ホーム > 武藤記念講座(講演会事業)京都産業大学名誉教授、モラロジー研究所客員教授
    所 功氏 『《令和》日本の皇室制度を建て直す』

武藤記念講座(講演会事業)

第1085回武藤記念講座要旨

    2022年1月8日(土)
    於大阪「國民會館 武藤記念ホール」
    前防衛大学校長、慶應義塾大学名誉教授
    國分 良成 氏
 『中国習近平体制の検証と米中、日中関係』


セミナー





はじめに
   中国の習近平は内外政策で強硬姿勢を示していますが、それは逆に言えば、非常に脆い部分をもっているということです。だからこそ上から押さえ付ける体制になっているのだと思います。彼自身、過去は相当苦労した時期もあると思います。父親の習仲勲は文化大革命中に批判され失脚し、指導者の中でも最後まで名誉回復が遅れ
、息子の習近平もかなり辛い思いをしたはずです。習仲勲は自身の名誉回復を手掛けてくれた改革派の胡耀邦を守るため、ケ小平と論争したという経緯があります。中国政治を考える場合、基本的に人間関係であり、それを念頭に入れながら客観的に解釈することではないかと思います。
   中国はこの30年間、改革開放を進め、経済社会はグローバル化し、大きく変わりました。しかし本質的なものは変わっていません。それが政治体制です。今ではある意味で旧時代へ逆行しており、政治体制は岩盤化しているように思います。中国ではすべてに政治権力が優先されたため、1949年以来の歴史が毛沢東、ケ小平、江沢民、胡錦涛、習近平の5人で事足りたわけです。
   今後、我々が中国と付き合うためには、中国が「世界にどう向き合おうとしているのか」をしっかり読み解き
、付き合うことが重要です。
第一章 中国共産党100年の視座
第1節 第3の「歴史決議」をどう見るか
   昨年、中国共産党が創立して100年となり、そこで第三の「歴史決議」が出ました。
   第一の決議は、毛沢東が権力を固める過程で出されました。第ニの決議は、改革開放を進めるためケ小平が用意した文献で、文化大革命の評価を100%否定しましたが、毛沢東については「晩年3割の過ちを犯したが、功績が7割ある」と評価を分けました。今回の第三の決議は、それらに比べると貧弱な面が大きいと思います。「新時代」という言葉を盛んに使っていますが、要約すると、共産党と習近平の体制を維持することを書き続けているだけで、「旧時代」の香りがします。経済も国際関係もすべては政治権力のためにある。習近平体制を守ることが最優先であり、習近平はすべてが正しいということが書かれています。決議のほとんどを習近平評価に費やし、ケ小平や江沢民、胡錦涛については僅か5、6行程度で終わっています。
   しかし習近平はこの10年間、成果として何を残したのでしょうか。ケ小平は、天安門事件で傷ついた中国を一つの方向に向かわせようとして、改革開放に転換しました。ソ連が30年前に崩壊した原因は経済でした。その教訓を汲んで、ケ小平は「世界の市場システムに入る」と宣言したわけです。中国の国土は日本の約26倍ですから、何もないところに杭を打てば成長が出来たわけです。そして次の胡錦涛や江沢民もケ小平が引いた成長路線を進めましたが、政治改革をさぼった結果、政治腐敗と不良債権を作り続けたわけです。しかし、もう不良債権が限界にきています。
   そんな状況下、習近平はすでに国家主席の任期制限を撤廃する憲法改正を行い、今秋の党大会で任期延長を考えています。ケ小平が毛沢東の終身制の失敗を見て、任期を1期5年で2期までと決め、胡錦涛や江沢民も従った憲法を改正したわけです。つまり習近平体制が今後5年、10年変わらないかもしれないということです。この瞬間、アメリカの中国に対する不信感が爆発し、対中国姿勢が一挙に変わったように感じます。
   さて、今回の歴史決議のもう一つの特徴は、改革開放時代の問題点が多く指摘されています。その最大の問題が腐敗です。中国は共産党が主導する市場経済です。許認可権は共産党が持っていますから、成長段階で党の高級幹部はみんな賄賂を懐に入れたわけです。その現実を実質的に認めたのが江沢民で、彼の政策以降、共産党はまさに世界最大の腐敗政党と呼ばれるようにもなりました。ある意味で習近平の10年間の成果は、共産党内で反腐敗闘争を行ったことです。
   しかし習近平が権力を固めたあと、これから何をしたいのかがよく見えません。成長が鈍化し、ケ小平路線は終わったように見えます。今はお金の使い方、経費の使い方、会食のあり方が相当厳しくなり、全体の経済成長が止まり、特権的なものがなくなる中で、上からガミガミ言われる体制になっています。30年間やりたい放題にやってきた幹部達は、心の中では習近平を尊敬していないかもしれませんが、従わないことによる不利益を考え、従っているだけだと考える方が普通だと思います。ただ、反腐敗の観点から、一般の国民からは比較的評価されている節があります。
第2節 中国共産党100年に対する私見
   習近平は、歴史決議の中でマルクス主義という言葉を40回以上使っております。マルクス主義で成長が起こるとはあり得ないことです。だからこそ、ケ小平は改革開放に向かったのです。今のままでは時代錯誤で、世界の現実を見ていないと思います。結局、革命党から執政党になり切れていないということです。
   中国共産党は、初期のリーダー達がロシア革命を真似て、都市労働者を組織しようとして失脚しました。しかし毛沢東は農民革命を展開し、成功しました。毛沢東は、中国共産党100年間のうち41年間君臨したわけです。初期の革命段階では、毛沢東は現実的に社会を見ていました。しかし1949年に中華人民共和国が成立し
、国を建設する段になっても、彼は革命を繰り返してしまった。絶えず自身にチャレンジしようとする人たちを「敵」として戦うことで、革命を続けてしまったわけです。そのため革命党の体質を保持したまま、執政党という歪な党になってしまったということです。
   またもう一つの大きな問題は、100年間、現在に至っても次の指導者を選出するルールがないということです。指導者を選ぶ時は必ず人事と利権が関係するため、絶えず権力抗争が起きます。習近平は今回、江沢民派を一掃しました。アリババのトップ、ジャック・マーが引退したことや、恒大集団が経営破綻に陥ったことは、みなそれに関連していると思います。すべて今年の党大会を成功させるためです。しかし習近平の人事を見ていると、広がりがなく、お友達内閣の極みです。党内の民主主義が欠如していて、怖い感じがします。中国における権力の中枢は公安、国家安全部、軍、宣伝部ですが、今もまだ権力闘争ばかりやっています。最近も公安部で副部長の更迭人事がありました。突然人民日報で、珍しくケ小平を讃える改革開放万歳の記事が出たと思うと、数日後には習近平万歳の記事が出る。宣伝部の中も揺れている感じがします。党内で激しい権力闘争が行われているということです。
   元々、中国の社会主義的イデオロギーは形骸化していましたが、しかし正当性はそこにしかなく、それに頼らざるを得ないわけです。結局、信じているかどうは別として、マルクス主義を否定できない。100年の歴史を考えると、現実主義でやった時は比較的成功していますが、教条主義に陥った時は失敗しています。歴史的な教訓からすると、上から厳しく言論統制し、習近平思想を植え付けることで上手くいくのだろうかと疑問に思います。

第二章 中国はなぜ強靭なのか
第1節 強靭性の根源
   中国が向かおうとしている道が、相当険しいであろうことは間違いありません。過去何十年かにわたって、「中国崩壊」「共産党崩壊」を訴える本が繰り返し出されますが、中国は潰れそうにない。中国研究の学術界では、過去20年ほど、アメリカもそうですが、「中国共産党は何故倒れないのか」、「その強靭さはどこから来るのか」というような分析や研究が非常に多く出ています。
   強靭性を考えた場合、その根源の一つは、体制を維持する装置である公安(警察)、国家安全部(CIA機関
)、軍、宣伝部の権力が非常に堅固だということです。トップの権力闘争はそうした組織の取り合いです。文化大革命の時も、最初はここの取り合いでした。毛沢東が引退すると、誰も報告に来なくなり、北京は完全に劉少奇、ケ小平が牛耳ったわけです。そこで毛沢東は、軍に林彪を、そして奥さんの江青を宣伝部に入れ巻き返しを図ったわけです。公安も入れ替えています。しかし最終的に変わらなかったのが共産党の組織でした。そこで共産党自体を破壊するために学生(紅衛兵)を動員したわけです。つまり毛沢東はたしかに頂点に君臨し、カリスマ的権威を持っていましたが、権力は形骸化し、むしろ孤立していたわけです。中国政治は簡単ではありません。上を変えても下は変わりません。上に政策があれば下には対策があるのです。今も現実にはそういう部分があるのですが、昔と違うのは、強力な監視システムの存在です。
   強靭性の根源の二つ目として、中間層の人達を抱き込んできたということです。革命はリーダーがいなければ起こりませんが、最下層からは起こらず、ある程度豊かになった中間層が分裂し、これ以上豊かになれないと分かった瞬間に起きやすい。だから中国共産党は3〜4億人といわれる中間層に利権を与えることで抱き込んできました。しかしそのためには経済成長が必要です。ところが低成長ではそれができない。不良債権問題があり、金融システムもおかしくなっています。今では、アリババなどが運営する決済システムを全て中央銀行に吸い上げ、デジタル人民元に統一し、人々のデータを吸い上げて、資産を全部管理するという話も出ています。いずれにしても経済成長のパイが小さくなると利益配分ができず、中間層を抱き込み切れない苦しさがあります。
   さらにもう一つの強靭性の背景には、世界の巨大資本が中国共産党を支えているという現実です。また、民主主義体制より中国の権威主義体制の方が上手くやっているという議論もコロナ禍の中で起こっています。しかしそれは、比較そのものが間違っていると思います。政府が全部コントロールし、監視する国は異常です。我々と比較すること自体が無理です。
第2節 ほころびのありか
   中国の体制上の「ほころび」は沢山あります。こんなに人を管理して大丈夫なのでしょうか。人の心の中は分かりません。そして権力闘争を繰り返し続けています。最大の問題は、経済成長の見込みがないことです。中国では大学生が今年1,000万人卒業し、去年は大学院に450万人が行きました。大学院へ行くのは就職口がないからです。20歳から24歳までの失業率は、約20%前後だと言われています。4,5年前の統計で、新規の起業数は550万件でした。つまり仕事がないから、大学生が数人の友達と起業するということで就業を確保していたと思われます。ニュービジネスの成功率は一般に10%もありませんから、どんどん若年の失業者が溜まっていたと推測されます。そして最近では「寝そべり族」などという若者も出現しているようです。かなりの数の進学塾が潰されたという報道がありました。そういう社会の実態を見ていくと、成長率の鈍化の影響が出ているのだと思います。経済成長の原動力がなくなっています。最先端技術では人はいらなくなる。製造業は東南アジアの国々へ移る傾向があり、中国へ戻るのはもはやコスト面でも難しい状況です。

第三章 中国と外部世界
第1節 中国をめぐる国際環境
   習近平にとっては、国内統制の意味からも、台湾海峡で一定の緊張関係を持つことは悪くはないと思います。経済成長が上手くいかなくなると、国内の特に中間層に亀裂が起きる可能性があるからです。「一帯一路」の最終目標は、中国国内の経済成長への還元でした。アメリカとの関係悪化の可能性を予想して、陸続きのヨーロッパと中国を繋ごうとしました。そのため周辺を巻き込みつつ「一帯一路」を進めたわけです。ところが債務問題でいろんな国を半ば植民地化しました。また、そこで中国人の労働者を使ったため、現地の労働者を使うことなく、不満が噴出しました。イギリスのキャメロン政権の時には、中国はイギリスを起点として欧州に広がる「一帯一路」を作ろうとしました。しかしメイ政権に変わりブレグジットが起こると、イギリスはEUから脱退し、「一帯一路」は上手く進んでいないのが現実です。さらにイギリスとの間では原発関係で中国が莫大な投資をしており、それが相当焦げ付いているともいわれています。
   国境地帯について見ると、香港、チベット、ウィグルなどの問題に加えて、中国の中に組み込まれていませんが、台湾問題があります。また南シナ海では軍事拡張を行い、東シナ海でも日本と摩擦を起こしています。中国は14か国と国境を接していますが、多くの国と摩擦を抱えています。北朝鮮は6者協議で中国を完全には信用しなかったように、本質的に良いとは言えません。中国がロシアと手を結んでいるのは、アメリカや西側諸国に少しでも対抗するためで、そこにロシアとの本質的な信頼関係はありません。かつて中ソ同盟は数年で破綻した苦い経験があります。結局中国は、周辺諸国と利害関係で繋がっているところはあると思いますが、本当に信頼してもらえているかは疑問です。
第2節 米中関係の現状と行方
   米ソ冷戦期に地域紛争は沢山起こりましたが、米ソ間の戦争はありませんでした。核兵器が使えなかったからです。しかし、米中間では核の均衡はまだ成り立ちません。アメリカの核が圧倒しているからです。現在、中国はサイバー、AI、宇宙、ドローンなどの開発に集中しています。これらはニッチな分野であり、まだアメリカと対抗することができる分野です。中国がアメリカと対等に対峙するためには、結局、そういう部分で優位性を保つことです。 もし台湾で衝突が起き、本当に戦争が始まれば想像を絶する大変なことになります。日本の各施設にもサイバー攻撃が入ってくるでしょう。よく台湾の邦人救出が話題となりますが、アメリカと台湾も中国大陸を攻撃するでしょうから、そうなれば中国に住んでいる十何万の邦人はどうなるでしょうか。また台湾や中国の沿海地域などから難民が出てくるかもしれません。戦争を起こしてはいけないのです。そのことは台湾もよくわかっています。蔡英文さんは中国と対決姿勢を示しつつも、最初に「現状維持」を必ず強調しています。アメリカ政府も「今すぐに何かが起こるわけではない。中国は将来に向けてそういう状態を作り上げようとしている
」というのが基本的な立場です。 湾岸戦争以来、戦闘は「自分の兵隊を殺さず、同時に敵も殺さない」という、中国の言い方では「知能化戦争」の時代となりました。戦争が始まる前に、あらゆるインフラ施設が破壊され、国家機能がマヒすることになる。アメリカと比べて国力で劣勢に立つ中国は、「戦わずして勝つ」という孫氏の兵法を狙っているわけです。依然としてハードに関心が注がれやすい日本も、発想の転換をしていかなければならないと思います。
第3節 日中関係
   「経済安全保障」の議論が出ていますが、これまでに人材がかなり流出し、技術も相当に取られたと思います
。本当は10年前に着手すべきでした。今は中国にかなり経済的に依存し、すでに多くの分野で中国の技術のほうが上になっています。そういう現実の中での経済安全保障です。アメリカは中国との対決姿勢を保ちながらも
、多分対話も増えると思います。アメリカの歴代政権は最初に中国非難から始まり、その後経済状況を鑑みて対話に入りました。現在、米中関係は以前に比べ根本から信頼関係が薄れていますが、それでもバイデン政権は現実的には対話を進めるだろうと思います。アメリカ国内には問題が山積みなので、外交へ向かう余裕があまりなさそうです。
   オリンピック問題について、日本側は政府関係者を派遣しないという一応原則論を立てて、でも選手は参加することで決着しました。中国は面子の問題ですから、口では非難しても、選手が行けば問題はないと思います。
   重要なことは、これから中国との経済関係の現実を前提にしつつ、どのように政治的に対応するかです。東シナ海では、中国軍が引き続き増強してくるのは明らかです。ただ、中国もその運用は大変だと思います。確かに戦闘機は3〜4倍ありますが、人を育てるのは簡単ではありません。一般に、戦闘機や戦艦で実際に動いているのは三分の一、あとの三分の一は修理・補修、最後の三分の一はテストや移動中です。個人の技能は各人によって違いますので、一人前に育てるのは大変です。しかし中国は人口でも圧倒していますので、いずれは人が育ってきます。また国防費を増やせば民生部分を削らなければなりませんが、こんな経済成長の程度で大丈夫だろうかと思います。国防費を使いすぎ、民生を怠った大国で潰れた国が30年前にありました。
   また尖閣諸島の問題は、島嶼という狭い視点ではなく、東シナ海という面で見ないといけません。中国の最終的な目的は東シナ海全体を勢力下に収め、米国に圧力を加え、台湾を包囲していくことです。日本がこの地域全体の安定確保を保つためには、それなりの抑止力を維持・拡大しつつ米国との同盟を強化し、同時に中国との衝突を回避する、もしくは衝突したときにそれを最小限に抑えるメカニズムを作ることができるかどうかです。今、太平洋で海賊などが出没せず安全なのは、第七艦隊がいるからです。実質的には、中国の艦船もアメリカに守ってもらっているわけです。中国がアメリカの役割を代替できるのでしょうか。中国は太平洋に膨張して、何をしたいのでしょうか。膨張それ自体が目的化しているように思います。
   中国に、「国民生活を守り安定させること、つまり国内の経済成長が最重要で、そのために国際市場に自らを開放し、国際ルールを守ることが肝要だ」ということを理解させることが大事です。国際感覚をもって冷静に考える人が中国にいくらでもいると思いますが、なかなか合理的思考が権力の中枢で働かない。共産党の既得権益
、つまり自分たちの利益と利権を守りたいという一心、これしか見えてきません。

おわりに
   中国は改革開放路線から軌道修正をしようとしています。しかし開放体制にもっていかなければ発展できなかったし、これからもそうだと思います。本当はそのための政治改革もしないといけないわけです。少なくとも党内の民主主義、次の指導者をどう選ぶか、このあたりは基本です。今の習近平のやり方は時代に逆行しています
。政治体制に開放性のないことが、市場経済に突き進めない最大の理由です。マルクス主義を声高に言っている余裕があるのでしょうか。
   もう一つ、中国は、アメリカ、西側諸国、日本などによりいつもいじめられているという被害者意識が強い。中国はすでに大国で、責任ある大国としての意識を持ってもらわないと困ります。今の対応を見ていると、すべてが内向きに働き、自己保身にしか関心が行かない。中国が世界に何が貢献出来るかという話は出ないし、たとえ美辞麗句を語っても行動が伴わず、自分の勝手なルールの中に世界を押し込めようとするわけです。
   しかし結局、我々は中国を変えることはできません。最後は中国自身が自分で動くかどうかです。つまり自助努力です。そのために、我々にできることは、中国に対して国際社会としての立場を言い続けることです。中国は面子の国ですから、もちろん言い方を考えなければなりませんし、一定の敬意は払うべきです。これからの日本は、中国に言うべきことは正面から堂々と言いつつ、対話は続けることが必要でしょう。

質疑応答
「質問1」

  バイデン政権と、いまだに日米首脳会談が出来ていないのは、岸田首相の親中、媚中路線が影響していると言
われていますが、先生の見方をお聞かせください

「回答1」

   岸田政権は中国に対してまだ具体的な行動に出ていないのですから、「親中、媚中」と言うのは慎重でなければなりません。多分そう見られて、苦労していると思います。日本国民の大多数も中国との関係改善そのものを否定しているのではなく、嫌悪感を取り除けないのだと思います。そういう中国のイメージが浸透しているし、事実その傾向があるわけです。岸田政権はアメリカや西側諸国との連携を一番大事にして、様々な行動をとっていると思います。これは日本外交の基本です。ただ、現実には中国に相当な投資をしている企業も多く、儲けを出している企業もあります。アメリカの企業も中国にかなり入っていますので、バイデン政権も苦労しています
。トランプは人権のことを言わず、結構中国と経済的には上手くやった面もあります。アメリカが今後、現実の経済的利益と政治・安全保障をどのようにさばくか、丁寧に分析するとともに、アメリカとの連携を欠かしてはなりません。


「質問2」

  「尖閣問題を面で捉えて判断するよう、戦争は電子頭脳やサイバ
ーで決まるだろう」とのことですが、サイバーだけで相手を制圧できるのでしょうか。陸軍が重要だと思うのですが。今の人民解放軍は、一族郎党の意識が強く、一人っ子で、本気で国のために戦う力があるのでしょうか。

「回答2」

   中国の若者のほとんどは一人っ子で、軍に行きたくないのが現実です。軍は学校に出向いて一生懸命リクルート活動をやっています。それでも軍人は少し下に見られていますから、なかなか採用できないのが現実です。キッシンジャーは中国の戦争論に関して、「“戦わずして勝つ”孫氏の兵法である」との立場です。「西洋はチェスの思考で真ん中をとろうとするが、中国の囲碁では周りを固めて行き、いつの間にか勝てる状態を創り上げる。これが西洋と中国の違いだ」と言っています。そしてさらに、「中国は負ける戦いはやらない。しかし面子を傷つけられた時は戦うが、すぐに一撃で止めて政治交渉の場にもっていく」とも語っています。中国はアメリカと対等に戦えるサイバーなどで優位に立ち、戦う前に電子戦で勝利しようというのでしょう。しかし将来的には、どの戦いでもそうですが、サイバー戦のあとはやはり陸上戦が必要になるように思えますね。


「質問3」

  「金門、馬祖の砲撃戦は、中国と国民党政権の茶番劇だった」と本 を読んのですが、本当に裏取引があったのでしょうか

「回答3」

   あの当時、中国には空挺部隊はありませんでしたので、補給を考えても150〜200Km離れたところで闘うことはできなかったでしょう。また実際に厦門の目の前の金門島が取れたかどうかも分かりません。多分取れなかったであろうという説も強い。1950年代の金門島の戦いではかなり戦死していますので、茶番ではなかったと思います。ただその後、大陸からたった数キロ先の金門に関しては、毛沢東が「奪取するな」との指示を出しています。それは目の前に敵を置いておくことで、内戦状態が終わらないと判断したからでした。


「質問4」

   「日中首脳の対話が必要である」との資料をいただきましたが、日本は経済以外で、対話をできる体制が作れるのでしょうか。

「回答4」

   安全保障の対話が始まっています。ホットラインはできておりませんが、ある程度の対話はあります。ただ全体のパイプは相当に弱っています。米中間対立は厳しくなっていますが、民間も含め各レベルでの対話については結構前向きです。中国は先ほども言ったように被害者意識が強く、自分の都合でばかり考える傾向がありますから、我々の側の立場は実はあまりわかっていないと思います。ですので、何か起こった時のためにもパイプは必要です。結局のところ、トップの間で話ができるかどうかです。特に中国の政治体制を考えるとそうです。


   以上は、前防衛大学校長で慶應義塾大学名誉教授 國分良成氏の講演を、國民會館が要約、編集したものです。文章の全責任は國民會館が負うものです.。

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