。香港の抗議デモは、今年6月に起こりましたが、今になっても全然収拾できておりません。昔の共産党政権であれば1か月で全部片付けてしまったでしょう。香港抗議デモの直接の原因は、香港政府の「逃亡犯条例改正案」です。もしそれが成立すれば、香港の人々が簡単に中国大陸に引き渡される危険性があるので、市民や若者達が立ち上がって始まりました。当初の要求は「逃亡犯条例改正案の撤回」でした。6月の段階で改正案を撤回すれば、騒ぎは収まったはずです。ところが習近平が要求に応じないため、香港市民の反攻は増々広がりました。7月になりようやく問題の深刻さがわかり、香港政府トップの林鄭さんは、改正案の撤回を習近平に直談判します。それでも習近平が拒否したため市民と和解する最後のチャンスを失ったわけです。ますます騒ぎが大きくなり9月になってやっと撤回します。ところが9月には要求が5つ増えるわけです。しかし習近平は人民解放軍を派遣するという強硬手段までは踏み切れません。全部の責任を香港政府に押し付けるわけです。その結果、先月の香港の議会選挙で親中派が大敗します。実は人民日報は「香港で騒ぎを起こしているのはあくまでも一部の連中であって、大半の香港市民は共産党を支持している」と報道しており、習近平もそれを信じておりました。香港政府は「今の状況では民主派が勝つので選挙延期したらどうか」と習近平に提案しますが、彼等は「我々は勝つから選挙をやる」と強気でした。ところが蓋を開けたら完敗でした。またアメリカでは「香港人権民主法」が成立します。中国政府は「アメリカ軍艦は香港に寄港させない」と報復措置をとりますが、別にアメリカは困りません。もし軍艦が台湾に寄港すると、ますます習近平達は大変なことになってしまいます。台湾では来年1月に大統領選がありますが、蔡英文総統にとって、すごい追い風です。民進党がほぼ確実に勝つでしょう。今や中国の政治は行き詰っております。
第3節 習近平の野望
  独裁政権はトップが過ちを犯しても過ちを正す機能がありません。習近平は、何でも自分で決めてやる。信頼できる人物が周りに誰もいません。その習近平がとんでもない野望の実現に向かって邁進しています。まず一つは憲法改正です。去年3月の全国人民大会で「国家主席は10年以上勤めてはいけない」というルールを撤廃しました。習近平は永遠に国家主席をするわけです。もう一つは憲法に「習近平思想」を盛り込みました。今中国で習近平を批判すれば憲法違反です。中国の歴史上、思想を憲法に盛り込んだのは毛沢東しかいません。思想より一段格下の理論を憲法に盛り込んだのがケ小平です。しかもケ小平が亡くなった後で憲法に盛り込まれたわけです。毛沢東は今の中国を作ったカリスマ指導者であり、ケ小平は改革開放を成功させ、中国を世界第二位の経済大国に仕上げた業績があります。ところが習近平の実績は毛沢東やケ小平の足元にも及びません。7年間何をやっても失敗に終わっています。つまり習近平の政治的急務は、毛沢東やケ小平に並べるような実績を作り、自分の偉さを証明しなければならないことです。今彼にとって唯一の選択肢が外に出ることです。覇権主義で侵略を展開することです。

第三章 中国の国際戦略
第1節 民族の偉大なる復興
  習近平政権の国際戦略は『民族の偉大なる復興』が看板の政策理念となっております。中国の歴史観は、近代産業革命以前の中国は、経済力にしても、文化力にしても、技術力にしても世界ナンバーワンで、中国がアジアを支配し、周辺の国々が朝貢するという華夷秩序です。ところが近代になり西洋諸国が産業革命で経済力、技術力、軍事力をつけ、中国にアヘン戦争を仕掛ける。中国は西洋列強に打ち破られ、栄光ある地位から転落し、植民地になる寸前でした。さらに中国を苛めたのは西洋列強だけではありません。古くから論語や漢字を教えていた日本が、明治時代に入り西洋列強と一緒になって中国をさんざん苛めました。日本を絶対許せないわけです。中国人にとって、イギリスがアヘン戦争をしかけた1840年から、日本との戦争が終わった1945年までの百年余りの歴史が屈辱の歴史です。習近平の唱える『民族の復興』とは、中華民族が近代以降の屈辱を清算し、それ以前の中国の栄光ある地位を取り戻す。もう一度世界のナンバーワンになり、アジアを支配することで、まさに国際戦略として進めてきたわけです。そしてその戦略の一つが「中国製造2025」です。2025年までにAI産業やIT産業を世界一に育て今後の世界の流れをリードする。近代産業革命以前の中国の世界ナンバーワンの技術、経済力の地位を取り戻すということです。ところが問題なのは、その技術は自分達の技術開発ではなく、あらゆる手段を使ってかき集めたものです。場合によっては盗む。場合によっては引き抜くというやり方が問題なわけです。もう一つが「一帯一路」です。中国政府が中心にAIIB(アジアインフラ投資銀行)を立ち上げ、それを基軸にしてアジアとヨーロッパ、アフリカの一部を巻き込んで投資プロジェクトを展開していくわけです。道路、湾岸、空港を作り、中国の経済的影響力を強め、中国を頂点とした華夷秩序の経済版を作り上げるということです。アジアでは相手国に莫大な借金をまず貸し付け、相手が返済できなくなると、相手の利権や主権を奪い、最後に南シナ海を軍事支配するというやり方です。今南シナ海ほど重要な海域はありません。世界の貿易の半分が南シナ海を通るのです。日本だけでなくアジア諸国、環太平洋諸国は南シナ海のシーレーンを生命線として使うわけです。中国がその生命線を押えてしまえば、誰も中国に盾突くことが出来なくなります。要するに「南シナ海戦略」が成功すれば、自ずと華夷秩序が出来上がるわけです。習近平の「一帯一路」と「南シナ海戦略」はまさに表裏一体です。経済、政治、軍事でアジア支配し、「中国製造2025」で情報の世界をコントロールするという野望に習近平は燃えています。しかし習近平の野望は恐らく失敗に終わるでしょう。その理由は、全てのプロジェクトを成功させるには、中国の経済基盤が安定していなければとても成功しませんし、習近平の力量では、この戦略の推進はできないと思いますし、アメリカのトランプ政権も習近平の野望の実現を阻止すると思います。
第2節 米中関係
  アメリカで、習近平政権のアジア支配を許さないと意思表示をしたのはトランプ政権になってからではありません。すでにオバマ政権時代から始まっていました。オバマ大統領は2014年に東京で重要な演説を行いました。「リバランス戦略」です。要するに、中国の覇権主義で、アジアの軍事的、政治的バランスが崩れたので、アメリカはもう一度アジアに戻ってこのバランスを取り戻すというアジア回帰です。まさに習近平のアジア支配戦略に対する対抗戦です。しかしオバマ大統領は行動が伴わず、中国のさらなる膨張を許してしまったわけです。トランプは大統領選中、盛んに「中国の膨張をこれ以上許さない」と言いました。2017年1月、大統領就任からの1年間は、北朝鮮問題に対処してきましたが、その一番大きな意味は、米朝間の緊張を緩和させ、中国潰しに集中できるようするためでした。そして去年の夏辺りから、アメリカは全面的に中国に対し、あらゆる方面から攻撃を仕掛けました。そして7月、トランプ政権は中国に対し貿易戦争を発動しました。実は中国はアメリカとの貿易戦争に全く勝ち目がありません。理由は簡単で、一つはアメリカが今まで毎年中国から5,500億ドル分のモノを輸入しており、理論的には5,500億ドル分の中国製品に制裁関税がかけられます。一方中国は毎年アメリカから1,300億ドル分のモノしか輸入していません。習近平がいくら頑張っても1,300億ドル分の米国製品にしか制裁関税を掛けられないわけです。手持ちのカードはトランプの方が断然多いわけです。もう一つの理由は、アメリカ経済は中国経済よりも遥かに貿易戦争に強い体質です。アメリカの個人消費率は7割で、貿易に対する依存度が全然高くありません。一方中国の個人消費率は僅か37%です。貿易に対する依存度が非常に高いわけです。しかも最大貿易の相手国がまさにアメリカです。つまりアメリカが制裁関税第一弾を発動しても応戦しないことが一番賢いやり方です。中国が報復しなければ、トランプ政権は第二弾、第三弾の制裁関税の発動は出来ないわけです。ところが習近平は力もないのに強気で応戦したわけです。アメリカが制裁関税の第一弾として340億ドル分の中国製品に25%の制裁関税を発動しますと、習近平達が同じように340億ドルのアメリカ製品に25%の報復関税をかけました。当然アメリカは8月、第二弾160億ドル分の中国製品に対し25%の制裁関税をかけました。習近平はまた同じことをやり返しました。まさにトランプの望むところです。9月になるとアメリカは一気に2,000億ドル分の中国製品に対して10%の制裁関税をかけました。中国はやり返す事が出来ない。最初からわかっていることです。やっと昨年、アメリカと貿易協議が始まりました。しかし突然協議の結果をひっくり返すため、貿易戦争はますます激しくなり、アメリカの制裁関税は拡大する一方です。現時点でアメリカは2,500億ドル分の中国製品に対して25%の制裁関税をかけ、さらに1,100億ドル分の中国製品に対して15%の制裁関税にかけています。来週12月15日にはアメリカは1,600億ドル分の中国製品に対し15%又は20%の制裁関税をかける予定です。中国経済は次の制裁関税を発動されたら終わりです。だから最近は中国がアメリカの大豆や豚肉を買うわけです。トランプの支持者の多くが農家であり、農産物を買えば喜ぶという算段です。来週アメリカと中国は貿易協議の第一段階の合意を目指して頑張っています。しかし第一段階の合意が出来たとしても、貿易戦争の終息を意味するわけではありません。アメリカは新しい関税は発動しないということで、これまでかけた関税は簡単には撤回しないでしょう。もう一つ中国が望みをかけているのが、民主によるトランプ弾劾です。トランプが弾劾される、あるいは再選出来なくなれば貿易戦争が終息するのではないかということです。しかしそれは全く逆です。今アメリカ政界で中国の習近平に対して一番優しいのがトランプです。ところが他の政治家は共和党、民主党を問わず完全に反中一辺倒です。先日の「香港人権民主法」は下院、上院とも反対票は1票だけで、ほぼ全会一致で可決されました。誰が大統領になっても中国に対して優しい顔はしません。アメリカの専門家たちは、政界、シンクタンクの親中派は消えてしまったと言っております。これまでアメリカは、中国が豊かになり中産階級が大きくなれば、西側の価値観を受け入れ、穏やかな民主主義国家になると期待し、中国を支援してきました。しかし巨大化すればするほど独裁政権となり侵略的になります。アメリカ人はこの7年間で中国に対する認識が完全に変わりました。
第3節 日中関係
  習近平政権の最初の5年間は日中関係に全く関心がありませんでした。彼は5年間で、アジア諸国を一通り訪問しましたが、唯一訪問しなかったのが日本です。しかも去年までは安倍首相を中国に招待する事も一切しませんでした。彼はアメリカをひれ伏せば、日本はどうにでもなると思っていました。ところが去年から習近平政権は日本との関係改善に乗り出しました。去年5月に中国の李首相が来日し、秋には初めて安倍首相を賓客として北京に招待し首脳会談を行いました。そして来年には習近平が国賓として日本を訪問することになっております。習近平が日中関係の改善に乗り出した理由は2つあります。1つは中国の伝統的な外交戦略で、中国がアメリカと喧嘩する時は必ず日本と良い関係を作りアメリカを牽制します。逆にアメリカと良い関係になれば日本を叩くということを昔から繰り返しています。今中国はアメリカと激しい貿易戦争をやっていますので、日本との関係改善する以外に選択肢がないわけです。もう一つの理由は、「一帯一路」が全然うまくいっていません。風前の灯です。今「一帯一路」はEU諸国からの厳しく批判され、アジア諸国のあちこちらから反発が起きています。延命のためには日本企業と日本政府を引っ張り出す以外ありません。さらにアジア開発銀行(ADB)です。日本とアメリカが主導して運営してきた優良銀行で、信用度も高く実力もノウハウもあります。習近平はこのアジア開発銀行を「一帯一路」に引っ張り出したいという下心があります。中国は隣国ですから関係改善を行うことは、日本にとって一概に悪いとは言えません。しかし習近平政権と緊密になり過ぎますと、トランプからすれば裏切り行為です。絶対トランプ政権から睨まれます。日本は絶対に「一帯一路」に関わってはいけません。

結びに
  最後に、日本が国賓として習近平を迎えることには絶対反対です。習近平はウィグルで民族弾圧を行い、香港で様々な汚い事をやり、あちこちで侵略行為を行っております。それほど評判の悪い習近平を天皇陛下と会せてはいけないと思います。一旦国賓として天皇陛下がお会いになると、必ず天皇陛下の訪中を要請することになります。日本の皇室を守るため、日本の国益を守るために絶対やってはいけないことです。

質疑応答
「質問1」

  「習近平がウィグル人弾圧を指示した」との内部文書を流出させた人物は、どういう人物でしょうか。

「回答1」

  習近平に対して不満をもつ旧共産党の幹部です。普通の市民にあのような文書は手に入りません。旧共産党幹部は習近平に不満を持っている人が結構多い。理由の一つは「習近平では国が潰れる。何とかしないといけない」という正義感からです。もう一つは習近平になってから、簡単に賄賂をとれなくなり、死活問題だから習近平を潰すということです。


「質問2」

  中国は世界の覇権を握ることに失敗するということですか。また中国のバブルが弾け金融恐慌になるのはいつ頃でしょうか。

「回答2」

  習近平達の進めている「チャイナ2025」は不発に終わる可能性は高いと思います。経済そのものが駄目になれば、とてもそんなことはできません。ただし、経済が潰れ、金融恐慌で内政も外交も行き詰ると、冒険に踏み切る可能性があります。台湾や尖閣を警戒しなければなりません。なお金融破綻がいつ起こるかはわかりませんが、突然起きるというより、気がついたらそうなってしまったという可能性が大きいというのが私自身の観測です。


「質問3」

  中国の長い歴史は、分裂と統合の繰り返しです。習近平政権で共産党そのものが崩壊するか、それとも内部の権力闘争で終わるのか、どちらでしょうか。

「回答3」

  今後二つのシナリオが考えられます。一つは中国共産党政権が生存本能を発揮して習近平を潰し、もう一度体制を立て直すことで、共産党政権の延命を図るシナリオと、もう一つは、習近平がそのまま続け、中国共産党が習近平の道連れになるということです。今中国共産党政権の中で人望や力があって、習近平に代わり、この難局を乗り越える人物はいません。


「質問4」

  習近平を国賓で呼ぶのには何か裏があるのでしょうか。また、基軸通貨を元にすることを実験的にやっているということは本当ですか。

「回答4」

  中国の脅威に対し、力で対抗するのか、それとも何とか懐柔するのかということで安倍さんには考えがあるのだと思います。外交ですから、習近平と会うのも良いし、習近平を日本に招くのも良いと思いますが、唯一やっていけないのは国賓の待遇です。安倍政権の大きな汚点になります。また人民元は世界の基軸通貨ではありません。ドルが基軸通貨になったのは金の裏付けがあったからです。人民元には裏付けがなく、紙くずになる可能性が大きいわけです。


「質問5」

  アメリカはダウが史上最高値をつけている。しかし日本の株価は上海の株価に引きずられ大分落ち込んでいる。日本の経済圏はどちらかというと中国側の船に乗っ ていると思うが、これからどう対処したらよいのでしょうか。

「回答5」

  日本が中国経済の船に乗っているとは思いません。中国の株は2015年からずっと落ちたままで暴落しており、日本の株は中国の株式市場とは連動しておりません。アベノミクスが始まって以来、日本の株は結構高いと思います。また民主党政権時代の株の暴落も中国経済と全く関係ありません。日本経済は6割が内需で支えられており、貿易の依存度も高くありません。日本経済の中に占める対中輸出の割合は数%です。日本経済はそれなりに自立性があり、しっかりとした経済基盤があり、競争力もあります。中国経済が潰れても日本経済の致命傷にはならないと思います。むしろ日本にとって一番肝心なのは安全保障です。安全保障は完全にアメリカを頼りにしておりますので、アメリカとの同盟関係を堅持して、アジアの平和を守るためアジア諸国と付き合っていく。アジアは韓国、中国だけではありません。


「質問6」

  習近平が国賓として日本に来るその前に、総理大臣が靖国神社を参拝し、中国の反応を見てはどうでしょうか。

「回答6」

  私もそうして欲しいです。そのことで習近平が来日しなければ丁度良いと思います。


「質問7」

  米中は将来衝突せざるを得ない運命にあるのでしょうか。

「回答7」

  今の中国が国際戦略を変えない限り衝突は避けられないと思います。アメリカは中国の変化を期待してきましたが無理でした。あと10年したら取り返しがつかないことになります。中国は中華思想で世界を支配しないと気が済まないわけです。中華思想と独裁体制という西側社会と違う価値観をもっており、戦いは避けられないと思います。中国が世界を支配すれば悪夢です。米中の対立は文明世界と野蛮帝国の対立で、この戦いに勝つ以外にありません。当然戦争だけは避ける方向で決着をつけることが幸いですが、簡単に収束することはないというのが確実です。


以上は、外交評論家 石平氏の講演を、國民會館が要約、編集したものです。文章の全責任は國民會館が負うものです。



お問い合わせ

イベント情報や館内のご利用についてなど、お気軽にお問い合わせください。

※メールソフトが開きます

お問い合わせ