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    井上和彦氏氏 『緊迫する日本を取り巻く安全保障環境 』

武藤記念講座(講演会事業)

第1076回武藤記念講座要旨

    2020年11月21日(土)
    於大阪「國民會館 武藤記念ホール」
    ジャーナリスト
    井上 和彦氏
 『緊迫する日本を取り巻く安全保障環境 』


セミナー





はじめに
  本日は『緊迫する日本を取り巻く安全保障環境』というテーマで、今の世界情勢がどうなっているのか、また日本のメディアが報道していない情報をお話しします。さらに尖閣諸島は実際どんなところなのか、今の中国の脅威、そして菅首相が総理就任後に最初にベトナムを訪問したのは何故か、という話も皆さんにお届けしたいと思います。

第一章 自分の国は自分で守る
第1節 アメリカには二つの顔がある
  アメリカ大統領が替わる度に「尖閣は日米安保の範囲内である」と言ってもらうため、日本政府は「守ってもらえますか」とお願いを続けています。「自分の国は自分で守る」とは決して言いません。アメリカが「日本を守ることはできない」と言えばどうなるのでしょうか。同盟国とはいえアメリカを過信してはいけません。かつてアメリカにルーズベルト大統領が二人おりました。フランクリン・ルーズベルトとセオドア・ルーズベルトです。セオドア・ルーズベルトは第26代大統領(1901〜1909年)で、共和党です。彼は日露戦争で日本とロシアの講和条約締結の仲介をしてくれた親日派の大統領です。一方第32代大統領のフランクリン・ルーズベルトは民主党です。1933年から1945年まで12年間、史上初の三選を果たした大統領です。彼はヨーロッパ戦線に派兵するため中国の蒋介石と手を結び、ドイツの同盟国、日本を戦争に引きずり込みました。日米の外交交渉により戦わずにすんだかもしれません。要するに、アメリカは共和党の合衆国と、民主党の合衆国という二つの顔を持っており、これを見誤ってはいけません。親日的な共和党と、中国に権益を持つ日本を排除しようとした反日的な民主党です。日本は民主党のオバマ大統領やクリントン大統領の時もあまり良いことがありませんでした。もしや今度親中派といわれる民主党のバイデンさんが大統領になると日米関係がどのように変わるかわかりません。このような状況下、国会は日本学術会議問題でもちきりとなり、6名を任命しなかったことで大騒ぎです。菅首相は「学問の自由を許さない」などとは全く言っていません。むしろ自衛隊の装備品に対する研究を認めない日本学術会議が学問の自由を侵害しているのではないでしょうか。中国では軍民融合で技術開発を行っています。中国の千人計画で日本の親中派の研究者から技術を獲得し軍事に流用しているという疑いがあります。もしこれが本当なら日本学術会議は防衛省や自衛隊には協力せず、中国軍の近代化には貢献しているということになりませんか。
第2節 菅首相のロシア外交に期待
  ロシアのプーチン大統領が「二島返還でどうか」と菅首相に言ってきました。これまでロシアから北方領土問題を提起してきたことはないのですが、日本のメディアはこのことを全く報道しません。菅首相はいわゆる徴用工問題で「日本企業の資産を現金化するなら、たいへんなことになりますよ」と毅然とした姿勢を韓国に見せました。プーチン大統領は、「菅首相は手強いな。安倍さんはまだ温情があったが、菅さんは頑固そうだ。注意しなければならない」と思ったからではないでしょうか。これまで私はロシアを5回訪問しましたが、ロシア人は「日本は広島、長崎に原爆を落とされ、国土が焦土化したが、半世紀も経たないうちに世界一、二の経済大国、技術大国となった。その上世界一の長寿国であり、便利で豊かな国である。日本は本当に凄い国だ」と思っています。そのうえで、まったくけしからん話ですが、彼らの中には、日本が何故小さな北方領土の島を必要とするのか不思議に思っている者もいます。ロシア人は「北方領土は戦争で奪い取った自分達の領土である」と思っています。この点は少し中国と違いますね。中国のように、4千年も前から自分のものであるとは言いません。また中国とロシアの決定的な違いは、ロシアが反日教育を行っていないということです。北方領土の交渉は一筋縄ではいかないでしょうが、対ロ外交は菅首相の見せ場になると思います。
第3節 台湾有事に備える
  菅内閣の発足で、中国が最初に警戒したのが岸防衛大臣です。岸さんは政界一の親台湾派として知られているからです。なんらかのかたちで台湾との交流が始まることを期待しています。ところで2018年3月16日、トランプ大統領が『台湾旅行法』に署名しました。彼の最大の功績の一つです。これはアメリカ人が台湾に旅行できるようになるという法律などではなく、アメリカの政府要人と台湾の政府要人が相互往来ができるようにした法律で、いってみれば国交回復をにおわせています。このことを日本のメディアは全く報道しません。1979年1月、アメリカは中華人民共和国と国交を樹立し、台湾との国交を打ち切りました。しかしその時アメリカは『台湾関係法』を制定し「平和構築のため台湾に防衛用の兵器を提供し、台湾住民の安全や社会・経済制度を脅かす武力行使には適切な行動をとる」と規定しました。要は「台湾を守る」と言っているのです。1996年、中国がミサイルで台湾を威嚇しましたが、クリントン大統領はこの法律に基づき台湾海峡に空母2隻を派遣しました。今、トランプ大統領は台湾に大規模な武器売却を始めています。F16V戦闘機66機、M1A2エイブラムス戦車108両を台湾に売却し、さらに原子力潜水艦のMK48魚雷16発を持って行きました。メディアは「武器売却で戦争になる」と報道しますが、台湾がアメリカ軍と同じ兵器を共用することが、中国に対する抑止力になります。香港では民主化が抑えつけられ一国二制度が破棄されました。台湾が独立の方向に向かうのは自明の理です。
  さて極東アジアの安全保障を考えるときは地図を逆さまに見るとわかりすいです。日本列島から台湾、フィリピン、南シナ海に至る第一列島線が、中国の外洋進出を塞いでいるのです。中国海軍は第一列島線を出て、日本から小笠原諸島、アメリカ西太平洋の拠点グアムを結ぶ第二列島線の間で、アメリカ海軍を迎え撃とうと考えています。かつて日本のメディアは「中国漁船が小笠原諸島周辺で赤珊瑚を密漁している」と報じていましたが、実は中国は潜水艦を航行させるための海底地図を作るためのデータを収集していたと思われます。さらに中国は尖閣諸島を含めた防空識別圏を設けました。海南島の潜水艦基地周辺では「自分達の海だ」と言ってはばからず、東シナ海と南シナ海から核弾頭ミサイルを積んだ中国の潜水艦が、日本やアメリカを狙っています。マイク・ポンペイオ国務長官は最近「台湾は中国ではない」と発言しました。これまで日本で台湾のことを口にするのは安倍前首相ぐらいでしたが、最近では河野大臣も「台湾、尖閣有事にどう備えるか。それを考えなければいけない」と現実的なことを言っています。

第二章 自由で開かれたインド太平洋構想
第1節 日・インド物品役務相互提供協定の締結
  安倍前首相が退任前に「日・インド物品役務相互提供協定」(ACSA)を結びました。これは凄い事です。世界の時事ニュースは経済や政治の問題だけで語ろうとしても判りません。全て安全保障が関係しています。日本とインドのACSAは、自衛隊とインド軍隊との間において、物品・役務を相互に提供する枠組みを定める協定です。物品とは燃料、食糧、部品、弾薬、武器のことで、役務とは修理、輸送、医療のことです。インド軍の飛行機の燃料がなければ、日本がそれを供給する。部品がなければ日本が部品を供給する。食料や弾薬も日本が供給する。またインド軍の航空機や艦艇を自衛隊が修理できますし、インド軍の人や物資を航空自衛隊の輸送機が輸送できます。インドの兵隊が負傷すれば自衛隊が治療できるわけです。これはいってみれば“準軍事同盟”です。安倍さんが「自由で開かれたインド太平洋構想」を仕上げました。これからは日本とインドが更にお互いの連携を深めていくことが重要です。コロナで大変な時期に、アメリカ、オーストラリア、インドの外務大臣が日本で会談しました。中国の東シナ海、南シナ海進出を抑止しようとすることを狙いとする4カ国の連携は、中国に対する強烈なメッセージとなります。今インドは海洋民主主義国によるセキュリティダイヤモンド構想による「自由で開かれたインド太平洋構想」に積極的になっています。
第2節 オーストラリアや太平洋の島々で進む中国の侵攻
  オーストラリア駐日武官のハロラン大佐は「中国に対抗して、日本、アメリカ、オーストラリアが合同訓練をやるべき」と主張しています。オーストラリアは広い国土に、およそ台湾と同じくらいの約2千5百万人が住んでいます。これまでは輸入も輸出も全て中国頼みで、中国が深くオーストラリア国内に入り込んでいました。少し前に最大野党である労働党のある議員に、習近平を礼讃するスピーチをさせたりして中国による対豪政界工作が問題視されています。こうしたことに対して中国は逆切れし、対抗措置を相次いで打ち出しています。そんななか日本は4か国連携により、オーストラリアと準同盟化を進め、自衛隊はオーストラリア軍を守ることができるようになりました。ところが太平洋の島々でも恐ろしいことが着々と進んでいます。今度太平洋の重要な位置にあるソロモン諸島という小さな国が台湾と断交して中国と国交を結ぶなど、中国は南太平洋進出を着々と進めています。こうした中国の動きに対してアメリカはミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国、パラオ共和国と自由連合協定(コンパクト)を結び、中国の進出を牽制しています。こうした状況下、日本は、アメリカ、オーストラリアと共に、フィジーに対する能力構築支援を行っています。2016年、フィジーはサイクロンで人口の6割が被災しましたが、自衛隊は医療技術などの指導を行っており、米軍、オーストラリア軍も参画しています。
第3節 TPPとRCEP
  10月、日本はイギリスと日英EPA(経済連携協定)に署名しました。今後ますます日英関係は重要となってきます。TPP加盟11か国の内、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、ブルネイ、シンガポール、マレーシアの6か国は英連邦の国々です。イギリスはブレグジットでEUから脱退し一方でTPPへの参加を検討しています。EU市場が頭打ちになる中でTPPはイギリスにとってメリットがあります。TPPについてですが、当初私は「アメリカの安い米や牛肉が入る。海外から安い農産物が入ってきたら日本の農家が大変なことになる」とTPPに反対でした。ところが安全保障上の側面があることが判り、見方が全く変わりました。また日本はEU諸国と日欧EPA(経済連携協定)を結んでいます。EU離脱後のイギリスとも先に紹介した日英EPAを結びました。アメリカとの関係は言うまでもないでしょう。こうしたことから、これまで安倍前首相は日本の国益を考えた経済の枠組みを作ってきたといえるでしょう。一方で11月15日、東アジア地域包括経済連携協定(RCEP)がまとまりました。RCEPは中国、韓国という約束を守らない二か国が入っています。日本が「一帯一路は関係ない」と言いますと、中国は「自由で開かれたインド太平洋構想の文言が気に食わない」と反発。結果的には中国とそりの合わないインドは離脱しました。こうなってくると今後もRCEPの対応は非常に難しいと思います。とにかく日本は今後中国大陸へ経済的権益を求めて行くのは安全保障の観点から止めた方がよいと思います。私は、同じ自由民主主義の国インドとの連携を戦略的に考えることが重要だと考えています。こうした中でイギリスがTPPに入り、域外から自由で開かれたインド太平洋構想にも参加してくれるようなことがあれば経済的側面のみならず世界の安全保障にとっても大きなプラスとなりましょう。9月16日、ジョンソン首相は「日本をファイブ・アイズに組み込むべきだ」と言いました。「ファイブ・アイズ」とは、米国と4つの英連邦加盟国(イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)の機密情報共有の枠組みです。いわばアングロサクソンの同盟で、これはまさしく第一次世界大戦の時のフォーメーションです。本来これが日本のトップ・ニュースにならなければなりません。もちろんそのためにはスパイ防止法などの機密情報保護の法整備も必要となってくるのはいうまでもありません。
第三章 尖閣諸島を守る
第1節 300日を超える中国公船の侵入
  中国公船の尖閣侵入が年間300日を超えています。日本政府は「遺憾である」としか言いません。中国は日本を完全に舐めきっています。中国は海警の日本船舶に対する武器使用を許可しました。日本の漁船に武器を使ってもよいと決めたにもかかわらず、日本政府は何もできません。中国は、孫氏の兵法「戦わずして勝つ」という戦術を使い、「文攻武嚇」で日本を口撃し、威嚇しているのです。石垣島から魚釣島まで170km、船で6〜8時間の距離です。中国最短部からはその倍の約340kmで、等価単純計算すれば漁船の燃料代は倍かかります。魚釣島は予想以上に大きい島で、面積が3.82km2、海岸線は111kmあり、最高標高の奈良原岳が363mで、頂上は温度も違います。竹島の約20倍の大きさです。船で一周するのには、かなりの時間がかかります。たいへん大きな島で、昔は多くの人が住んでいたことが納得できます。ところが今は、島の1マイル以内に近付けません。岩礁には海鳥が群れを成しており、南小島には平地があります。海上自衛隊が運用している救難飛行艇US2を離発着できるようにすれば、大しけで漁船が難破した時に人命救助ができます。また北小島には人が住んだ形跡があります。鰹が獲れましたので缶詰工場があったようです。もう一つ注目したいのが久場島です。島は東京ドーム約10倍の大きさで、なだらかな地形で開発の余地があります。ここは米軍の射爆場で国有化の対象外でした。1978年、米中の国交が回復すると、中国を刺激しないように、米軍が使わなくなりました。メディアは「あんなところに人が行けば中国を刺激する」と報道しますが、刺激しているのは中国です。
第2節 海上保安庁の強化が必要
  海上保安庁には管区海上保安本部が11あり、尖閣諸島には14隻の尖閣専従部隊がいます。尖閣諸島で海上保安庁が向き合っている中国の海警は、中国版の海上保安庁ではありません。海警はこれまで中国政府の国務院国土資源部、国家海洋局に属し、公安部の指導下にありました。ところが2018年、軍事組織の中央軍事委員会の傘下に移りました。つまり人民解放軍と同じ“軍隊”といってもいいでしょう。この軍隊と日本の海の警察が向き合っているわけです。海警の「31239」という武装公船は、実は2015年に海軍から移管された船で、主砲と対艦ミサイルを取り除いただけの元海軍の軍艦です。また海警に二隻ある「2901」は世界最大の12千トンの船で、日本のイージス艦よりも大きい船です。軍艦ではないと言っていますが、76ミリ速射砲は、海上自衛隊の護衛艦の主砲と同じです。しかし、尖閣諸島の現状をメディアは全く報道しません。海上保安庁は40ミリ機関砲を持つ「れいめい型巡視船」を作っていますが、76ミリ砲とは威力がちがいます。また「軍艦構造」の船は、魚雷が当たっても全部が浸水しないようダメージコントロールされた大丈夫な造りになっています。更に装甲もあり戦闘に適しています。長期航海も可能です。ところが海上保安庁の船はいわゆる「商船構造」で軍艦と戦うようには作られていません。海上保安庁の年間予算は2,250億円で、およそアメリカの最新鋭イージス艦1隻分の予算です。14,328人の人員は海上自衛隊の三分の一です。それで海の警察の役割を全て担っていますが、中国とは比べ物にならないくらい非力です。さらにもう一つの問題が少子化です。自衛隊や海上保安庁の募集対象人口がどんどん減っています。一方で、海上自衛隊の定年はたとえば1佐(大佐)が57歳、下士官が53歳です。まだ働き盛りで勿体ない。また海上自衛隊の護衛艦の艦齢はおよそ30年で、「はつゆき型護衛艦」なども除籍が進んでいます。はつゆき型護衛艦には中国海警局の武装公船と同じ76ミリ砲を積んでいます。そこで艦齢がきて退役する護衛艦と早期退職する自衛官をセットにして海上保安庁に再就職してもらうことで、人員の有効活用と対処能力の向上が図れます。さらに今海上保安庁は潜水艦に対する対処能力がありませんが、護衛艦は潜水艦を攻撃する能力もあり、水上艦艇にも、航空機にもマルチで対応できます。
第3節 一刻も早く中国に備えるべき
  中国は尖閣諸島の領空侵犯で水上に注目を集め、潜水艦で送り込まれた水中工作員を使って奈良原岳の頂上に五星紅旗を掲げることが今後想定されます。そうなると、日本はお手上げとなるでしょう。ところがすでに平成30年に尖閣接続水域に中国潜水艦が来ていたことが産経新聞で報じられていります。また日本海の大和堆では中国の密漁が4倍に増えているという許しがたい状況にあります。これ以上無関心を続け彼らの横暴を放置すれば取り返しのつかないことになります。だからこそ我々は国土について関心を持つべきなのです。たとえば領海は基線から12海里(約22キロメートル)までの海域、接続水域はその2倍の24海里(約44キロメートル)、EEZとよばれる排他的経済水域は200海里(約370キロメートル)で、経済活動を優先的に行うことができる主権の及ぶところです。領空は領海の上です。今中国が領空侵犯するというのは、ほんの目の前に中国機が来ているということです。航空自衛隊の戦闘機が緊急発進し、中国語で「このままいくと日本の領空に入る。ただちに引き返しなさい」と警告を出し、Uターンさせています。今こんなことが頻繁に起こっているのに、メディアは「桜を見る会」や「日本学術会議」しか興味がないようです。

第四章 ベトナムとの連携強化
第1節 親日国家、ベトナム
  菅首相は第二次安倍政権同様に最初の訪問国としてベトナムを選びました。ベトナムは共産党一党独裁の社会主義国ですが、日本の安全保障にとってたいへん重要な国なのです。首都ハノイの先に、中国の潜水艦基地がある海南島があり、中国から見るとベトナムは厄介な存在となります。日本のベトナムとの連携は中国に対する戦略外交でもあります。
  かつて平成29年に天皇・皇后両陛下がベトナムを行幸啓され、ベトナムの人々から大歓声を受けたのですが、ベトナム人留学生に「日本の何が素晴らしいですか」と聞いたところ「天皇・皇后両陛下がおいでになることです」と両陛下に尊敬の念を持ってくれたことに感激しました。とにかくベトナム人はたいへん親日的で、かつ勤勉です。安全保障上のつながりもあり、日本はベトナム軍に対して能力構築支援を実施しております。ベトナム軍に対し、自衛隊は潜水医学、航空救難、不発弾処理、サイバー戦などを教え、またPKOについても教えています。また政府開発援助もさかんにおこなわれており、日本はベトナムの最大のODA支援国なのです。
第2節 日本はベトナムと歴史的つながりがある
  日本とベトナムの交流の歴史は日露戦争に遡ります。日露戦争で日本が勝利した時、ベトナム人は「同じ東洋人が、白人を打ち倒した」と喜びました。ファン・ボイ・チャウやファン・チュー・チンは日本へ密出国し、日本の近代化、明治維新を一生懸命学びます。当時ベトナムでは「日本に学べ」という「東遊運動」が起こり、多くのベトナム人が日本にやってきたのですが、その時面倒をみた一人が福澤諭吉です。そうしたことから1907年には慶應義塾を参考に、ハノイに東京義塾が作られ、続いて梅林義塾、玉川義塾なども作られました。まさにマレーシアのマハティール首相の「ルック・イースト」の原型といえるものです。東南アジアやベトナムの人が勤勉なのはこうした理由からでしょう。今もファン・ボイ・チャウやファン・チュー・チンはサイゴンの通りの名前として残っています。またイギリスの歴史家クリストファーソンは、1940年に日本軍が仏印進攻した時「欧米帝国主義諸国にとって、15世紀末のバスコ・ダ・ガマで始まったヨーロッパ人によるアジア支配に、初めて亀裂を入れるショッキングなできごとだった」と書いています。大東亜戦争末期には、日本が戦争に負けることが濃厚になった時「日本が負けてしまえばベトナムの独立はもうない。フランス人がまた帰ってきてこのベトナムを支配するであろう。だから我々がここからフランスを追い出す」と日本の安機関が動きフランス総督を逮捕するなどしてベトナムを独立に導きます。戦後、復員を拒否した日本兵およそ600名がベトナムに残留し、ベトナムの独立のために戦いました。さらにホー・チ・ミンにお願いされ、クァンガイにベトナム初の陸軍士官学校を作り、日本軍の戦術をベトナム人に教えました。ところで日本とベトナムは“元寇”という歴史を共有していることをご存じでしょうか。最初に元寇があったのは1258年のベトナムでした。次に元は1274年の「弘安の役」、1281年の「文永の役」と日本を襲いましたが神風が吹いて日本征服は失敗に終わります。その後再びベトナムに来寇しますが2度敗れ、ついに元軍は海に出ることをあきらめたのでした。こうした歴史認識は日越連携のためには大事です。ベトナムの戦略的位置、ベトナム人が日本にもつ憧れ、明治期の日本人の素晴らしさ、日本の教育など、これまでの歴史を大事にしながら今も日本はベトナムと連携を続けています。
第3節 ASEAN諸国への能力支援活動
  防衛省は各国に対して能力構築支援を行っています。ASEAN諸国をはじめモンゴル、カザフスタン、ウズベキスタンにまで及んでいます。中国の周辺の国にしっかりと布石を打っています。日本が安保法制を閣議決定したとき、ベトナム、ラオス、カンボジア、フィリピン、マレーシア、ミャンマーなどすべての東南アジア諸国が歓迎の意を表明しました。大東亜戦争で戦場となった現在のASEAN諸国は、歴史を大局的な視点で見ています。ASEANの旗が日の丸に酷似しているのをご存じですか。日本防衛装備品や技術をASEANやインドに移転させることは日本の安全保障に大きく貢献します。安倍前首相が作った「自由で開かれたインド太平洋構想」という枠組みを、菅首相には堅固なものにしていただきたいものです。

おわりに
  私は今産経新聞の「産経ワールドビュー」という番組をユーチューブで放送していますので、是非ともご覧いただければと思います。この番組を通じて日本の誇りある歴史を後世に伝えていくために頑張っております。日本は素晴らしい国であり、後世の子や孫にこのことを伝えていくことが、今を生きる我々の使命です。皆さんと一緒に、これからの日本を考えていければと思います。

                                                  

以上は、ジャーナリストの井上和彦氏の講演を、國民會館が要約、編集したものです。文章の全責任は國民會館が負うものです。



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