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武藤会長「金言」

2018年5月29日 金言(第70号)
『放送法の改正に物申す』

■はじめに

  最近あまり見かけなくなったが、4月16日に政府の規制改革推進会議(議長・大田弘子政策研究大学院大学教授)は、放送制度のあり方について、初めて具体的な検討課題を示した。実は、今年に入ってから番組の「政治的公平」等を定めた放送法第4条の撤廃が水面下で検討されてきたが、具体的に明示されることはなかった。しかし、このところ政権では不祥事が続出して逆風に晒される中、表立っての議論を差し控えざるを得なかったのであるが、推進会議は6月3日を目途に最終答申を取りまとめる予定である。被害を被ると考えている民間放送では、警戒の念を強めているところである。

■第一章「放送法の見直し」

第1節「放送法第4条の撤廃」
  そもそも3月の末頃から安倍首相の肝入りで放送法の規制改革の議論が本格化したのであったが、その前から1月の首相の施政方針演説や、政府の「未来投資会議」で立て続けに政府は、放送法の大胆な見直しを宣言していた。しかし、この時点ではまだ目指す方向が具体的に現れてはいなかった。しかし、3月に入って首相が日本テレビの社長と会見したこの席上、首相は放送法第4条の撤廃を示唆した模様である。
第2節「放送法第4条の内容」
  ここで、放送法第4条とは何かを振り返っておきたい。一般にはなじみが薄いが、そもそも放送法第4条は、次の通りとなっている。すなわち放送事業者は、国内放送及び国外放送(以下「国内放送等」という)の放送番組の編集に当たっては、次の各号に定めるところによらなければならないとなっている。
  • 1.公安及び善良な風俗を害しないこと。
  • 2.政治的に公平であること。
  • 3.報道は事実を曲げないですること。
  • 4.意見が対立している問題については出来るだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
  • 第3節「放送法第4条を巡る争い」
      実はこの法律が法的規範(法律上の義務を生じるルール)なのか、そうではなく、倫理規定(単なる道徳上の努力義務しか生じないルール)なのかについては長年にわたって争いになっている。従来から為政者の側は、前者だと云っており、放送や憲法学会の通説は後者だと主張している。何故法的規範か倫理規定かが問題視されるのかと云えば総理大臣が、放送局に電波法の電波停止や放送法の業務停止を命じることができるのは放送会社が「法律違反」した場合であるとの規定があり、もし放送法第4条の規定が倫理規定なら放送会社に法的な義務を負わせるものではないので、法的な義務違反は生じない。しかしながらこの放送法第4条は政府の側からは法的義務を負うものとして、政治が放送に介入する口実になってきたのは事実である。

    ■第二章「放送制度改革の概要」

    第1節「政府の目論見」
      従って、第4条を撤廃して「政治的に公平であること」がなくなれば、放送業界においては「政治からの介入」から解放されるから、この改正を放送業界は受け入れると考えたふしがある。そのような事を踏まえて、安倍首相をはじめとする政府が乗り出したのが、放送制度改革である。今年2月「国民の共有財産」である電波を有効利用するため、「周波数の割り当て方法や、放送事業のあり方の大胆な見直しが必要」と強調し、その後に改革に向けた協議が本格化したのであった。これは端的に云うならば放送と通信の垣根を取りはずすことである。
    第2節「制度改革への反応」
      これに対して民放各社は、「民放事業者が不要だと云っているに等しく容認できない。強く反対したい。」などと反発を強めていた。放送の所管者である野田総務相も「放送法第4条がなくなれば、公序良俗を害するような番組や、事実に基づかない報道が増加する可能性がある」と述べており、政府内にも慎重な声がある。前述の規制改革推進委員会は、改革案を取りまとめ、6月にも安倍首相に答申することになっている。早ければ今秋の臨時国会に法案を提出して、2020年以降に施行する方針と聞いている。

    ■第三章「改革案の問題点」

    第1節「損なわれる放送の信頼性」
      一応建前はこのような道筋になっているが、実際に政府が検討する改革案の内容は、先ず放送番組の「政治的公平」などを定める放送法を撤廃してテレビやラジオなどの放送事業と、インターネットなどの通信事業で異なっている規制を一本化する。これは放送分野への新規参入を促進することを目的とするものであるが、政治的に偏った番組が放送されることが懸念される。放送法第4条は先に述べたように放送業者に番組作りの原則として・政治的公平・公序良俗・正確な報道・多角的な論点の提示、の4項目を求めているが、改革案はこれに加えて娯楽や教養など番組内容のバランスを保つ「番組調和原則」、放送会社への外資の出資比率を制限する「外資規制」などの規制を撤廃するとうたっている。この結果、放送事業に通信事業者と同様に番組内容に関する基準が無くなることになる。さらに報道番組の制作などのソフト事業と、放送設備の管理などのハード事業の分離を徹底する。一方NHKについては規制を維持して、公共報道の役割をはたす事を重視して、民放とはっきりと区別する。又、NHKには番組のネット常時同時配信を認める。しかし、通信(インターネット)と放送の融合は世界的な流れかもしれないが、規制のレベルを自由にするということが、放送の信頼性を損ねると思うのであるがどうであろうか。私が考えるに、首相の考えは現在の放送はNHKを含めて余りにも偏向しており、それに制限を加える意図があると思われる。また、現在の放送法4条は、誰が何と云おうと倫理規定ではなく法的規範である。従って放送法4条に定められている規定は、放送業者は必ず守るべきものと考える。
    第2節「ないがしろにされる放送の公共性」
      それでは規制推進会議がどのような議論をしているかであるが、要するにインターネット動画配信サービスが急速に普及して、若者を中心に急速に「テレビ離れ」が進む中、通信と放送を巡る環境が激変している事に鑑み、首相周辺が考えている原案では、ネットと放送の規制を一本化して新規参入を促すことが狙いとされている。首相の本音は、民放を対象に4条以外の放送特有の法規制を全廃して上述のようにネットと放送の規制を一本化することにあり、もしその通りになるならば、「NHKを除く放送は基本的に不要になる」としていたため、民放側は強く反発しているのである。このような改革案については与党を含めて種々の反対論がある。民間放送は、当然「産業振興の一面だけで放送のあり方を議論して国民の知る権利に応える公共的な役割をないがしろにするこのような政策は、国民、視聴者の利益にならない」と猛反対している。「仮に4条が撤廃されネット業者が参入した場合、極端な番組やフェイク(偽)ニュースの横行のおそれがある。」「一定の倫理規範がある放送では表に出なかったが、公共性のない言説が、巷にあふれる危険性がある」などの主張が述べられている。仮に4条が、放送局が自主的に守るべき倫理規定だったとしても(私はそうは思わないが)「番組の一定の質を保つ土台」になってきたと、民放幹部は述べている。一方放送と通信が融合する時代に合わせた規制改革は、放送業界にビジネスチャンスをもたらすとの考えもある。しかし、公共性が問われる放送、通信やネットと同様のビジネス基盤で捉えることには疑問の声が強い。現実問題として、米国では、かつて放送局に対して、賛否両論がある問題の報道については双方を公平に扱うことを求めたフェアネスドクトリン(公平原則)が存在したが、1987年に撤廃されたのである。その結果、その後いろいろな弊害が生じており、最近ではトランプ大統領の応援団的放送局まで現れる始末で、反省の機運がある事も事実である。
    第3節「危惧される公平性や安全保障上の問題」
      さて、放送制度の改革をめぐっては先にもふれたが政府内では放送法4条の撤廃のほか、放送局への外資出資規制や、番組を制作するソフト部門と放送設備を管理するハード部門の分離を徹底する案が検討されていた。これについても「公平性を欠いたり、公序良俗を害する番組の増加」を懸念する識者の声が大きい。これらの事を云いかえると「公平性」を有している現在の放送局は不要と官邸は思っているのではないか。すなわち社会的責任に基づいた報道が喪失することにつながる。首相には政治が放送局に干渉力を強めてメディアのコントロールをターゲットにしているといわれても仕方があるまい。このほか電波の利用権を競争入札にかける「電波オークション」の導入も検討されている模様である。政権に「恭順」の姿勢を示す事業者にのみ電波を差し上げましょうとの考えが見え見えではないか。これは一見自由競争のように見えるが、オークションへの参加者は政府が恣意的に決められるから、政府の意に沿う業者のみが選ばれるからである。放送設備を管理するハード事業者と番組を制作するソフト事業者の分離の徹底も、多大な経費がかかる放送設備を持たないネット事業者などが、制作に参入しやすくするのが目的である。しかし現状のテレビ局のようなハードとソフトの一体化した事業者でないと緊急時の連携に混乱が生じ「速報ができずに被害者の避難や生命に危険が及ぶ」との強い反対論がある。又、前に戻るが放送局への外資規制の廃止が盛り込まれているのは大問題である。放送法の規定では海外資本による国内の報道機関の支配を防ぐため、外資の出資比率を20%未満に制限しているが、当然政府、自民党内からも、もし規制を撤廃すれば中国企業などからの出資が増え、安全保障上の問題に発展するとの危惧の念が出ている。首相の考える改革案はNHKだけに現行制度を維持し、番組のネット常時同時配信も認める考えであり、民放からは「国会での予算承認など政権が影響力を行使しやすいNHKは保護する一方、民放を事実上解体する案である」と非難が高まっている。
    第4節「民放の更なる弱体化を招く危険」
      もう一つ政権の改革の背景にあるのは、世界規模で進む通信と放送の融合という大きな流れと、日本のコンテンツ産業に対する危機感であると思う。お聞き及びと思うが、アメリカにおいてはネットフリックスなどの動画がどんどん成長する中で、日本の放送局での伸びはわずかである。それだけに今後我が国の放送コンテンツ産業は成長余地が大きく、日本の強みとして海外にも売り込みたいとの政府の意気込みが感じられる。そのためハードとコンテンツ制作のソフトの分離を強化して、コンテンツの競争原理を導入して、その強化を図る事が政府の意図なのであろう。さて、現在のラジオ、テレビについて読者はどう考えているか。なるほどNHKには左傾化した番組も多く最近は少しましになったが、朝日新聞をしのぐ問題番組がある。しかし、そうは云っても番組の根幹は、問題はあるがしっかりとしている。それに引き替え民放はどうであろうか。私事ながら民放で見る番組は私にとって野球放送などスポーツ番組と、一部の放送以外見るべきものはない。毎日放送されるバラエティー番組の程度の低さには辟易するところである。そんなところに放送法第4条が撤廃されるとどうなるか、「通信と放送の融合」のキャッチフレーズのもとに、民放は驚くような陳腐、醜悪なものとなるであろう。放送法第3条は放送内容に対する外部からの介入を禁じているのであるが、放送法の規制レベルに合わせた時どうなるか、ネットに合わせて規制を比較的自由にした場合、権力が放送内容に対して介入してくる危険があるのではないか。

    ■おわりに

      今回安倍首相は放送法の改正にいささか前のめりになり過ぎていると思うのは私だけではあるまい。複数の識者の間では今回の改革方針は、憲法改正をテレビに邪魔されないためで、安倍首相の牽制ではないかとの観測も出ている。アメリカにおける失敗例もあるのであるから、この問題についてはもう少し慎重に進めてほしいと強く望むものである。6月に出てくる規制改革推進会議がどのような案を出してくるかが大いに注目させるところである。
                                                                                                                                   以上
      皆様の忌憚のない御感想、御意見をお待ちしております。

                                                   ( 本稿は武藤治太会長の書下ろしです。)

    2018年4月27日 金言(第69号)
    『国家にとって何が一番大切なのか』

    ■はじめに

      最近の国会の姿について私は大変残念に思っている。何故なら国会は国権の最高機関であり、国民にとって現在一番大切な事を論議する場所にもかかわらず、昨年来からの森友学園の問題に始まり同問題に関する財務省の公文書改ざん、値引きの正当性、さらに学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画に関する「首相案件」の疑惑、そして存在を否定していたイラク派遣部隊の日報が発見された事など、これらを材料に野党は重要法案の審議を放り出して、予算委員会はただただ安倍首相の責任追及にうつつを抜かしている。一方朝日新聞をはじめとするマスコミはこれを材料に倒閣運動の片棒をかついでいるのはどう見ても異常としか思えない。私が思うにこれらの行動は全く民主主義のはき違えとしか思えない。

    ■第一章「毎日新聞コラム「風知草」の紹介」

    第1節「正念場の日本外交」
      さて、毎日新聞に月数回、山田孝男氏の「風知草」というコラムがあって、私は毎号楽しみにしている。この欄は左傾の朝日新聞に追随する毎日新聞の論調にしては可成りまともなものである。その4月2日の号で概略次のように述べているので紹介の上、論評を加えたい。
      いわく「麻生財務大臣がTPPの問題より森友の方が重大だと考える日本の新聞のレベルを批判しているが、この考えは国際関係が激しく揺れ動く中、その中にあって特異な意見だとは思わない。ただその言い方が軽口なら不信感を広げ、世論の分裂が対外交渉力をそぐ。そこに気がついていない鈍感さに危惧の念を持つ。森友疑惑が再燃した今日、世界の状勢を見るならば、まさに国際鳴動の春である。日本中が注目した国会喚問の陰で、中朝が電撃的に首脳会談に進み、また韓国と北朝鮮の会談も近々行われる。さらにアメリカと北朝鮮との直接会談も実現の運びとなった。御承知のように韓国は中朝に寄り、米国の孤立化と不安定化は進む。我が国を取り巻く諸国はロシアを含めて核保有国ばかりである。北朝鮮は表向き「非核化」を言うが、実は核を手離さない三枚舌であることは周知の通りである。東アジアには「冷戦後」の常識を超える歴史の大波が押し寄せている事は間違いない。その意味で今は日本外交にとって正念場であり森友どころではないという声が出ても決しておかしくない。
    第2節「国内世論を巻き込んだ外交が重要」
      しかし、その反面外交は国内世論と懸け離れては成り立つものではない。外交論の権威モーゲンソーは、「純粋な国内問題はもはや存在していない」とすでに半世紀前に断じている。まして今日の情報化、グローバル化時代においては、同じくモーゲンソーの「他国にわかりやすい、ある国の国内の失敗はその国の力を減少させる」が、現在の日本に当てはまる。独裁国家なら暴力や脅迫により政権批判をつぶすが、民主主義の日本政府は対話と説得により批判に向き合わなければならない。
    第3節「森友疑惑は「官僚のゴマスリと国会軽視」」
      森友疑惑は昨年来、国有地の賃貸・売却に関し、不正、情実があったかが問われ続けたが、なお未解明なものがあるものの、国会論戦や報道を通じてどうやら政治家や役人にワイロが渡ったわけでないようだという心証が形成された。その結果昨年秋の総選挙で自民党が大勝した背景の一端だと考えられる。然し、疑惑が再燃した今度の論点は公文書の改ざんである。議論を通じて見えてきたものは、官邸主導体制に巣くう官僚のゴマスリと国会軽視であった。国会は国民の代表の集まりである。首相は国会が決める。その首相が内閣を組織する。その内閣を支える官僚が国会を欺いた。憲法に忠実であるべき官僚が何故国民主権を軽んじたのか?そこが先般行われた国会証人喚問の焦点だった。財務省理財局長だった証人は訴追の恐れを盾に核心の証言を避けたが、状況から推測しえるシナリオは、
  • @証人が改ざんを指示
  • A部下が証人の意図を忖度して改ざんし、証人が追認した
  • とする見方である。
      「首相官邸」の要請で改ざんした可能性もゼロではないが、そこは証人が偽証罪に問われるリスクを承知して否定している。検察が捜査中であるが改ざんによる具体的な被害の立証は難しく、訴追は微妙とささやかれている
    。それでも捜査資料などにより真相は見えてくるであろう。野党は首相夫人の証人喚問を求め、与党は拒否して攻防はゲーム化し、国会論戦は不毛極まる。首相の側から首相夫人の説明機会を工夫することを改めて提案する
    。たかが森友ではない。

    ■第二章「「風知草」に対する論評」

    第1節「内閣人事局が誕生した背景」
      以上が「風知草」の内容であるが、筆者の結論は上に書いたように「たかが森友ではない」である。そうであろうか?たしかに次から次へと出てくる、無いと云われていた公文書の出現や、官僚の隠蔽や忖度は目に余るものであるが、何故官僚がこのような状態におちいったのかに言及すると、これは2014年に誕生した内閣人事局に源がある。従来各省の事務次官を頂点とする一般職国家公務員(いわゆる事務方)の人事については事務方の独立性と非政治性に配慮して政治家が介入する事は控えられてきた。しかし各省の人事が全て事務方に牛耳られては政治家は官僚の言いなりになってしまい、又縦割り行政の弊害も大きくなってしまうので、各省の幹部人事については、内閣総理大臣を中心とする内閣が一括して行い、政治主導による行政運営を目指す構想がはかられ、
  • @幹部職員人事の一元管理
  • A全政府的観点に立った国家公務員人事の推進
  • B行政機関の機構や定員管理
  • などを目的に内閣人事局が生まれたのであった。
    第2節「内閣人事局の弊害」
      人事局は幹部600名の人事を決める。しかしながら一つの考え方としては妥当なものであったかもしれないが、このように内閣の人事に及ぼす影響が強くなると、どうしても官僚の目は必要以上に内閣に向くことになってしまう。このような弊害の発生について予想されていたところであるが、今回の文書の改ざん、忖度はこれが如実に現れたものと云える。たしかにこの財務省の改ざんに加えて存在しないはずのイラク派遣陸上自衛隊日報の出現、厚生労働省の「是正勧告」発言など官僚組織のゆるみは目に余るものである。
    第3節「野党とマスコミの偏向した世論形成を危惧」
      従ってこれらの真相究明には十分に力をつくすべき事はいうまでもない。森友の問題については大体次のように論じられている。「財務省の中で森友学園に対する国有地払い下げ問題に関する決裁文書が書き換えられた。財務官僚と云えばエリート中のエリートであり、そのような集団に属する人達が事を運ぶには慎重にも慎重を期する筈である。とすればここに強力な政治的な圧力がかかったのではないか。それだけの権力を持つものは官邸か財務大臣しかいない。それにもかかわらず前理財局長の佐川宣寿一人に責任を負わせ幕引きをはかろうとしている」といったところが野党の主張であり、こういった筋書きによりテレビのワイドショーや報道番組を含めたメディアの大半が動いている。一般大衆は頭からこれを信じ込んで、世論はその方向に誘導されつつある。しかし現在確かなことは、財務省の内部文書に改ざんを加えたことだけが明白な事実であり、佐川前理財局長ははっきりと官邸の関与を否定しており、現在検察がこの森友問題を捜査している。新聞の情報によると何も出てきていない模様である。しかし官邸が森友学園に関与したり文書の書き換えを指示したりという有力な証拠が出るならば、当然徹底的追及がなされるべきであろう。現時点でははっきりとした証拠が明らかになっていないにもかかわらず、野党は財務省も官邸も「真相」をひた隠しにしていると主張しており、多くのメディアが同調して間違ったとは云わないが、偏向された世論が形成されているのではないかと危惧するものである。然しここが怖いところで、連日テレビに映し出される予算委員会の審議や、新聞その他マスコミにより安倍内閣は間違っているというイメージが形成され、一気に内閣の支持率低下という現実が突きつけられている。

    ■第三章「国会は国家の諸問題を大いに議論すべし」

    第1節「我々を取り巻く状況はまさに国難」
      我々が残念に思うのは、そうだからと云って内外に存在する我が国の諸問題についてほったらかしにして国会の予算委員会において連日この問題にうつつをぬかすのはいい加減にしてほしい。我々を取り巻く状況はまさに国難と云ってよいと思う。中国は北朝鮮とよりを戻したが、先にもふれたように東アジアの我々に関係の深い中国、北朝鮮、ロシアはいずれも核保有国である。それに対する備えは余りにもおそまつなのではないか。核攻撃に対する我が国の備えは全てアメリカ軍頼みであり、仮に核攻撃があった場合、どのように対処するのか、例えば大都市を中心にしての防護シェルターや避難訓練など全くゼロと云ってよい。またシリアで見られた北朝鮮がかんでいると云われる化学兵器対策などが論じられた事は皆無であろう。トランプ大統領は中国をはじめとする諸国に鉄、アルミに対し輸入制限に出た。更に中国に対しては知的財産保護のための関税賦課を強化することを実行しようとしている。アメリカは本来11月の議会選挙を意識して、これの関税強化策を打ち出しているのであるがすでにTPPを離脱している。米国は日本との間の二国間交渉を内々にサウンドしてきており、このように我が国が直面する現実は誠に厳しいものがある。
    第2節「国難に対案を出せない野党」
      安倍首相のとってきたアベノミクスを中心とする諸施策についてはいろいろと問題もある。しかし安倍首相はこれらの難問にまがりなりにも手を打ってきており、その論点に対して野党は全く対案を打ち出していない点にこそ、大きな問題がある。その結果が安倍一強などといわれている所以であるが、これこそ野党にとっては誠に恥ずかしい事なのではないか。森友・加計問題に加えて先にも少しふれたが陸上自衛隊のイラク派遣部隊の日報が見つかった問題を受け、更に財務次官のセクハラ疑惑が持ち上がり国会は更に停滞して、通常国における重要法案に影響が及びつつある。働き方などの改革を通じて生産性を高める重要な法案の審議が進んでいない。野党の追及する「自衛隊日報」問題など私に云わせれば軍事機密に属するもので公開に値するものではない。野党は自衛隊派遣そのものが誤りであったと蒸し返したいのであろうが、小泉内閣によるイラク派遣が国際社会における我が国の信用回復にどれほど寄与したかよく考えるべきであろう。現状の審議の停滞から考えて政府の意図する「働き方改革法案」については6月20日の会期終了までの成立はあやぶまれるところである。その他の重要法案として日本が主導した環太平洋経済連携協定(TPP)参加11ヶ国で署名した、新協定「TPP11」の国内手続きが遅れてしまう可能性があり、もしそうなれば折角の日本外交の成果を台無しにしてしまう。
    第3節「野党に望む」
      たしかに不祥事の真相究明に対する取り組みは与野党の責務に違いない。そうだからといって国会本来の任務である重要法案の審議を横においての昨今の状況は
    、国会議員の責務の放棄と考える。特に野党はもう少し節度を持って全てに対処すべきであろう。野党には憲法問題一つを取っても対案はおろか、確固とした考えすらないと思うのは私だけではあるまい。

    ■おわりに

      私は、腹の虫がおさまらないのは他にも無責任発言を繰り返し、安倍首相をにくにくしげに糾弾する野党議員はいるが、中でも辻元清美立憲民主党国会対策委員長の態度は許せない。忘れっぽい大衆はもう覚えていないと思うが、彼女は2003年に秘書給与詐欺容疑で逮捕され2004年に懲役2年執行猶予5年の実刑判決を受けたれっきとした前科を持っている。彼女にしてみれば選挙で禊ぎを受けたと云いたいのであろうが、過去において公金の詐欺を行った人物であることを我々は再確認しておくべきであろう。
                                                                                                                                   以上
      皆様の忌憚のない御感想、御意見をお待ちしております。

                                                   ( 本稿は武藤治太会長の書下ろしです。)

    2018年3月29日 金言(第68号)
    『仮想通貨は必要か』

    ■第一章「後を絶たない仮想通貨を巡るトラブル」

    第1節「コインチェック不正流失事件」
      去る1月27日の朝刊を見た人は皆、このニュースに驚いたのではないか。
      このニュースとは、仮想通貨「NEM」約580億円分が仮想通貨取引所の大手、コインチェックから流出した事件である。コインチェック社は、我が国最大のビットコイン取引高を誇る仮想通貨取引所で、ビットコイン以外の多種類の仮想通貨を扱っており、その売買、信用取引、入出金、送金、決済を行っている。NEMの顧客資産をプールしていた口座は、常時インターネットから見る事の出来る、いわゆるホットウォレットの状態にあったため、外部からのクラッキング、即ちコンピューターネットワークに繋がれたシステムに侵入したり、コンピューターシステムを破壊、改竄するなど、コンピューターシステムを不正に利用する行為により、巨額のNEMが外部に流出したのであった。聞くところによると、外部からのクラッキングだけではなく、内部犯行を含めて潜在的脅威があるため、多重署名の鍵を複数人に分けて持つなどの対策がとられているのが普通であるが、今回はそのような対策はとられていなかった。しかし、何にもまして上記のようなホットウォレットの状態にあった事が一番の問題であろう。コインチェックの責任者は、記者会見において、当社は約450億円にも及ぶ現預金を保有しており、被害を弁済しても債務超過にはならないと発表したが、2012年設立と社歴の浅い会社がこのような巨額の現金を保有している事は、仮想通貨の取り扱いが如何に莫大な利益を生むか、ということが考えられ、これは我々にはうかがい知れない謎である。
    第2節「マウントゴックス事件」
      さて、もう一つ、今回の不祥事の前に2014年に、当時ビットコイン最大の取引量を誇ったマウントゴックス社が倒産したのを覚えておられるであろうか。当社はマルク・カルプレスCEOが長年にわたり自己の利益を図るため窃盗行為を繰り返し、約75万ビットコインを損失させ、破産に至った事件であった。この時私も初めてビットコインを含めて、仮想通貨について関心が及んだのであった。今回の事件が発生する前、仮想通貨、主としてビットコインが異常な値上がりを示し、国民も大いに仮想通貨への関心が高まっていた矢先のコインチェック事件であった。我々は一部を除き、おそらく仮想通貨について詳しく知る人は少ないと思っている。そこで今回は、この仮想通貨について調べてみたい。その前に、現在我々が使用している貨幣(通貨)の成り立ちについて頭に入れておきたい。

    ■第二章「貨幣の歴史的変遷」

    第1節「等価交換の時代」
      先ず有史以前貨幣などは存在していなかった。人間は「物々交換」により経済行為を行っていた。「物々交換」が成立する大前提は「等価交換」である。しかし「物々交換」は全く不自由極まりないもので、やがて「物品貨幣」時代へと移行していく。そこでは「毛皮」「稲」「宝貝」などが原始通貨として使用される。これらは物品であっても貨幣として持つべき重要な三つの機能(交換手段、価値の貯蔵手段、価値の尺度)を備えているため、「物品貨幣」の時代が貨幣経済の始まりと云われている。そして次に来るのが「金属貨幣(金貨、銀貨、銅貨)」の時代であり、「毛皮」や「貝貨」に代わり、金や銀が貨幣として使用されるようになった。金や銀は、それ自体が価値を持つものであり、そのため金貨や銀貨でモノを買う行為はれっきとした「物々交換(等価交換)」であった。
    第2節「紙幣の登場」
      しかし、金貨、銀貨などの金属貨幣は重量があるため、持ち運びなどを含め問題があり、それに代わって次に現れたのが紙幣であった。しかし、紙切れに過ぎない紙幣が何故交換手段として使用が可能であったかであるが、これは発行された紙幣には金、銀との兌換性があり、云いかえれば紙幣は金、銀の代替物で、その紙幣を発行者(国)に持ち込むと何時でも金、銀との交換が保証されていたからである。しかしこれら金、銀の裏付けがある「兌換紙幣」の発行額は当然金、銀の保有量が限界となっていた。しかし、時代が進んで経済活動がさらに活発になると紙幣の必要量が金、銀の保有量を大きく上回ってくるようになる。そこで登場したのが金、銀との交換保証なしに発行される「不換紙幣」である。しかし金や銀の裏付けのない紙幣を受け取る方は不安でしかたがない。これを強制的に執行したのが、当然絶対的権力を持つ君主などであった。
    第3節「金ドル本位制の成立」
      それでは現在各国の通貨当局や中央銀行が発行している紙幣について考察すると、第二次大戦後であるが、いわゆるアメリカ主導による「ブレトンウッズ体制」の下で米国は、米ドルと金との交換を保証するとともに、各国は自国通貨の平価を維持する(対ドルでの国定相場を守る。例えば1ドル=360円)義務を負っていた。これが同体制のもとにおける「金ドル本位制」であり、この本質は米ドルも各国通貨も兌換紙幣であったということである。
    第4節「変動相場への移行」
      ところが1971年8月、当時のニクソン大統領によって発表された米ドルと金の交換保証の停止宣言、いわゆる「ニクソンショック」により米ドルも各国通貨も全ての金とのリンクが絶ち切られてしまうと同時に殆どの先進国通貨は、対ドルでの固定相場を放棄して変動相場に移行し、今日では我が国を含む殆どの国で不換紙幣制度となっている。何故米国が金とのリンクを絶ち切ったかであるが、1970年代初頭の米国はベトナム戦争の影響で財政赤字が拡大し、大幅な輸入超過で貿易赤字が大きく膨らみ、ドルが大量に流出した結果、ドル本位制による金とドルとの交換に応じられなくなった結果である。これは、ドルの切り下げをねらったドル防衛策であり、これによってブレトンウッズ体制は一気に崩壊したのであった。そして殆どの先進国通貨は、対ドルでの固定相場が成り立たなくなり、変動相場制に移行したまま今日に至っている。云い換えれば、今日我が国を含む大多数の国の通貨は金との交換保証のない不換紙幣となっているのである。国際的には変動相場を安定させるため、いろいろな手段が講じられているのは御承知の通りである。先進7か国によるG7、あるいは拡大されたG20では、国際的に通貨価値の安定のため各国の財務相会議、中央銀行総裁会議が数多く開催されており、またIMF(国際通貨基金)などの国際機関が目を光らせている。

    ■第三章「仮想通貨と通常通貨の関係」

    第1節「不換紙幣が信頼される拠り所」
      さて、不換紙幣である貨幣を国民は何故安心して使用しているのか。それは法律により「強制通用力」が円紙幣、硬貨に付与されているからである。具体的に云うと紙幣(銀行券)の場合、日本銀行法第46条2項により「日本銀行が発行する銀行券は、法貨として無制限に通用する」と規定しており、硬貨についても「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」の第7条で「貨幣は額面価格の20倍までを限り、法貨として通用する」と規定している。
      ところで、実際に世の中に出回っている通貨の量、すなわち「現金通貨」は100兆円程度であるのに対して「預金通貨」は、普通当座預金だけでも約600兆円あると云われている。それでは国民が現金だけではなくて、預金通貨を含めて多額の通貨を保有している事に我々国民が何等不安を覚えないのは何故か。それは上述の通りに法律により法貨として無制限に通用する保証が与えられているだけではなく、国民が我が国の社会全体のシステムに絶対的な信頼をおいているからである。我々は、現金であれ預金であれ日本円である限り、当局を含むあらゆるシステムが、日本円の価値を守っていると信じている。しかし、この信頼が乏しくなると、国民は、自らが保有する貨幣(現金、預金)を海外に持ち出して他国の通貨と変換しようとするかもしれない。この事が実際に起こっているのは中国で、中国政府は中国人が人民元を、海外に持ち出す事を厳密に規制している。以上貨幣の歴史を振り返ってみたが、最近話題となっているビットコインなどの仮想通貨について論じてみたい。
    第2節「仮想通貨とは何か」
      近年になって、アメリカ、欧州の財務当局は「仮想通貨」について定義を公にしているが、一方我が国では、2016年(2017年施行)に制定された「改正資金決済法」で次の3つの要件が定められた。
  • @法定通貨または通貨建資産ではないこと。
  • A不特定多数への代金の支払に使用出来る、かつ法定通貨と交換出来ること。
  • B電子情報処理組織を用いて移転することが出来るもの
  •   あらためて、仮想通貨を定義すると、これは電子的に転送され格納される特定の形をした通貨であり、紙幣、コインなどの物理通貨とは根本的に異なる。仮想通貨を入手する場合は、取引所に口座を開設して法定通貨(通常の通貨)と交換を行う。通常通貨は国家(中央銀行)によって価格を保証されているが、当然国家(中央銀行)の経済政策によって価値の変動リスクをかかえている。一方仮想通貨は利用者による仮想通貨そのものへの信用によってのみ価値が保証されているので、価値の変動を形成するのは利用者自身ということになる。現在の日本では給与の支払いや税金などの公的な支出は、日本円のみに限られているので、必要に応じて仮想通貨の保有者は日本円に変換する必要がある。仮想通貨の取引所については先述の改正で必ず金融庁への登録が必要になった。仮想通貨には、日本円や米ドル、ユーロなどの法定通貨が取引される手形交換所はない。しかし登録仮想通貨変換所は存在している。決済記録に関する義務の規定はないが、ブロックチェーン技術により衆人環視で誰でも自由に閲覧が可能である。
    第3節「ブロックチェーンの仕組みと問題点」
      ブロックチェーンとは、金融取引などの記録をコンピューターのネットワーク上で管理する技術の一つで、インターネット上の複数のコンピューターで取引の記録を共有し、検証し合いながら正しい記録を鎖(チェーン)のようにつないで蓄積する仕組みで「分散型台帳」とも云われている。
    さて、ブロックチェーンについては未発達のところもあり、次のような問題点が指摘されている。
  • @利用者に対する価値の保証がない。
  • A取引記録の改竄が行われやすい。
  • B闇市場を生みやすい。
  • C課税の逃げ道になる。
  • D資金洗浄に利用されやすい。
  • Eいわゆる「セミナー商法」による投資詐欺を起こしやすい。
  • F取引所の管理体制の甘さ―今回のコインチェックの例―
  • G電力の無駄問題(採掘《暗号解読》マイニングには莫大な電力を要する)
  •   仮想通貨、特にビットコインについては昨年買いまくられ異常な暴騰を演じたが、本年に入りその反動が出て暴落している。昨年12月の日次取引は40億ドル(約4,500億円)であったが、本年2月中旬には四分の一の10億ドルにまで減少した。価格も昨年12月には1ビットコイン19,784ドル迄上昇したが、コインチェック事件も下落に拍車をかけ、2月には一時6,000ドル迄下落した。まさにビットコインは博打の場所となり、仮想通貨を本当に本来の目的のため利用しているのは全体の10%もないのではないか。
      このようにビットコインの大幅な下落により更に「NEM」の巨額流出事件も重なり、まさに「夢の通貨」として仮想通貨をもてはやしていたイメージがくずれたと云ってよい。一般の人々にはブロックチェーンなるシステムが理解出来ないところにこのような不祥事が重なり「仮想通貨が本当に通貨の未来を変えるのだろうか」と疑問を持つ人々が増えているのではないか。

    ■第四章「仮想通貨は通貨の未来を変えるのか」

    第1節「ビットコインの問題点」
      そもそも仮想通貨は、法定通貨である米ドルや円を脅かすような通貨になりうるのであろうか?通貨には先程来述べてきた三つの機能(通貨の三大機能)
  • @一般的変換手段(モノやサービスを取得する機能)
  • A価値の尺度(モノやサービスの価値を客観的に表す機能)
  • B価値の保蔵手段(将来に備えて価値を蓄えておく機能)
  • がなければならない。この機能についてビットコインを例にとって考察すると@とAはお金としての機能であるが、ビットコインを交換手段(お金)として保有する人はごくまれではないか。正直なところ、ビットコインは乱高下を繰り返し到底安定した交換手段には適さない。したがって殆どお金としては使用されず「投機用の資産」となっている。云うならばその性格は通貨ではなく資産へと変質しているのである。まさに「仮想通貨」から「仮想資産」となっている。ブロックチェーンの処理能力は遅く、交換手段の任に現在では耐えられないという指摘もある。Bの「価値の保蔵手段」についてもご承知のような変動率の高さから到底将来に向っての価値を保存できるものとは思えない。ビットコインは銀行券のように発行体が価値を維持する仕組みが備わっているわけでもない。更に仮想通貨を保有していても株式や債券と異なり、利子や配当が取れるわけでもない。現在業界で本流となっている理論では、金融資産の価値は、それが将来生み出すキャッシュフローを現在価値に置きなおしたものと等しいとされている。この観点からみるとビットコインは、配当や利子がなく保有していても何のキャッシュフローも生み出さない。将来ゼロのキャッシュフローを現在価値に置きなおしても、これはもうゼロの価値しかない。国際決済銀行(BIS)の報告書では「仮想通貨の本源的な価値はゼロである」としている。
    第2節「世界の中央銀行の動向」
      このようにビットコインに代表される仮想通貨に対して懐疑的な見方が強まっている一方、矢張りこのブロックチェーン技術を無視する事は出来ないとして世界の中央銀行自体がこの技術を使った「デジタル通貨」を発行しようとする動きが強まっている。ビットコインは、公的な裏付けはないが、中央銀行が発行、運営するとなると各国の通貨単位とイコールになり当然現金とは1:1の交換となり、ビットコインのように現金との交換レートが乱高下する事はない。各国中央銀行は相当研究を進めているようであるが、この中央銀行デジタル通貨が普及すると中銀がデジタル通貨を国民に直接発行して決済をさせるということになり、ここに「銀行の中抜き」が問題となる。従って中銀デジタル通貨が表舞台に登場するには時間がかかるのではないか。3月21日に開催されたG20財務相、中央銀行総裁会議でもこの仮想通貨問題が取り上げられ、仮想通貨による脱税やマネーロンダリング、利用者保護など問題点が列挙され討議されている。現状においては各国の仮想通貨に対する取り扱いはまちまちである。中国は業者の営業拠点を閉鎖し、米国は州ごとに規制、証券取引委員会は「無登録なら違法」としている。EUは本人確認の義務化の上、新たな規制を考慮中である。又韓国も本人確認の厳格化を進めている。日本の状況は先に述べたように取引所の登録制が導入された。
    第3節「国が統括するデジタル通貨に注目」
      いずれにしても仮想通貨は今迄述べてきたように大きな問題をかかえており、現状では実用性はなく、投機の対象でしかない。この情勢についてはもっと当局もマスコミも詳しく国民に提示していくべきと考える。しかしブロックチェーン技術は今後益々進歩していくであろうから、将来国(中央銀行)が統括するデジタル通貨が本流となってくる事は十分に考えられる。

                                           以上
      皆様の忌憚のない御感想、御意見をお待ちしております。

                                                   ( 本稿は武藤治太会長の書下ろしです。)

    2018年2月20日 金言(第67号)
    『南シナ海を巡る中国の脅威』

    ■第一章「中国の領土拡張の野望」

    第1節「南海諸島と海域の領有権を主張」
      南シナ海に対する中国の野望は前々回に書いた「一帯一路」と並んで自国の領土拡張にある。
      さて、先ず問題となっている南シナ海とはどの地域を指すのかについて触れると、この海域は、東南アジアの赤道から北緯23度付近の中国沿岸まで広がっている熱帯、亜熱帯の海域で、文章で書いてもわかりづらいと思うが、南西部のマレーシアの東方付近には大陸棚が広く発達しており、水深は200m以下と浅い海である。一方東部の海は深く、フィリピン、特にルソン島の北西の沖にはマニラ海溝(最深部は5,000m)がある。
      太平洋は台湾島、フィリピン諸島及びカリマンタン島(ボルネオ)などで区切られており、バシー海峡などの限られた海峡で結ばれているに過ぎない。海域内における最大の島は、海南島であるが、地図を見てわかるようにサンゴ礁を含めて中小の島嶼が多い。
      また中国が「南海諸島」と呼び領有権をしきりに主張している南沙諸島(スプラトリー諸島)、中沙諸島(スカボロー礁他)、西沙諸島(パラセル諸島)、東沙諸島(プラタス諸島)があり、この他にナトゥナ諸島などの島々がある。
    これらの島々は約200以上にも及んでいるが、大部分は南沙諸島にある。
      この島々の存在する海域は実に810km2から900km2にも及び、海南島を除き最大の島が、太平島(イトゥアバ)であるが、長さが1.3km、高さ3.8mにすぎないのである。実は戦前、戦時期の1939年(昭和14年)に日本はこの島を占拠していた。現在は台湾が実効支配している。

    九段線




    第2節「勝手に「九段線」なる境界線を設定」
      もう一つ特徴のある島がフィリピンのパラワン島で、この島はパラワン海溝を挟んでリード堆と呼ばれる長さ約100kmの海山があり、面積は8.87km2と、世界最大の環礁である。現状は水深20mと海中にあるが、7000年前までは島であった。この島も戦時中日本が占領し、長島と名付け保有していた。この場所も埋め立ては十分可能で、次に中国が触手をのばしてくる危険がある。しかし、日本の敗戦に伴い日本はこの領有権を放棄している。その後中国(中華民国より中華人民共和国)は東南アジア諸国の本土領海線のギリギリまでを自国が管轄するという「九段線」なる境界線を勝手に設けたのであった。しかし、この境界線の意味がどこにあるのか不明なところがある。というのは中国政府の、この「九段線」の解釈が島嶼の帰属を指すのか、単なる歴史的な権利の範囲、あるいは歴史的な水域を表しているのか不明で、中国政府は、公式にその意味を発表していないからである。しかし、島々の面積は最大でも約0.5km2しかないが、当然排他的経済水域(EEZ)や大陸棚の漁業資源や石油、天然ガス資源を当て込み、更には安全保障に寄与するとも考慮して中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイが、島の全部又は一部の主権を主張しているのが現状である。
    第3節「次々と実効支配を進める中国」
      現在実効支配という観点からブルネイを除く5か国が入り乱れて複数の岩礁や砂州を実行支配しており、その多くには軍隊などが常駐している。 2017年現在ではベトナムが22か所、フィリピンが8か所、中国が7か所、マレーシアが5か所、台湾が1か所実効支配している。しかし、この中で目立つのが九段線なる線引きを行ったうえ、大規模な埋め立て、浚渫を行い、軍事施設を大規模につくり、またサンゴ礁などの自然環境を取り返しのつかない形で破壊している中国の進め方については国際的に非難が集中している。又、中国海南島の南にある西沙諸島(パラセル諸島)は、元々ベトナムが実効支配していたが、1970年代に中国はベトナムからこれを奪い、南シナ海支配の戦略拠点として、ここに2,600mという本格的な滑走路を有する空港を完成させた。その一方、中国はベトナムの支配する南沙諸島(スプラトリー諸島)にも侵攻し、六つの岩礁、珊瑚礁を手中に収めている。更に中国はフィリピンとも事をかまえ、同国が実効支配していたミスチーフ礁を占領し、ここに軍事施設を建設した。 2007年に入ると中国の活動は更に活発化し、中国は中沙諸島だけではなく南沙、西沙の両諸島を含む領域に海南省に属する新たな行政区である「三沙市」を設け、中国の意思を明確化した。また2010年には中国政府はアメリカの国務副長官スタインバーク氏が訪中した際、中国政府は南シナ海を「自国の主権及び領土保全に関連した「核心的利害」地域と見なしているとの立場を公式に表明している。

    ■第二章「アセアン諸国の動向」

    第1節「関係諸国は平和的解決を模索」
      このように、南シナ海の島嶼を巡っては各国の利害がぶつかり合い、関係諸国(アセアン)もなんとか平和的に解決すべく、法的な拘束力のある「南シナ海行動規範」をつくるべく努力を重ねてきたが、中国の一方的な行動により未だ成果が上がっていないのである。例をあげると2014年6月にシンガポールで開催されたアジア安全保障会議において中国側の代表である王人民解放軍副参謀総長は、南シナ海の島々は2000年以上前の漢の時代から中国が発見して管理してきたと発言し、会場の失笑を買った。
    第2節「「九段線」に対する仲裁裁判所の判断」
      さて、南シナ海のほぼ全域に主権や権益が及ぶとして九段線なるものを設けてゴリ押しの主張を行う中国に対してフィリピンが、2013年に国連海洋法条約違反などを確認するように申し立てた仲裁裁判に対して、オランダのバーグの仲裁裁判所は、2016年7月12日、中国の主張する「九段線」については「資源について中国が主張する歴史的権利には法的根拠はない」とする判決を下した。云うならば南シナ海の人工島で実行支配を進める中国の行動について国際法上「NO」が突き付けられたわけで、まさに中国の「全面敗訴」である。
      判決についてもう少し詳しく説明すると、中国は「九段線」の内側の海域で管轄権を有していると主張し、これは1994年に発効した「国際海洋条約」以前からの「歴史的権利」であるとしたが、中国と南シナ海の岩礁について領有権を争ってきたフィリピンが、上述の2013年に「中国の主張は国際海洋条約に違反しており無効」として仲裁裁判を申し立てていたことに対する判決で、中国の主張する「九段線」の「歴史的権利」について「南シナ海で中国が独占的な管理を行ってきたという証拠ではない」と断じて中国の主張を退けたのである。
      中国は一方的な「九段線」の主張の背景に前述のように南沙諸島(スプラトリー諸島)の七つの岩礁を埋め立て人工島をつくり、そこに滑走路などの施設を設け、軍事拠点化を進めているとして批判されてきた。
      判決により造成を続けることは「国連海洋法条約違反」とされるが、中国は判決は無効として、どこ吹く風で軍事拠点化を進めている。判決では七つの岩礁は、排他的経済水域「EEZ」を設定できる「島」ではなく「岩」か「低潮高地」と認定した。これにより周辺海域での資源開発において中国はイニシアティブを取れなくなった。仲裁判決には上訴が認められず、法的拘束力はあるが判決の強制執行手段は残念ながらない。このため現状では中国の動きを阻止できないが、判決を無視することで国際的な批判にさらされることは必定で、今後の中国の出方が注目される。また、フィリピンがこの判決を盾に強行突破姿勢を貫くと、偶発的な衝突につながりかねず、今後が注目される。
    第3節「閑話(鄭和の大遠征)」
      余談ではあるが、中国が南シナ海はすでに2000年前、漢の時代から中国の支配下にあったなどと国際会議の場で主張して失笑を買ったことは前にも触れたが、私は、明の永楽帝の時代に皇帝の命令により1405年から1433年の間、七次に亘って南シナ海、インド洋、スリランカ、ペルシャ湾、アフリカ迄大航海を行い、明への朝貢を積極的なさしめるよう大活躍した鄭和の大遠征にその起源を求める方が、よっぽど説得力があると思うのであるがどうであろうか。鄭和の遠征のスケールの大きさに比較すると、現在の中国海軍の跋扈は余りにもスケールが小さすぎると思うからである。

    第4節「完全に主導権を握った中国と日本への影響」
      さて、中国政府が南シナ海で密かに更なる建設や埋め立てを進めていることが、最近の米国の衛星写真から判明している。アメリカの外交筋や軍事関係者は、この海域で中国はより強硬に領有権を主張すると分析している。ロイター通信が確認した衛星写真によると、中国はベトナムと領有権を争う西沙(パラセル)諸島の北島と趙述(ツリー)島で施設の開発を進めていることが明らかになっている。最近これらの領有権問題を巡る緊張は、ニュースになっていないが、実際には中国は依然として緊張を醸成しつつあり、具体的には中国は、今後数カ月以内に南沙(スプラトリー)諸島の飛行場に戦闘機を初配備するのではないかと予想する専門家がいる一方、この地域を担当する軍事関係者は、中国はすでに新しく建設した施設を利用して海軍や沿岸警備隊の派遣範囲を東南アジアの広範な海域に拡大しているという指摘もある。インド洋からマラッカ海峡を経て南シナ海から我が国に至る通商路は我々の死命を左右する重要な経路である。
      南シナ海における中国の領有権の主張と軍事拠点化については、東南アジア諸国連合(アセアン)に於いても2012年頃からたびたび論じられるようになったが、アセアン10か国の内でも中国の影響を強く受けているラオス、カンボジアなどもあり、この中国の傍若無人な態度にアセアン首脳会議においては2014年5月には「深刻な懸念」、11月には「引き続き懸念」、2015年4月には「深刻な懸念共有」、9月には「引き続き深刻な懸念」11月「懸念共有」、という共同声明を発表していたが、2016年9月には「引き続き深刻な懸念」2017年4月には「一部首脳の懸念に留意」と後退し、2017年8月に中国アセアン南シナ海「行動規範」の枠組みが承認されると11月の会議においては「懸念」の文言が消えてしまった。この内アセアンの南シナ海における紛争防止の行動規範の枠組みについては2017年8月、中国が議論を主導して、法的拘束力について明記せず、中国による軍事拠点化を抑える効果を見込みにくい内容としたものである。中国は、南シナ海問題は当事者間で合意したとして、南シナ海問題に終止符を打つことを狙ったもので、完全に中国に主導権を奪われたといってよい。中国はこの合意を盾に取り、当事国以外の米国、日本の干渉を排除しようとしている。2017年の会議の議長国はフィリピンであり、同国は2016年7月に中国の南シナ海領有という主張を退けた国際司法裁判所に対する提訴国である。しかしその後、登場したドゥテルテ大統領は中国側に変身し、今回も「南シナ海問題をアセアン会合で大きな問題としない」と、一歩引いたためアセアン全体が中国側の主張に偏ってしまったきらいがある。

    ■第三章「アメリカの対応」

    第1節「オバマ政権の弱腰と不手際」
      ここまで南シナ海における中国の作戦が進んでしまったのは、アメリカのオバマ大統領の弱腰と不手際によると考えられる。アメリカの人工衛星は早くから中国の人工島、飛行場の建設等を察知していたことは間違いない。それにもかかわらず、これに対する作戦はお粗末すぎたのではないか。元々アメリカには海洋における国際慣習法上の「航行自由原則」、これは軍艦を含んだいかなる船舶と云えども、他国の領海内では慣習上認められた制限は受けるものの、その他のあらゆる公海を自由に航行することができるというものである。
      これはアメリカの国益を維持するための大原則で仮想敵国だけではなく、友好国や同盟国であっても、軍事デモンストレーションを実施して「航行自由の原則」を尊重せよというメッセージを与え続けている。(FONOPと称する) 2014年に中国が人工島を築きつつあった際、アメリカ政府内ではFONOPを実施して中国を牽制すべきであるとの主張があったようである。
      しかし、これらの島々はアメリカ以外の国々の紛争地域であったためここに直接介入はできないので、アメリカ海軍は、この人工島付近に繰り返し軍艦を派遣してFONOPを実施すべきであるという声が高かった。しかし、中国に融和的であったオバマ政権にとって、南シナ海でFONOPを実施することは論外であった。
      人工島に懸念を感じたフィリピン政府はアメリカに警鐘を鳴らし続けたが、オバマ政府は無視し、1年経過すると7つの環礁(ミスチーフ他)が人工島化されつつある事態となってしまった。やがて2015年秋にはミスチーフ礁他3つの人工島に大型の滑走路が出現したのであった。この段階で初めてオバマ政権は事態の重大さに気づき、2015年10月、中国の実効支配しているミスチーフ礁の12海里以内にイージス駆逐艦を派遣したのであった。その後も時折2016年1月、5月、10月にFONOPが実施されたにすぎない。アメリカの南シナ海における対抗はすでに手遅れであるとまでささやかれている。
    第2節「トランプ政権の巻き返しと日本の役割」
      対中強硬派のトランプ政権においてFONOPが期待されたが北朝鮮問題があり、今の所2017年5月、続いて7月にイージス艦が派遣され、また7月には爆撃機2機が南シナ海上空を飛行した。このように現状では南シナ海の覇権は完全に中国に握られているといえる。要するに島々の埋め立て飛行場の建設により、アメリカの空母打撃群の近接を防御しようとする中国の作戦は成功しつつある。これに対してアメリカがどう巻き返すか、又通商路が危険にさらされる日本の役割がどうなるのかよく考えてみる必要がある。
      なお、トランプ大統領は2018年1月20日スカボロー礁の12海里以内にイージス駆逐艦1隻を派遣した。

                                                                                                                                 以上
      皆様の忌憚のない御感想、御意見をお待ちしております。

                                                   ( 本稿は武藤治太会長の書下ろしです。)

    2018年1月25日 金言(第66号)
    『高校歴史教科書用語についての提言を批判する』

    ■第一章「高大連携歴史教育研究会の提案」

    第1節「研究会が新たな歴史用語を発表」
      高等学校や大学の教員でつくる高大連携歴史教育研究会なる組織があり、この組織は、平成2年に高校、大学の教員達の呼びかけにより作られたもので、現在の暗記を中心とした歴史の授業から、歴史的な思考力の育成や歴史そのものを学ぶ楽しさを実感出来るような授業への転換を目指している。生徒達が議論する活動を重視した次期学習指導要綱を踏まえて、教科書本文に載せ、更に入試においても知識として問う基礎用語として、日本史1664語と世界史1643語を選択して、新たに「歴史用語精選案」を昨年12月15日に発表した。
    第2節「内容は現行歴史用語の半減」
      精選案においては、現行の約3500語からほぼ半減する程度に迄絞られたのである。この案を発表した研究会によると、高校の日本史と世界史の主な教科書に収録されている用語は現在3500語から3800語となっており、現状においては、大学の入学試験で教科書に記載されていない用語が出題されるたびに、次の教科書が改訂される時点で追加される形で増加していくため現状の数字は実に1950年代の3倍近くになっている。
    第3節「教科書編集に強い影響をもつ研究会」
      今回示された高校歴史用語精選案を発表した研究会には、高校歴史教科書の執筆者や編集協力者20人以上が呼びかけ人として参加しており、関係する高校歴史教科書は発行会社6社が名を連ねており、これは全発行会社7社であるのでほとんど全部が網羅されている。それだけに精選案は教科書の編集に一定以上の強い影響力を持つものといって差し支えない。

    ■第二章「次期学習指導要綱に反する今回の提言」

    第1節「研究会が精選した主な歴史用語とその問題点」
      産経新聞の記事によると研究会の精選した(新しく追加したもの、あるいは省略したもの)の主な用語は下記の通りである。
    1.今迄記載されていない用語で新たに追加されたもの
  • @厩戸王(聖徳太子)。飛鳥時代当時の中国隋に対し対等な日本の存在を知らしめた、いわば日本という国の柱   を作った聖徳太子が不掲載であったとは驚きである。しかも今回掲載するに当たっても何故堂々と聖徳太子と   しないのか疑問である。
  • A足利尊氏。弟の足利直義の記載はある。尊氏と並んでなるほど直義の存在は大きかったが、尊氏がいなければ   室町幕府は開かれず室町時代は始まらない。
  • B西郷隆盛。明治維新の最大の功労者で無かったとは訳がわからない。今年のNHKの大河ドラマ主人公が西郷な   のであわてて迎合したのであろうか。
  • C関ケ原の戦い。徳川家康が覇権を確立した天下分け目の戦いが不掲載とは驚きである。
  • Dニュートン。万有引力の発見者というだけではなく、彼は科学者として同時代における抜きんでた存在であっ   た。片手落ちもはなはだしい。
  • E南京大虐殺、従軍慰安婦。中学の教科書からも消えていたものが突然復活 してきた。云うまでもなく両事項と   も真実とは程遠い捏造である。後に詳しく述べるが、高大連携歴史教育研究会のメンバーの大半は自虐史観を信   奉する左翼分子である。このような連中からならこのような提案があってもおかしくない。
  • 2.現行の教科書から掲載が外された用語
  • @蘇我馬子。良い悪い、好き嫌いは別にして飛鳥時代を代表する大政治家である。彼を外すと後の大化の改新も   語れないし、聖徳太子、推古天皇との関係をどう説明するのか。
  • A楠木正成。足利尊氏が復活して孤軍奮闘した北朝の中心が何故省かれるのか。
  • B上杉謙信、武田信玄。両将を外してどうやって戦国時代を語るのか。川中島の戦いはどうなるのか、上杉、武   田ともに天下を取った可能性は十分にあった。
  • C坂本龍馬。司馬遼太郎により彼は若干美化されたきらいがないでもないが、彼の存在がなかったら明治の新時   代の到来が、列国の干渉を排して、このように早く訪れることはなかった。龍馬を除外するなど近代史を否定す   るものである。
  • D桶狭間の戦い。尾張の弱小大名織田信長が、戦国大名の雄駿河の今川義元を桶狭間(田楽狭間ともいう)に奇   襲をかけ、一瞬の隙をついて義元を討ち取った戦国時代における画期的な戦いで、信長はその後天下布武へと進   んでいった。このような画期的な戦いを外すなどこれは歴史の否定と考えるが如何であろうか。
  • Eクレオパトラ。彼女の鼻がもう少し低ければ歴史は変わっていたであろうと云われている傾国の美女であるが   、ローマが帝国となるきっかけとなったことについては、彼女の存在なしでは考えられない。
  • Fガリレオ・ガリレイ。コペルニクスの地動説を更に発展させ、天体観測に望遠鏡を取り入れ,太陽の黒点を発   見するなどその他数々の画期的な発見を行なった。
  • 第2節「教師の役割は何か」
      これらの歴史的重要事項が外されたのは、この研究会が教科書の用語を減らすことによって先に述べたように暗記中心の歴史学習から歴史的な思考力の育成を図ることを主眼点とし、また約4000語の学習を生徒に徹底することは難しいと主張している。しかし、私見ではあるが歴史の面白さは多数の登場人物を通じて、その歴史的背景を理解していくことにあると思う。登場人物が多すぎてとても生徒に教えられないなどとは歴史教師として失格である。例えが適切かどうかわからないが[地理]を教えるのに地名が多すぎて授業が出来ないと云っているのと同じではないか。
    第3節「研究会は左翼思想に偏向」
      この研究会メンバーの経歴を調べてみるとその思想的な方向がよくわかる。会長の油井大三郎東京大学名誉教授はアメリカ現代史の専門家らしいが、典型的な岩波書店「世界」派の学者で朝鮮戦争は北朝鮮による侵略戦争ではなく、北朝鮮による解放戦争であったと主張。最近の安倍内閣における集団的自衛権が可能という憲法解釈変更にも反対している。彼の左翼的言動については枚挙にいとまがないが、彼は徹底的な反米左翼主義者である。彼は現在の歴史教科書の基礎用語は多すぎると主張している反面「従軍慰安婦」「南京大虐殺」等の採用を進めており用語の選定基準に恣意性があると問題視されている。油井氏はかって「未完の占領改革」なる本を書き、この中で、
  • @天皇制の廃止
  • A共産主義中国への服従
  • Bアジア諸国への謝罪と賠償
  • という改革が未完なので,これ等を進めるべきであると主張した。これらの考え   は、そのままコミンテルンの主張である。従来教育界の反日勢力の本尊は日教組といわれてきたが油井氏のよう   な純反日勢力の本尊が大学内に鎮座していて高校教育の反日を扇動、支配していることは明らかである。
    このとんでもない左翼の会長のもとに5名の副会長がいる。すなわち
  • @ 磯谷正行(愛知県立岡崎高校教頭)
  • A 勝山元照(神戸大学附属中等教育学校副校長) この両者は教育最前線にいる実務家で目立った左翼的言動。行   動は調べた範囲ではないが、それだけに油井会長べったりと想像する。
  • B 君島和彦(東京学芸大学名誉教授)
  •   この人は有名な家永教科書裁判の原告側証人の主要メンバーで731部隊について証言した保守派の秦郁彦氏を   こき下ろした過去がありこの件で世間から猛烈な顰蹙をかった。また2008年には中学生向け新学習要領解説   書で竹島が日本固有の領土と書き込まれた部分を削除して韓国の領土として韓国との関係を復活させるべきであ   るというコラムを朝日新聞に寄稿して、その功かどうかしらないが翌2009年にソウル大学の歴史教育科の正   教授におさまった。誠に売国奴的行為ではないか。その他の副会長は
  • C 小浜正子。1953年生まれで日大教授、ジェンダー史の研究家であるが当然思想的には左と思われる。
  • D 桃木至朗。1955年生まれ、大阪大学教授でベトナム中近世史を中心と する東南アジア及びアジア史の研究   家で大阪大学歴史教育研究会の代表、思想的には詳しくわからないが、岩波書店から何冊かの書籍を発行してい   るのでおよそ想像がつく。
  • このメンバーから推し量るならば研究会の運営についてのイニシアチブは 油井会長が握っていることは明白である。油井氏は、先にも述べたように全くの朝日新聞寄りの左翼思想の人物であり、その下の副会長もいずれも左翼思想の持ち主かそのシンパであることは明白である。

    ■第三章「充実すべき日本の歴史教育」

    第1節「研究会の短絡的な見解」
      さて、いささか前に戻るが、今回の研究会の主張を改めて述べると、こうである。すなわち大学入試で歴史の細かい用語の出題が成されて高校の授業が暗記中心となっているのは問題であるとして「とにかく用語が多すぎるので先に述べたように用語を3500語程度から約半分に減らすべきである」という主張である。そうだからといって上杉謙信や武田信玄、坂本龍馬まで除く一方歴史的に未だ真相が明らかになっていない南京虐殺事件や朝日新聞の捏造から端を発した韓国の慰安婦などが新しく掲載するのは全く矛盾したやり方ではないだろうか。彼らの主張によれば高校の授業時間数を考えた時、きちんと教えられる用語は2000語と主張しており、このため歴史の流れを理解するためにはこの程度で十分だという見解である。
    第2節「研究会見解に対する反論」
      私は、歴史の面白さは歴史に登場する数々の登場人物にあると思っている。幾つか例をあげることが可能であるが、ある意味で歴史とは、ある時代に現れた天才によってその多くがつくられたのではないかと思っている。
      世界史を繙くとギリシャアテネの英雄テミストクレス、哲学者ソクラテス、プラトン、アリストテレスその弟子アレクサンドル大王、次のローマの時代に入るとローマ勃興期におけるポエニ戦役でのカルタゴの英雄ハンニバル、それに対抗してローマの礎を築いたスキピオ、そしてジュリアス・シーザー、そのあとを継いでローマ帝国を造ったオクタビアヌス、キリスト教を国教としてローマ帝国の全盛期を到来させたコンスタンチン大帝、そしてキリスト教に連なる政治、経済、文化に関係する人物など、また中世に入ると西ローマ帝国滅亡後神聖ローマ帝国に君臨したカール大帝、そしてルネッサンス時代に現れた優れた政治家、芸術家などを語らずして歴史を理解できないと思っている。また近世に入るとフランス革命の中からナポレオンが登場し良い悪いは別にして歴史を彩ったのであった。
      このように、その時代に現れた多士済々の人物を学ぶことにより、初めて歴史そのものを理解することができるのではなかろうか。
      一方、日本の歴史についても同様である。大体聖徳太子が従来何故教科書に記載がないことが全くおかしい。これは聖徳太子が、中国の隋に対し小野妹子を遣わし「日出ずるところの天子日没するところの天子に書を呈する」として日本国の存在を明らかにし、その名を、隋国に鳴り響かせた事実を現在の共産中国は快く思っていないことを慮ったからであるが、その太子をわざわざ間違いではないが、中国が聖徳太子の名前を嫌うため中国に遜って厩戸王にしたのではないのかと疑いを持つところである。自虐史観の最たるものである。その他詳細に見ないとわからないが、私から見るならば今回外すといわれている蘇我馬子、楠木正成、上杉謙信、武田信玄、坂本龍馬、桶狭間の戦い、クレオパトラ、ガリレオについて私は反対である。私が思うにこの程度のことを知っているのは日本人としての常識の範囲であり、この程度のことを生徒に教えられないのは教師の不勉強いや文科省の無能力さにあると思う。むしろ研究会の考えによれば大学入試のたびに新しい用語が出題され,そのたび翌年からの教科書において用語を増やしてきた結果が現状の3400語から3800語で、これを半減して困るのは受験生となる生徒ではなかろうか。今後入試のたびに新しく出るものを加えていくのであろうか。深く調べていないので、何ともいえないがこのような処置は「ゆとり教育」の残骸といえる。
      今回訳のわからない、しかし教科書編集に大きな影響力を持つ研究会がどのような意図を持ちこのような考えを発表したかは私には理解できないと同時にこのような考え方により新たな教科書が出来るならば我が国の将来に大きな危惧を持つものである。
    第3節「日本の歴史にもっと深く取り組むべし」
      最後に今回のテーマと直接大きな関係はないが、今の一部社会人を含めて学生は日本の歴史について余りにも無知である。これはいろいろと理由はある。特に現代史の部分は時間切れになっていることもあるが、教える教師も私から見れば極めて勉強不足ではないかと考えている。例えば日本の歴史を学ぶ時、私は日本神話につてもっと深く取り組むべきと思う。神話なんて事実じゃないよと一蹴する人もいるが、日本神話は古事記、日本書紀に記載されており、戦後これらは天皇家の正当性を裏付けるためのでたらめなもので古事記の作者太安万侶は存在しなかったと言いふらされていた。ところが1979年奈良市の茶畑から彼の墓が発見され正確な没年を記した墓誌が出土し、彼の存在は証明された。日本神話について書くと長くなるので、これにつては別の機会に譲りたい。

                                                                                                                                 以上
      皆様の忌憚のない御感想、御意見をお待ちしております。

                                                   ( 本稿は武藤治太会長の書下ろしです。)

    武藤会長「金言」

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